野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

コントラバスのことば/愛知大学で門限ズ

愛知県の豊橋に移動中、12月21日のコンサートで世界初演になる《コントラバスのことば》のプログラムノートを執筆する。

www.confetti-web.com

愛知大学へ。文学部メディア芸術専攻の特別講義。クロスジャンル・バンド門限ズ(野村誠吉野さつき+倉品淳子+遠田誠)が久々に勢揃い。今年、門限ズのウェブサイトも始まった。

 

mongens.wixsite.com

学生たちが手書きで書いてくれた今日の授業への要望を読むと、謎の「200m」の言葉がある。「200m」って一体何だろう?と思って読んでいくうちに、それが「zoom」であることに気づく。手書きだと、2とZの区別がつきにくいし、0とOの区別がつきにくい。zooと200の区別がつきにくい。ここから200mというテーマが浮上した。

 

学生たちが、脚立や人工芝や、数々のプロジェクターや、ありとあらゆるもので舞台セットを作ってくれていて、この中で本日は即興的にパフォーマンスを構築しようという授業。2年生の学生たちと短時間だけれども、一気にパフォーマンスを作り、3年、4年の学生らが観客となって上演。

 

その後、門限ズのメンバーで、3月の福岡と北九州での2地点リモート公演の打ち合わせ。2地点それぞれで成立させるために、それぞれの会場の舞台配置と、それぞれの会場でのスクリーンに投影される映像を記述していかないといけない。その上で、音響やカメラなど、いろいろ決めるポイントがある。いろいろ面白くなりそう。

Music for 1000 Bicycles/世界のしょうない2022

久しぶりに自宅にいられるのが嬉しい。庭の畑から大根を収穫したり、春菊を収穫する。遠征が続くと、畑仕事や家事があまりできなくなるのが残念。

 

フィリピンのキュレーターのDayang Yraolaからの委嘱で、《Music for 1000 Bicycles》というプロジェクトのために作曲することになっていて、当初12月1日〆切だったのをスケジュールがいっぱいなので、12月10日に延長してもらっていた。しかし、12月に入ってから東京、沖縄と遠征が続いて、明日から豊橋に行って、豊中経由で12月10日の深夜に帰宅となると、実質今日が〆切。昨日までの余韻に浸って、明日くらいから作曲したいんだけど、やれるところまでやって、明日以降は新幹線の中とかで作曲しよう。

 

と思って作曲に取りかかる。時間がないからと焦っても仕方がないので、一つずつ作業を始める。昨年の秋に京都で録音した鈴虫の鳴き声を聞いていたら、これで一曲作りたくなって、秋の鈴虫に合わせてピアノを録音したら、それにソプラノケンハモをトッピングして、沖縄の瓦の音をふりかけたら、曲ができた。京都と沖縄と熊本とマニラが重なり合うような、コロナの中での様々な試行錯誤を思い返すような、そんな音楽を作れて嬉しく思う。

 

12月10日に始まる『世界のしょうない音楽ワークショップ』に向けてのオンライン会議。このプロジェクトを立ち上げ運営していた柿塚さんが日本センチュリー交響楽団を退団したため、今年度は準備段階から実施できるのだろうかと不安に突き落とされることが何度もあり、それでも、柿塚さんの穴をなんとか埋めようとしてきて、ようやく本日の会議では、豊中市大阪音大、センチュリー、REKの面々の顔を見ることもでき、少し視界が晴れ、10日からのワークショップが楽しみになった。今年は、オンラインでのワークショップと、老人ホーム(淳風とよなか)での対面のワークショップをリンクさせるハイブリッド・ワークショップ。

 

昨年、リモートで創作したのがこちらで

www.youtube.com

一昨年の対面でのワークショップの成果はこちら

www.youtube.com

沖縄最終日

那覇のホテルをチェックアウト。美術家の島袋道浩さん、写真家の野口里佳さんとランチ。尊敬する同世代のアーティストたちと、交流する貴重な時間。

SHIMABUKU

NOGUCHI RIKA

 

今回入手した沖縄の瓦を郵便局から発送。淡路島アートセンターで、現在、淡路瓦の瓦楽器が多数保管されていて、イタリアで入手した瓦、インドネシアで入手した瓦、高浜で入手した三州瓦も保管されている。今回、新たに琉球瓦がコレクションに加わった。いつか瓦楽器ミュージアムができる。

 

長崎のプロジェクトで象の鳴き声を表現するためにトランペットを購入して練習したという島袋くんと海に行き、島袋くんはトランペットを吹き、ぼくはケンハモを吹いた。

 

熊本に戻ると、こちらは冬で寒かった。フィリピンのダヤンとのプロジェクトの作曲が遅れていて、駅から自宅まで歩く間にも、いろいろ面白い音を見つけては録音。作曲の着手が遅れているが、脳内ではいろいろ構想を練っている。

 

風邪をひかないように、しっかりお風呂にあたたまった。

 

 

 

 

 

沖縄県立芸術大学3日目

沖縄県立芸術大学、3日目=最終日。

 

本日は、体育館で「瓦の音楽」のワークショップを行った。しかし、せっかく首里城の側で、首里城の瓦も使ってのワークショップなので、できたら首里城の見えるところを歩きたい。首里城まで散歩する。ワークショップも外でやりたい。

 

キャンパス内など、学内の外で演奏したら、日曜日だけれども、外部の人、他の学科の人などと交流が生まれるかもしれない。外の環境に触発されるかもしれない。素敵なロケーションを見つければ、美しい写真や動画が撮れるかもしれない。

 

体育館から外に出た。音楽の枠の中に閉じこもっていたのも、少しだけ(狭い意味での)音楽の外に出た。それが、今日のワークショップの最後にやったこと。

 

枠の外に少しだけはみ出すこと。そして、出会うこと。

 

谷本先生、神谷先生ほか先生方、学生の皆さん、事務の皆さん、島袋さん、鶴見さん、平良さん、参加者の皆さん方、ありがとう。

沖縄県芸2日目

沖縄県立芸大での2日目。

 

奏楽堂のステージの上に、ピアノ、モニターなどをセッティング。美術家の島袋道浩くんがセッティングに関して、指示をしてくれる。単に機能的に机やスピーカーを配置するのではなく、美しいビジュアルになるために、無駄な台は置かない。背景が美しくなるように幕をどうするかを考える、など、美術家ならではの配慮がいっぱいでさすが。

 

14:00-16:00は、日本センチュリー交響楽団との仕事について語り、その後、大学院生たちとのトークセッションになった。民俗芸能のフィールド調査でも、教育でも、地域と関わる参加型アートでも、古典音楽の普及でも、関わること=介入していくことは、迷惑になるかもしれない。しかし、迷惑を恐れて介入を遠慮してしまう忖度は、何も生み出さない。拒絶されないように介入するには、どうしたらいいのか?お互いの了解のもとで、他人の領域に土足で入り込むには、どうしたらいいのか?他人の領域だったところを、自分の領域にもなる当事者性をどう獲得していくのか?それがコミュニケーションであり、創作の大きな境界である。

 

18:00からの公演までの間に、美術の大学院生の展示会場に行く。作曲の大学院生と一緒に行く。美術の院生は、奏楽堂に来たのは入学式と卒業式以外で初めてだと言う。音楽の院生は、美術のギャラリーに入ったのは初めてだと言う。非常に近い音楽の建物と美術の建物の間に見えない境界線がある。その境界線をどうやって超えていくか。

 

作曲の院生たちと話す。島袋くんの娘さんたちが練習している簡単な「スターウォーズ」の譜面を持ってくる。小学生でも弾ける簡単なアレンジ譜。これを大学院生たちと連弾で弾いてみたり、ショパンを弾いてもらって、フルコンのピアノを間近で聴いたりする。

 

18:00-20:00は、島袋くんとのレクチャー。野村くんはピアノが弾けて技術がある上で様々な変なこともするアーティスト、と言う。そして彼自身は、デッサン力もなく、技術がないから、日本のどの芸大にも入れなかった。だから技術がない上で、どのように表現していくかについて、レクチャーをするので、技術がある人には役に立たないかもしれない、と前置きする。実際、彼は、空間をどのように美しく見せるのか、人とどのようにコミュニケーションするのか、など、様々な技術がある。それは、デッサンなど古典的な技術ではないが、より普遍的な技術のようにも思う。そして、彼の技術にかかれば、世界にある何気ない物や人が思いがけない美を放つ。

 

島袋くんと野村でのコラボレーションは、それほど頻繁ではないが、オリンピックのように数年に一度、濃密に行われる。その時々のコラボを振り返るのも面白かった。YouTube配信は1時間で終了。後半は、対面の人だけが見られる秘蔵映像や、ここだけの話、さらには、サプライズのフルーティストの飯島先生との共演なども。

 

ということで皆さん、おつかれさま。写真家の野口里佳さんとも久しぶりにゆっくりいっぱい話せた沖縄の夜。

 

沖縄県立芸大でのレクチャーその1

沖縄リサーチ。沖縄在住の美術家の島袋道浩くんと那覇を歩く。朝食を食べたお店で、那覇市立壺屋焼物博物館で赤瓦の展覧会があることを知り、せっかくだから寄ってみようと博物館に向かって歩いていると、偶然、骨董屋さんの前に瓦が積んであるのを発見。1枚100円とのことだったので、その場で叩いて音を鳴らしてみると、かなり色々な音がするので、15枚ほど購入。明後日のワークショップに使えそう。博物館で展示を見る。偶然、今だけ瓦の展覧会をやっている。沖縄の瓦についても勉強する。

 

島袋くんと沖縄県立芸大に行く。音楽文化の先生であり招聘してくださったのが谷本先生、同僚で琉球舞踊を踊られる神谷先生、事務の中野さんとランチの後、明日、明後日の会場も下見し、燃えてしまった首里城の瓦の破片を見せてもらう。この破片を明後日のワークショップでは演奏する。ブリテンのオペラが専門の向井先生は、入試の課題図書に野村誠の本を活用したこともあるそうだ。主任の小西先生とは彼女が静岡大学勤務の頃以来の再会。フルートの飯島先生は今回配信担当してくださる。その他、いろいろ学生の方、先生方、ご紹介いただくが名前を把握しきれない。

 

18時より大合奏場でのレクチャー。鍵盤ハーモニカ・イントロダクションで、鍵盤ハーモニカの実演とお話。ピアノの演奏で、野村誠《Away from home with eggs》。ガチャ・コン音楽祭の話と『無人駅の音楽会』の動画、『瓦の音楽』の話と琉球瓦の演奏。JACSHA(=日本相撲聞芸術作曲家協議会)の話と鶴見幸代さん飛び入りで、野村誠《相撲聞序曲》の演奏。ピアニストの平良明子さんに譜めくりしていただく。『野村誠x北斎』の話の後、いろいろ質問に答える時間。あっという間の2時間だった。

 

鶴見さん、平良さんと夜の公園で四股1000。ホール職員の小川くんも最後は合流。

 

 

 

 

沖縄へ/送別の餃子/アルヴィン・ルシエ

明日から、沖縄県立芸術大学でのレクチャー&ワークショップなので、色々資料の整理をする。

 沖縄県立芸術大学 音楽学部 アーティスト・イン・レジデンス 2021

野村誠 音楽の未来

1)12月3日 18:00-20:00 作曲家レクチャー「創作と演奏と、その狭間の∞」

@大合奏室

出演:野村誠ライブ配信を予定)

2)12月4日 14:00-16:00 トークセッション 「センチュリー響との8年 アーティストと社会包摂」

@奏楽堂(オンデマンド配信予定)

出演:野村誠、谷本裕先生、阪田清子先生、学生の方々

3)12月4日 18:00-20:00 オープンダイアログ 「越境するアーティスト」

@奏楽堂(ライブ配信を予定)

出演:野村誠、島袋道浩

4)12月5日 14:00-16:00 ワークショップ 「復興祈る 首里城瓦の音楽」

@体育館(オンデマンド配信予定)

出演:野村誠

 

この動画を見せようかなとか、この話をしようかな、と色々整理しているうちに時間になって出発。新幹線で福岡に移動して、那覇に飛ぶ。移動の機内で井口淳子先生の中国でのフィールドワークでの人々との出会いを綴った『送別の餃子』を読了。実際の研究の内容には全く触れず、研究で訪れた中国の農村などで出会った人々について、井口先生の主観で語られる。井口先生というフィルターを通して、中国について知る本。コロナで外国に出られない今、中国の奥地まで旅ができる一冊。

 

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島袋くんと再会。明日からのことの相談などもしたけど、銀河ちゃんの算数の問題を教えたりもした。

 

アルヴィン・ルシエが亡くなったらしい。1989年に京都市立芸大でレクチャーを聞いた時に、トライアングルの独奏や《I am sitting in a room》の自演などを体験。京都パフォーミングアーツセンターでのインスタレーションも味わった。2000年にはウエスリアン大学で水谷隆子さんの箏リサイタルで、ぼくの「りす」とルシエの新作などが演奏された。ロンドンのマイケル・パーソンズの家に泊まった時、マイケルはルシエと親しいので、色々話を聞いたが、ルシエのウェスリアン大学の講義をまとめた『Music 109』という本が面白いと紹介してもらい読んだ。ルシエの目を通して語られるアメリ実験音楽について、大学の新入生(作曲に限らずあらゆる学生)に向けてのわかりやすい話も印象的。合掌。