野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

鍵ハモトリオ

11月28日のメロディカ・トリオ・コレクション2009に向けて、8時間強の集中リハーサル。

Andrew Melvinさんの「トリオ」は、今年の7月にロンドンで世界初演した曲で、今回が日本初演になりますが、これは、鍵ハモの特性を生かした曲で、ところどころ声なども入ってくる曲で、5線は全く使わないで書かれています。非常にユニークな作品で、音響的にも面白いし、イギリス人らしいユーモアもあります。

鶴見幸代さんの「おほほ」は、2006年に作曲の作品ですが、鶴見さんらしいかわいい曲です。

近藤浩平さんの「ピクニック組曲」は、世界初演です。鍵ハモとパーカッションによる6曲で、第1曲「食べ物を持って集合」は鍵ハモ2本+タンバリンとシンバル、第2曲「潮干狩り」は鍵ハモ2本+ボンゴ、第3曲「水辺のゴイサギ」は、鍵ハモ2本+カスタネット、第4曲「Very very sleepyの歌」は鍵ハモ2本+ヴォーカル、第5曲「気障な蘊蓄野郎」は鍵ハモ2本+スネアドラムとシンバル、第6曲「牛の音楽」はタンバリンと鈴と鍵ハモです。
「水辺のゴイサギ」は、演奏しながら、各自が場所を移動しながら演奏する曲なのですが、スコアを見ながらなので、スコアを持って移動するのです。それが、妙な持ち味を出しています。「気障な蘊蓄野郎」では、ドラマー気分で格好をつけて演奏するという指定もあって、いろいろ解釈が楽しいです。本当に不思議な魅力に富んだ曲集です。

加藤千晴さんの「金魚町のどくだみ〜ラストテーマ」は、ゆっくり遠く離れて演奏すると持ち味が出る曲です。

牛島安希子さんの「Uninterrupted Rests Again」は、武満徹の「遮られない休息?」を鍵ハモで路上演奏していた録音を聞いて、作曲を思いついたそうです。武満テイストの美しい作品。

橋本裕樹さんの「Super Sonic」は世界初演です。これは、他の作品とは全然違う速いパッセージに満ち溢れた変拍子のリズミカルでスピーディーな作品。少し遅めに丁寧に演奏を作っていたのですが、作曲者自身に練習に立ち合ってもらったところ「もっと汚い音は出ないですか?」と言われました。そして、演奏は、もっとダイナミックで勢いがあり、荒削りなものを指向することに。力強い作品です。

寺内大輔さんの「林道」は、3人の奏者が違ったメトロノーム表記でずれて演奏する作品です。演奏する度に違った風景に出会うこの作品にも、随分慣れ親しんできました。以前よりも自在に演奏できるように感じてきました。

松本祐一さんの「Abraham Variations 3rd Variation」も世界初演です。聖書などの文章(日本語訳)を、品詞分解して、それぞれの品詞に対応する音形を決めて、文章を音楽にシステマティックに変換して生まれた作品です。しかし、それを生身の人間が演奏するので、ぼくたちらしいノリや訛りが生まれる演奏を目指します。松本さんは昨年武満徹作曲賞を受賞されましたが(審査員がスティーヴ・ライヒ!)、その受賞作も同様の方法で作曲されているらしいですが(片岡さんによれば)、その作品ちは違った鍵ハモらしさの光る音選びが特色になっています。

Carl Bergstroem-Nielsenさんの「Versnaperingen」も世界初演です。カールさんは図形楽譜などの作品が多い作曲家で、シュトックハウゼンの直観音楽に多大な影響を受けているデンマークの作曲家ですが、図形楽譜のアバウトな記譜のしかし特徴的な作品です。

David Kotlowyさんの「雲の模様」は、初めて作曲者自身に立ち合ってもらってリハーサルをしました。オーストラリア人の作曲家のアンビエントな美しい作品。

田中吉史さんの「うろおぼえの旋律とコラール」は、何度も再演して、だいぶ演奏し慣れてきました。単純な音形が微妙に変形されながら、3人でずれて重なり合いながら進む、ホケット的なリズミカルな作品で、何度演奏しても、本当にいい作品だと感じます。

野村誠の「ベルハモまつり」は、烏山小学校でのワークショップで生まれた素材をベースに作曲した曲。

いやぁ、面白いです。現代音楽は面白い。。。。

11月28日は、千駄木のペチコートレーンへ! 19時半開演です。2000円(1ドリンク付)ですよー。