野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

Arved Ashby編『The Pleasure of Modernist Music』

母の日なので母に電話した。元気そうな声だった。

 

しばらく自宅なので、発酵メイカーで豆乳ヨーグルトを作り、その後、納豆をつくる。今日は発芽玄米を食べようと、玄米を発芽させる。昨日に続いて、「作曲家の耳」に向けて、ピアノを練習。大相撲が始まったので、相撲を観ながら四股を3000回ほど踏む。朝も1000回ほど踏んだので、4000回ほど踏んでしまった。

 

Arved Ashby編『The Pleasure of Modernist Music』読了。ピエール・ブーレーズやウィリアム・ボルコムなど作曲家による論考もあれば、ベルクのヴォツェックと統合失調症を論じるようなのや、映画音楽と現代音楽を比較して論じるものや、色々読めて面白かった。Jonathan W. Bernardの前衛ロックについて論じているのが特に面白かった。本のタイトルがPleasureとついているくらいで、読むのも快楽だった。

www.elargonauta.com

 

 

 

ピアノを練習/インドネシアツアーに向けて

自宅での生活が再開。雑草が伸びまくっているので、庭仕事。多年草であるキンジソウは、今年も勝手に生えてきている。イチゴも多年草なので今年も少しだけど実をつけている。埋めた生ゴミからジャガイモがいっぱい生えてきている。ミントも多年草なのでいっぱい出てきているから、今年もいっぱいミントティーを飲もう。

 

5月31日の『作曲家の耳〜ハイドンとショスタコーヴィッチ』で演奏する曲が全部で5曲すべてヴァイオリンとファゴットとピアノのトリオで書いたので、ピアノを弾かなければいけないので、譜読みする。今日から少しずつ身体に覚え込ませていこう。

 

www.camk.jp

 

9月にインドネシアのSIPA(Solo International Performing Arts)に参加する件で、オンライン会議。毎年のように訪れていたインドネシアだが、コロナもあり10年近く行っていない。

 

1996年 ガムラン作品《踊れ!ベートーヴェン》上演のためのツアー(約1ヶ月滞在)

2002年 ISIの大学院で作曲の集中講義(約1週間)

2005年 i-picnic、野外での即興の撮影とパフォーマンス(約2週間)

2008年 ガムラン舞踊劇《桃太郎》上演のためのツアー(約2週間)

2009年 ジョグジャをリサーチ(約1週間)

2010年 ジョグジャで暮らし始めるが噴火で一時帰国(約1ヶ月)

2011年 ジョグジャで暮らす(約6ヶ月)

2012年 子ども創造音楽祭出演など(約1週間)

2013年 APIフェローとして共同作曲リサーチ(約2ヶ月)

2014年 APIの報告会など(約1週間)

2016年 瓦の音楽ツアー(約2週間)、だじゃれ音楽(約1週間)

2017年 年越しで滞在延長(約1週間)

 

久しぶりにインドネシアに行き、色々体験し吸収したい。

 

今回のツアーは、昨年10月の『キタ!千住の1010人』で素晴らしい6重奏の演奏で共演してくださった菊地奏絵さん(フルート)、北澤華蓮さん(ヴァイオリン)、桒原幹治さん(パーカッション)、野木青依さん(マリンバ)、水野翔子さん(コントラバス)が同行してくださる。それぞれ問題意識を持って活動を展開している音楽家たちなので、一緒に演奏できること、一緒に旅できることは貴重な機会だ。これまで何度もインドネシアで一緒に時間を過ごした佐久間新さん(ジャワ舞踊)とご一緒できるのも本当に嬉しい。音まち事務局の篠原美奈さんと長尾聡子さんが制作スタッフとしてご一緒できるので、時間があれば現地のアートプロジェクトの視察とかしたいけど、そんな時間取れるのだろうか?採択された国際交流基金の渡航助成だが、戦争の影響で飛行機の値段が想定を遥かに超えてしまい、先行きが見えず、自己負担額が結構生じてしまう可能性がある。そんな状況だからこそ、この機会を真に実りある時間にしたい。8月に作曲の時間が取れるので、きっと猛暑の中で作曲するんだろうなぁ。書きたいアイディアも、書きたい気持ちもいっぱいだ。長時間の会議の後に、ワクワクした気持ちが残った。

 

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第2回パープルリボン作曲賞講評/潮目

審査員として関わらせていただいた『第2回パープルリボン作曲賞』の審査結果や審査員講評が公開になっている。理不尽な暴力のない世界を何としても作っていきたい。

note.com

 

里村さんが仕事が休みで、つなぎで行われている展覧会を観に行こうと誘ってくれて、観に行った。津奈木は熊本県南部の水俣の近くで、つなぎ美術館では面白い展示をよくやっているので、しばしば訪れる。人口4000人の町に美術館があることが凄い。潮目というグループ展で、会場が美術館ではなく、つなぎ温泉ホテル四季彩 駐車場内トレーラーハウス、旧赤崎小学校校庭の2カ所。飯島小雪、キノシタユースケ、森田具海という3人のアーティストの作品が展示されていて、たまたま展示会場に森田具海さんがおられて、作品について色々お話を伺うこともできた。森田さんの作品の中で印象に残ったものに、葉っぱや花びらやガラスの破片などが散在する階段の数段にフォーカスした写真がある。言われなければ階段にも見えなかったが、そこに世界のつなぎ目があるような感じがした。

 

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ファソラシどすこい!レビュー/Barry Miles著『Frank Zappa』

飯尾洋一さんによる『ファソラシどすこい!タコどすこい!』のレビューが出た。

www.classicajapan.com

 

久しぶりに熊本の自宅で過ごす一日。2週間の旅で出た洗濯物を洗濯したり、荷物を片づけたり。家に帰ると楽器も色々触れて楽しい。

 

Barry Miles著『Frank Zappa』読了。エドガー・ヴァレーズの音響的な現代音楽にあこがれたロックミュージシャン、フランク・ザッパの伝記。Captain Beefheartは高校時代の友人。名プロデューサーに見出されて、メジャーデビュー。何でも録音して曲の素材にしていく父に録音されないように距離を置いていた娘のムーンが14歳の時に、録音を許可して生まれた《Valley Girl》が大ヒット。現代音楽のスコアを書き溜めていて、大ヒットで稼いだお金で、ロンドン交響楽団(ケント・ナガノ指揮)を雇ってレコーディング。後には、ピエール・ブーレーズ指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポランでアルバムを出したり、オーケストラや室内楽の作品も発表した。最晩年(と言っても今のぼくよりも若いけど)のアンサンブル・モデルンとのアルバムを、イギリス留学中の32年前に、Gareth Williamsの家で聴いたことを思い出した。

 

atlantic-books.co.uk

 

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Music-Making in U.S. Prisons

2週間の東京滞在を終えて、熊本に帰る。

 

Mary L. Cohen &  Stuart P. Duncan著『MUSIC-MAKING in U.S. PRISONS』読了。アメリカの刑務所での音楽実践についての本。アメリカが、刑務所にいる人の数が200万人もいる国だということを初めて知った。また、20世紀の初頭から刑務所での数々の音楽実践があり、第2次大戦中のSan Quentin on the Airというラジオ番組では、San Quentin刑務所の受刑者たちの声が、刑務所の外の人に届く貴重な機会になっていた、とのこと。作曲家のHenry Cowellのことはこの本には出てこなかったけど、彼が受刑者としていた4年間の活動も、きっと色々な影響があるのだろうなぁ、と思った。受刑者自身が作詞や作曲をして歌をつくるなど、とても勉強になった。いい本だった。

www.wlupress.wlu.ca

 

 

ファソラシどすこい!タコどすこい!楽日

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の東京芸術劇場での公演『ファソラシどすこい!タコどすこい!』、10:00-四股ワークショップ、12:00-、15:00-の2公演を無事やりきった。

 

ビゼーが《カルメン》を発表して150年、ベルクが《ヴォツェック》を発表して100年、フィリップ・グラスの《浜辺のアインシュタイン》、柴田南雄の《追分節考》、ロバート・アシュリーのテレビオペラ、リゲティの《ル・グラン・マカーブル》などから約50年の月日が経ち、オペラというジャンルも意味も拡張されていった先の現在に、JACSHAが《ファソラシどすこい!タコどすこい!》を発表した。相撲と音楽が交差し、複数の作曲家が交差する作品。

 

元力士の一ノ矢さんが言う。JACSHAの3人は敬意がある、と。相撲に対して敬意がある。子どもに対しても敬意がある。人に対して、文化に対して、敬意がある。だから、一緒に関わりたいと思う、と仰る。有難い言葉である。

 

作曲家として新しい音楽を体験を創造するために新しい創造の場を創造する。それを新しい土俵をつくる、と呼ぶ。その土俵では、相撲と音楽ががっぷり四つに組み、作曲家と作曲家がぶつかり合って作品が生まれる。演者と観客が取り組み、ソプラノ、バリトン、相撲甚句の歌い手、児童合唱、観客の声など、異なる声が交差する。

 

シュトックハウゼンがオペラ《光》の作曲を始めたのが約50年前。そこから彼は30年近くかけて、長大なオペラを完結した。JACSHAの《オペラ双葉山》は始まったばかりで(《ファソラシどすこい!タコどすこい!》も、その一部となるだろう)、創作し続け、できることならば、99歳までJACSHAとして作曲を続けていきたい。

 

本番前に挨拶に来られた東京芸術劇場の新芸術監督の山田和樹さんが舞台セットを見ただけで、「負けた!」、「やばい!」と何度も言ってくれた。それは最大限の賛辞で大変有難いのだが、ぼくたちは別に山田和樹さんに勝ちたいわけではない。勝つことなんて全く望んでいない。では、誰に勝ちたいのか?戦いたい相手は、気候変動、暴力、差別などである。そして、これらの敵は、実は自分自身の中にもいるので、自分自身と戦わなければならない(『タコどすこい一人相撲』というのは、『他己どすこい一人相撲』と書くのかも)。みんなが息を合わせて自分自身と戦っていければ、ぼくたちは、これらの問題を乗り越えて、未来に「のこった、のこった」となれるはずだ。

 

そういう意味で、本日の公演の最後に、何の合図もなく、正面の観客、向正面の観客、タコ怪獣、行司が、息をのんでアンサンブルを開始したことは、未来への希望だと思う。

 

ソプラノの工藤あかねさん、バリトンの松平敬さんの素晴らしい表現力の歌声がずっと歌垣のように愛し合い続ける中、歌がディレイして伝わっていき、すがも児童合唱団の次世代の歌が生まれていく。観客の歌声で時空が反転した先で、いつの間にか、ソプラノからバリトンへの歌垣が、木花相撲踊りから大相撲の相撲甚句への歌垣になって終演。

 

本当に良い座組みだった。土俵際まで作り続けてくれた舞台美術の中村友美さん。舞台技術スタッフの仕事は見事だった。特に、舞台監督の松島千裕さんの行司のような美しいお仕事と瞬時に察して動く的確な現場力。照明家の新島啓介さんの照明デザインは、無難な道をとらず、常に踏み込んだ解釈をしてくれて、各シーンの意味づけを光で炙り出してくれた。スピーカーが音源であるようになりがちなデッドな音響の劇場で、各演者から音が出ているように音響設計した行方太一さん。そして、この見事な座組みにしてくれただけでなく、各自が笑顔で仕事できるような様々な心遣いのある山下直弥プロデューサー。おかげさまで、樅山智子、鶴見幸代、野村誠の3名の作曲家が思う存分クリエーションし、新作を発表できた。本当にありがとうございます。

 

涙を流しながら手を振る釘元厚子さんを見送り、また宮崎にも遊びに行きたい、九州の相撲甚句をもっとリサーチしたい、相撲聞芸術をもっと掘り下げたい、と思う。キャストのみなさん、関係のみなさん、本当に本当に、ありがとうございました。

 

せっかく馴染んだ皆様と

今日はお別れせにゃならぬ

いつまたどこで会えるやら

それともこのまま会えぬやら

思えば涙がパラーリパラリと

タコー、どすこい、どすこい

 

ファソラシどすこい!タコどすこい!初日

ついに「ファソラシどすこい!タコどすこい!」(@東京芸術劇場シアターウエスト)が開幕。本日、12:00開演と、15:00開演の2公演をやったけど、観客参加を前提にした作品なので、観客が違うと微妙に違う味わいになり、2公演とも楽しく上演できた。

 

兵庫県の豊岡市や、宮崎県の都城市など、遠方から足を運んで下さったお客様もいて、有難い。現役のお相撲さんや行司さん、呼出しさんなど相撲関係者も観に来てくださったし、アート関係の方々も、そして子どもたちもいっぱい観に来てくれて嬉しい。

 

www.geigeki.jp

 

早くも明日が楽日。当日券もあります。東京芸術劇場シアターウエストにて、お待ちしております。

 

www.geigeki.jp