野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

いいカモ、鍵ハモ2日目@水戸芸術館

水戸での鍵ハモの作曲ワークショップの2日目。

今回のワークショップの目的ですが、ホール側の意図としては、鍵ハモや作曲の(さらに言えば、音楽の)魅力を参加者に体感してもらうことがあると思います。

でも、ぼくとしての一番の目的は、「作曲すること」です。では、どんな曲を作るのか。9月21日のコンサートで、お客さんに喜んでもらうことは、もちろんです。でも、様々な場面で何度も再演される作品を作曲すること。これが、大きな目標です。

これまでにワークショップを経て誕生して、何度も再演されている曲が、いくつもあります。コンサートピースでは「オルガンスープ」、即興性の高いゲーム的な作品では「手拍子のロンド」、歌の曲では、「体重へらそう」、「ワニバレエ」、「ヤギふんじゃった」など。ワークショップで作曲した作品は、基本的に将来的には、何らかの形で出版していき、流通していく仕組みを作りたいと思っています。

で、今日は、ワークショップの2日目。

13:00−15:00 鍵ハモビッグバンド
最初に、アシスタントの3人と、野村誠作曲の「FとI」を演奏して聴いてもらう。続いて、昨日やった「白い鍵盤でスタッカート、黒い鍵盤でロングトーン」をやってみる。昨日よりもリズム感がよく、しかも、ロングトーンがとても美しく響いた。あまりにも美しかったので、水戸芸術館は、ステージの後ろ側にも上から見下ろす形の客席があるので、みんなでそこに行って、やってもらった。すると、これが、上から音が降り注ぐみたいで、相当、気持ちいい。スタッカートの時は、座らないと演奏できないらしく、座って演奏すると、ロングトーンになった途端に、みんなの顔がニョキニョキと出てくるみたいで面白い。
曲のエンディングをどうすればいいか、も色々な意見が出た。「何か、変わった音を出そう。例えば、一番低い音と、一番高い音を同時に鳴らすとか。」という案は、やってみると、面白い。たいていの人は、最低音がFで、最高音がCなので、終止和音に聞こえる。これを、リーダーが楽器を膝に置いて座ると、次々にやっては座っていく。なかなか、いい響きでした。この曲は、「震源地」という遊びをもとにしているので、タイトルは「しんげんち」にしようという案があったけど、並び替えて、「げんしじん」となりました。

続いて、「トッテットッテッ、トレトレトッ」の曲は、昨日よりも演奏がやはりよくなって、「ポテチ〜8周音楽」という曲になった。

その後、デンマークのカール・ベルグストローエム=ニールセンが送ってきた写真を題材に、3グループで作曲。写真に、色んな色があるから、「いろいろいろ〜〜〜」と演奏する。「くるま」が写っているから、「くるま」を逆から読んで「まるく」。「まるく」だけど、「さんかく」に演奏。まるく、まるく、と3拍子に演奏するけど、三角だから、白鍵→黒鍵→白鍵と演奏するか、黒鍵→白鍵→黒鍵と演奏する。消防車と救急車が写っているが、消防車は赤で、救急車は白だから、救急車は白鍵、消防車は黒鍵で、ピーポーと演奏する。でも、消防車にはホースがあるけど、救急車にはホースがないから、救急車ではホースをはずして演奏する(つまり音は鳴らない)。
などなど、色んなアイディアは出ました。

こうしたアイディアを、一つずつカードに書いて、ステージ上の色んな場所に配置させて、そこに行ったらそれを演奏する、というような曲になりそうです。せっかくなので、カールにこの内容をメールして、彼のアイディアを曲に盛り込んでみたいものです。

続いて、
15:30−17:30は、鍵ハモ交響楽団
こちらでも、「FとI」を聴いてもらった後、昨日作ったメロディーにコードとベースのパートを書き足した譜面を作り、表音階と裏音階でのアドリブ入りでのバージョンを、アシスタントの3人+野村で演奏したのを聴いてもらいました。そして、ここから練習の時間が始まります。かなり、濃密な練習をして、最後に、表音階と裏音階のところでやるパッセージを、リズムだけ決めてやることにして、4小節のリズムを作りました。ちょっと「なんちゃってピアソラ」です。かなりいい曲です。

名曲になってきました。次回のワークショップでは、さらに、アレンジを進めていきたいです。

というわけで、9月21日は、水戸芸術館でコンサート。P−ブロッも出演します。「神戸のホケット」8人版も久しぶりに演奏します。