野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

中野裕介展/平川渚さんと打ち合わせ/春日の11曲目まで

昨日から不知火美術館・図書館で中野裕介展が開始した。展覧会を観に行った。施設名が不知火美術館・図書館であるが、美術館だけでの展覧会だろうと思っていたら、全然違った。図書館と美術館の間にあるカフェスペースはもちろん、その先の図書館の奥の奥まで展示が越境していた。

 

展示の多くは、ブルーシートのような素材の上に描かれた絵画なのだが、これが、空間に吊り下げられたりしていて、展示室の空間を微妙に仕切っている。よくよく見ると、本のような形にシートが組み合わされていて、本なので、表ページと裏ページがあるように、両面に別々の絵が描かれている。図書館に美術が越境しているが、美術館に図書館を象徴するような巨大な本が出現している。スピーカーが、結構、端っこだったり、天井だったり、辺境に配置されていて、控えめに音がする。プロジェクターがいくつもあって、色々な文字が投射されている。

 

こんな展示空間で肥後琵琶のライブがあった。肥後琵琶は、俊徳丸伝説についての語り物なのだが、空間が断片化されていて、様々な断片化された言葉が行き交うインスタレーションの中で琵琶の語りを聞くと、物語も解体されて、断片が耳に飛び込んでくる。空間が歪み、言葉がワープし、風景が反転する迷宮のような展覧会。

 

ちょうど10年ほど前に、だじゃれ音楽と野村誠に関して東京芸大で卒論を書いた丸田実季さんが偶々熊本に帰省中で、お会いした。10年前は学生だったのに、母親になっていて、今は青森県に住んでいる。懐かしい。

 

鹿児島県在住の美術家の平川渚さんと打ち合わせ。昨年、鹿児島でのグループ展を拝見したが、編み物でインスタレーションをしていて、会期中も会場で編んでいるワークインプログレスの展示だった。今年の12月から来年の2月にかけて、霧島アートの森で個展をされる。編み物の編み図を楽譜として演奏してほしい、というリクエスト。平川さんの作品も編み図も美しい。

 

www.nagisahirakawa.net

 

打ち合わせしていると、美術家の宮本華子さんともお会いした。先月、兵庫県の竹野でお会いしたが、熊本県在住。九州でのネットワークが、少しずつ広がっている。

 

www.hanakomiyamoto.com

 

打ち合わせをしている間に、中野さんのワークショップがカフェも図書館もプラレールが増殖していき、境界線を無化していく。自由な不知火美術館・図書館。

 

帰宅後は、《春日の50の物語》の作曲作業をして11曲目まで来た。それぞれの曲で練習できるピアノのテクニックを副題にしてみた。

 

1 奴国の丘 和音のエテュード

2 須玖小学校 サンバのエテュード

3 嫁ごの尻叩き クラスターのエテュード

4 春日北小学校 分散和音のエテュード

5 日の出小学校 半音のエテュード

6 龍神池 ポリリズムのエテュード

7 春日原小学校 指くぐりのエテュード

8 クローバープラザ 分散和音のエテュード2

9 夢  Cmaj7-Dm7のエテュード

10   警察署 8ビートのエテュード

11 若葉台 レゲエのエテュード

 

中野裕介トーク

本日より不知火美術館・図書館での中野裕介/パラモデルの展覧会『かなたをよむ:海と空のあいだのP』が始まった。本日は、展覧会を見る時間は取れなかったが、中野裕介さんのアーティストトークを聴きに行った。

 

kumanichi.com

 

現代美術のアーティストだが、大学で日本画を学ばれたようで、日本画と無関係のような活動も、実は日本画から繋がっている。プラレールを連結して空間に繋いでいくことと、別々な書籍の引用を連結して空間を作っていくことも、本人の中では繋がっている。テキストと絵画の混在は、書画、漫画など、伝統的な方法の延長と言える。関係性や脈絡が見えにくいと見られがちな活動は、非常に一貫性があることがよくわかるトークであった。

 

進行役の美術館の里村真理さんが、今回の新作について何度も質問を繰り出すが、あまり作品のディテールや引用した本についての細かい話には深入りしなかったのが印象的。コンセプトメイカーとしての中野さんと、絵を描く職人としての中野さんの間に作品があると思うが、トークでは職人としての中野さんよりはコンセプトメイカーの中野さんが饒舌だった。

 

作曲中の《春日の50の物語》の1〜8曲目を推敲しつつ、9曲目の《夢》の譜面を書く。

脱「夏バテ」の日

今日の熊本は曇り。いつもよりは暑くないので、今日はエアコンなしで過ごし、家事をいろいろしようと思う。

 

畑仕事をした。生えまくっている雑草を抜いて、蚊と格闘しながら、だいぶすっきりさせた。いつの間にか8月も中旬。冬野菜の準備にとりかかなければ、、、。

 

遠くまで買い物に出かけたり、耳鼻科に行ったりした。副鼻腔炎は1週間薬を飲んだら、すっかり良くなった。耳鼻科の待合室のテレビでは高校野球

 

そうめんを連投していたが、ちゃんとご飯炊いて味噌汁作ろうと思って、料理する。

 

Memu Earth Lab.からリリースされるアルバムの音源が、Nick Luscombeから送られてきていたが、返事をしていなかったので、今日はしっかり音源を聴いて、修正ポイントなどをニックさんにお伝えした。2020年の北海道でのレジデンスの成果としての音源。

 

 

日田の音楽をつくる

別府に行ったのに温泉に入らなかったとは、別府人からは怒られるだろう。街中でやっている塩田千春展も温泉も素通りし、別府の知人たちにも連絡せずに、住所は別府市だが山奥の片岡家だけに寄ってきた。

 

音楽評論家と音楽マネジメントのご夫妻が湯布院に家をゲットしたとの連絡もあり、片岡家に行くならばお立ち寄りください、というお誘いも今回はお断りして、片岡家オンリーの滞在。

九州は広いので、隣の県でも結構遠いが、それらはまた次回に。

 

本日は、大分県とは言うものの、大分と福岡と熊本の県境くらいにある日田へ。パトリア日田というホールがあって、ここの15周年企画で、日田の音楽をつくる企画。1月29日に最終公演があり、住民参加のステージ。ワークショップで関わる方々、吹奏楽団や合唱団、さらには地元の音楽家の方々などの力を総結集して、林業の盛んな日田で、「木」をテーマにした音楽をつくる。ワークショップも全部、「木」曜日に開催にした。今日は祝日だけど木曜日。

 

そもそも、ぼくを招聘してくれた担当の黒田さんは、福岡の春日のホールに転属で、それを及川さんが引き継ぐ形で担当していたが、8月1日から新規採用の中村さんが担当になったそうだ。人事もめまぐるしいが、皆さん、それぞれの個性で楽しそうに仕事をされている。

 

コロナで参加キャンセルがたくさん。何せ、家族で申し込んでいて、一人でもコロナにかかると、全員欠席になるし、申し込んでいた人は誰もコロナになっていなくても、同居している家族がかかると欠席になる。だから、今日のワークショップは少人数になった。

 

少人数だと「しょうぎ作曲」ができる。前半1時間くらいは、みっちり「しょうぎ作曲」。その後は、木の楽器だけを演奏したり、「日田どん」という言葉でリズムを作ってみたり、それを元にメロディーを作ってみたり、最後はコードを考えて、「木レンジャー」のテーマ曲も作った。少人数だけど、手応え十分の一日。

 

木の楽器、相撲の神様「日田どん」、祇園祭と水郷踊り、といったあたりが3本柱となって、日田の音楽が生まれていきそう。

 

 

 

 

 

片岡祐介宅を訪問+配信ライブ

楽家片岡祐介さんが、別府の山奥の古民家で生活を始めた、というので訪ねた。明日、大分県の日田でワークショップがあるので、同じ大分県だし、ついでに寄ったのだが、日田から別府まででも2時間かかるので、片岡宅までは大旅行だった。九州は広いし、大分県は大きい。

 

片岡氏の住んでいるところは、見た目にも美しい山里だったが、車の音がほとんどしないのが素晴らしい。山深い奥地のようでも、近くに国道や高速や新幹線などが走り、実は騒音が多い田舎はいっぱいある。ここは、国道や県道から逃れて坂道を登ったエアポケットのような場所なので、交通騒音から逃れていて、自然の奏でるオーケストラだけを聴くことができる。

 

古民家を改装して住む人は、いろいろいるけど、片岡祐介片岡祐介だった。隣の部屋の床はグニャグニャだったけど、グランドピアノの入っている部屋は、しっかり床を補強してあった。寝室を作るよりも前に、まず音楽室を作っている。食べることよりも、寝ることよりも、音が最優先されている暮らし。

 

夜は、配信ライブもやった。片岡祐介を満喫した。冒頭の即興が30分もやっていたらしいし、配信ライブも90分以上やったのだが、ぼく的には、この3倍くらい演奏したくなった。つまり、30分やったから出し切った、ではなく、30分やったら、触発されてもっとやりたくなった、だった。こちらがその配信動画(背景の虫の声もいい)。

 

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片岡さんは、抜群に反応がいいので、即興していて、どんどん音楽が転がるように展開していくので、演奏していても先が読めずに面白い。今年の初めに南川さんとやった『骨の髄まで鍵盤ハーモニカ』は、最初から60分ノンストップ即興と決めて60分ノンストップ即興をした。

 

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世界だじゃれ音Line音楽祭day4で共演したドイツのSimon Rummelも共通する感覚があるので、おつか片岡さんと共演する機会作ってみたいなぁ(以下の動画の2:06:50からジモンくん、ドイツと日本のzoom共演なので、音質はzoomクオリティ)。

 

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ぼくは片岡祐介の音に、「邦楽」の演奏家以上に「邦楽」を感じる時がある。「邦楽」、「歌舞伎」、「能」、「浪曲」などのエッセンスを凝縮して、昭和を通過して、濃縮すると片岡になると思う。片岡さんの音には、無駄な余韻や残響はなく、清くありのままを点で打つ。片岡スピーカーも低音や高音を強調してゴージャス感を出して音に化粧することが一切ない。様々な芸能の伝承は途絶えるかもしれないが、片岡さんに凝縮されて残っている感覚だけは次世代に伝承したいなぁと思わせる天然記念物的感性を持つ音楽家

 

その音楽家が自分の音楽を追求するためのスタジオであり家である場所を作っている。古民家を改装とか、不便なことや大変なことが多いんだけど、それでも自分流にカスタマイズできるので、本当にやりたい音楽とか生活に近づけていくことは、しやすいのだろう。そう思うと、大変だけど、返ってくるものも多いし、やる甲斐があるんだろうなぁ。あのピアノを片岡好みに調律/調整できる人がいるんだろうか?(現れるか)。片岡さんのDIY力を見ると、自分で調律するのがベストのような気もする。

 

ぼくは、作曲・家(さっきょく・いえ)という家をつくるのは構想にあるんだけど、全く実現できていない。家を作曲する。または、作曲が家になっている。片岡さんは作曲・家をやっているつもりではないだろうけど、自分がやりたいことを思い出させてもらい、いっぱい触発された。ありがとう。

 

片岡カレーをいただき(with なちゅらる宇宙人さん=唯一の対面の観客)、かぼすサイダーを飲んでくつろいで後、笑いながら当日の録音を聴いているうちに、気がついたら眠っていた。

 

片岡祐介/ガチャ・コン音楽祭のデザイン/こどもアンサンブルとよおか/春日の50の物語

暑い。夏バテ気味。なんとかコロナにかからずに生きている。

 

片岡祐介さんが別府に引っ越したので、明日、訪ねることにした。片岡さんは最近YouTuberでもあるので、せっかくなら配信をしようとのことで、8月10日20:00よりライブ配信をすることになった。

 

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片岡さんとは、18年前にこんな本も出した。

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びわ湖・アーティスツ・みんぐる2022『ガチャ・コン音楽祭vol.2』のフライヤーデザインの打ち合わせ。デザイナーの大田高充さん、コーディネーターの野田智子さん、永尾美久さんと。大田さんは、柳沢英輔さんの『フィールドレコーディング入門』のデザインもされていて、ゴング楽団のメンバーでもある。デザインがかたまっていくと、自然に企画も練り上がっていくと思う。大田さんのデザイン、楽しみ。

 

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)とKIACの打ち合わせ。橋本麻希さん、鶴見幸代さん、樅山智子さんと。「こどもアンサンブルとよおか(仮)」を結成して、こども相撲聞芸術に取り組みたい構想の確認。

 

ちょっと中断していたけれど、ピアノ曲集『春日の50の物語』の作業をする。今日は、

 

5 日の出小学校

6 龍神

7 春日原小学校

8 ドリームクローバー

 

の4曲の譜面をスケッチした。

 

 

 

 

 

編む 継ぐ む

自宅にて。

 

25絃奏者の山本亜美さんのために書いた新曲《編む 継ぐ む》のプログラムノートを作文。書きたいことが色々ありすぎて、なかなかまとまらない。9月9日が本番だから、1ヶ月後。ぼくの曲を練習中の亜美さんは、既に曲を暗譜しているらしい。早く演奏を聴いてみたい。

 

第8回山本亜美 箏 二十五絃箏リサイタル オトを編む | Tokyo Concerts Lab.

 

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庭で収穫したスイカを食べた。甘かった。