野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

香港の中学生/3年先の稽古/4コマピアノ音楽史

確定申告の準備が少しずつ進んでいる。サヌカイトやピアノの研究は良い感じに続いていて、3月3日の高松市美術館のコンサートへの準備も着々と進んでいる。というか2週間後だ!いよいよだ!

 

www.city.takamatsu.kagawa.jp

 

香港のCCCDからオンラインワークショップのシリーズを頼まれているのだが、中学生を対象にした6回シリーズになりそうで、とても楽しみ。

 

里村さんから、最近の若い人は「タイパ」という言葉を使うらしい、と聞いた。タイムパフォーマンスの略らしい。なるほど、ぼくは気が長い方なので、「タイパ」の悪いことに取り組めるが、若い人が「タイパ」を重視するんだったら、ぼくはもっと「タイパ」の悪いことを積極的に取り組んでいくべし、と思った。1年、2年ですぐに成果が出ないことでも、時間をかけて熟成させる。人生の残り時間がだんだん少なくなってきたと焦るのではなく、中年になったからこそ、どっしりと慌てずにやっていこう。「いそがばまわれ」、「序破急」、「せいてはことをしそんじる」、「石の上にも3年」、「3年先の稽古」。野村誠+大沢久子『老人ホームに音楽がひびく』(晶文社)の中で書いた「朝顔作曲」の話。ここは、じっくり腰を据えて、掘り下げて、何年もかけて、新境地に向けて熟成させていくぞーー。慌てない慌てない。

 

www.shobunsha.co.jp

 

小倉貴久子監修、工藤啓子著、駿高泰子漫画『すぐわかる!4コマピアノ音楽史 ロマン派~20世紀編』読了。入門書なのに、ピアノの構造のこととか、作曲家とピアノの関係のことなど、マニアックなことに触れながら平易に書かれているので、ピアノについて考える上で勉強になる本だった。

books.google.co.jp

宇陀と山鹿/肥後琵琶とアートラボマーケット/当事者は嘘をつく

里村さんの友人のヨーコさんが、全国芝居小屋会議に参加するために、奈良県の宇陀から熊本県の山鹿に来ていて、山鹿まで会いに行くというので同行した。山鹿は有名な芝居小屋の八千代座がある。

 

昨夜は、八千代座にOKIとかサヨコオトナラとか、色々なバンドが出演するライブもあったらしい。サヨコオトナラと以前一緒になったのはいつだったか、全然思い出せないが遥かに昔だ。

makotonomura.hatenablog.com

 

ヨーコさんは、宇陀の町で続いているセンギョとか言う伝統行事が久しぶりに開催できたことを里村さんに報告していた。楽しいランチ。共通の知人などもいて、楽しく会話。

 

ヨーコさんと別れて後、灯籠博物館に行ったり、不動岩という巨石を見に行ったり、カフェに行ったりした。ぼくは、肥後琵琶を始めることの見通しを語り、里村さんは熊本市現代美術館のアートラボマーケットでのプロジェクトの構想を語る。

 

小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房)、読了。体験談のような小説のような本。ノンフィクションのようで、フィクションのようで、リアルでありながら、冷静に語られ、適度な距離感を持って、読者に語りかけてくる。性被害の当事者の体験談のように始まり、当事者が加害者と対話を交わすことや赦しに関しての様々な考えが行き交う。気がつくと、そのことに研究者として、どう立ち向かうかの話になったのに、気がつくと水俣を研究することで、立ち位置が当事者でなくなっていく。それが、全て真実なのか真実でないのかは、当然読み手には分からないし、分からなくてよいが、この本の物語は、非常にリアルに勇気づけてくれる文章である。コミュニケーションに対して絶望せず、伝えようともがく心を放射してくれる本だ。それは、ハラスメントのこと、戦争のこと、政治のこと、社会のこと、色々なことにつながっていくけども、勇気づけられる本。誰しもが読むと、自分の鏡になり得る美しい本。

www.chikumashobo.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

肥後琵琶

確定申告への道は、相変わらず徐行運転。

 

せっかく熊本にいるし、肥後琵琶を追求したいと思っていたが、今日はその思いが高まり、琵琶を購入し始めることにした。今日、たまたま見つけたこちらの動画からも、九州で琵琶がこんなに身近だったんだと思わされた。

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肥後琵琶の最後の琵琶法師と言われる山鹿良之さんは本当に素晴らしい。

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その山鹿さんに琵琶を習ったという後藤昭子さんと出会えたことも大きく(それは、里村真理さんが一昨年に不知火美術館・図書館で企画した中野裕介展の関連でのこと)、

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その後藤さんに習っているのが岩下小太郎さんの熱意も素晴らしい。

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で、コタロウさんに連絡すると、たまたま手に入った琵琶があって、購入できることになった。「すごいタイミングですね。野村さん、持っていますね。」と言われ、純粋に音楽家としての興味から、やってみることで肥後琵琶について気づけることがあるのではないか、と思う。肥後琵琶を学ぶことは、肥後琵琶だけを考えるのではなく、そこを起点としながら、雅楽の楽琵琶から、アラブのウードまでのアジアの琵琶について考えていくことになるだろう。弦楽器としての琵琶のことと、語り物としての声のことも、色々取り組むことになるだろう。そして、どうせやるなら、結構本気で取り組み深めてみないと意味がない気がする。生涯のテーマになるだろうけど、まずは短期的目標として2030年くらいには、何か今の自分には想像もつかないような音楽を提示してみたい、と宣言してみよう。

 

野村誠略歴

8歳で「作曲」を始める

21歳で「共同作曲」を始める

24歳で鍵盤ハーモニカを始める

39歳で「相撲聞芸術」を始める

43歳で「だじゃれ音楽」を始める

45歳で鍵盤ハーモニカ吹き語りを始める

51歳で四股を千回踏み始める

55歳で琵琶を始める

 

 

 

 

歯医者に行った/新倉壮朗の映画/オハイエ音楽隊

今日は、歯医者に行った。歯医者は耳で体験する場だと思う。目隠しされて、口を大きく開けて、歯科医の顔は見えないけど、声は近くで聞こえるし、口の中で色々な音を出されるし、、、、。

 

ピアノという楽器は中毒性があるのか、気がつくとピアノを弾いていて、なかなかやめられない(少しは領収証の整理もしたけど、、、、ほぼ音楽)。幸い、音楽家なので、これが仕事でよかった(でも、領収証の整理もしなければ、、、)。鍵盤ハーモニカも吹き始めると楽しいし、こんなに長年仕事にしているのに飽きないで夢中になれているので、一生こうして音楽をしていくのだろう(そうした音楽の合間に、相撲の稽古したり、数学したりして息抜きをしている)。

 

演奏することを心底楽しんでいる人といえば、新倉壮朗さん。彼についてのドキュメンタリー映画の第1弾が出てから10年以上の月日が流れた。

 

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第2弾の映画の編集が終わり、完成の映像を見せていただく。大友良英巻上公一、會田瑞樹、山下洋輔片岡祐介梅津和時など、色々なアーティストとセッションしている映画で、これはタケオくんのドキュメンタリーであると同時に、21世紀前半の東京の音楽シーンのドキュメントにもなっているなぁ、と思う。完成と公開が楽しみ。

 

オハイエ音楽隊との2回目のワークショップに向けて、先月のワークショップの動画を見たりして、メンバー一人ひとりの音楽性や性格や特徴をつかんでいくことが必要。あと、オハイエ音楽隊は、知的障害のある人たちだけが30人ほどいるが、音楽指導者の人が10人ほどいるので、この音楽指導者の方々一人ひとりの個性や能力を発揮できるように、色々企てていきたい、と思った。

 

Vanessa Tomlinson/ライオンの大ぞん/世界のしょうない

インターネットの海を泳いでいるとVanessa Tomlinsonという作曲家のウェブサイトに漂着した。興味の方向は近い気がするので、いつかお友達になれるといいな、と思った。

https://www.vanessatomlinson.com/

 

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高松市美術館牧野裕二さんがfacebookで紹介していたので、こちらで村山籌子の『ライオンの大ぞん』の朗読を聞く。こちらは、合唱曲として作曲したので、歌詞は全部暗誦してしまったので気づくのだが、こちらの朗読、微妙にテキストが違う。ぼくは、JULA出版局で出ている『村山籌子作品集』のテキストを参照しているが、他にも違うバージョンがあるのかもしれない。来週の中学生の合唱部の練習を組み立てる上でも、とても参考になった。

 

ライオンの大損 | 青空朗読

 

『世界のしょうない音楽祭』と『世界のしょうない音楽ワークショップ』は10年続いてきたが、予算規模に対して、多くの音楽家がボランティアベースで関わってくださり実現している。本当に、今の形で続けていくことが良いのだろうか?もっと良い形があるのではないか?と考える。関わる方も多いので、それぞれの立場での考え方やご意見もあり、それを現実にどう落とし込んでいくかには、様々な調整が必要になる。今日は、まず、大阪音大の井口先生とお話し、今までの経緯などをヒアリングさせていただき、どこに課題があるのかを洗い出す。それを踏まえて、豊中市魅力文化創造課の小林さんとお話し、行政としての視点などをヒアリングさせていただく。こうして、お話を伺うと、センチュリー響、大阪音大豊中市の3者にとって良い形になるように、次年度の事業を組み立てる方向性がイメージできる気がする。

 

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拡張することと肯定すること

街に出て髪を切り、すっきりする。バレンタインデーで、里村さんとスイーツを食べながら、カフェで話し込む。

 

ぼくは、自分が思っている「音楽」や「作曲」という概念の拡張を行なってきたと思うし、これからも、それをやっていくと思う。この「拡張」というのは、今まで「音楽」と思われていなかったものが「音楽」だったことに気づくとか、今まで「作曲」だと思っていなかったことが「作曲」だと気づくとかである。それは別に、従来あった「音楽」や「作曲」を否定したり破壊して、別の「音楽」や「作曲」に塗り替えることではない。

 

かつては、既に価値づけされている古典や王道(クラシック音楽ショパン、ジャズ)は、絶対にやらない気持ちだった。でも、自分がそういう王道に対して抱いて反発してアウトサイダーであることに安住すること自体が、ダメだと思った。日本センチュリー交響楽団と仕事を始めた時に、オーケストラは変わるべきだとは思ったが、オーケストラの仕事を全部肯定するところから始めた。だから、五線譜を書く機会が増え、響き合うようなハーモニーを多用し、ピアノを弾いて指揮をするなど、以前の野村を知る人には保守化したように見えただろう。でも、そうした活動の先に、オーケストラ団員が解体工事現場でヘルメットを被り即興演奏をするという出来事が起こっているので、保守化ではないんだけど。

 

熊本に引っ越して、もうすぐ3年。3年と言っても、最初の2年はコロナ禍だったので、熊本の人々と対面で交流する機会は少なかった。コロナ明けの1年は、遠征が多すぎて熊本にほとんどいられなかった。だから、熊本で人とつながっていくのは、これからだ。熊本で魅力的なアートや音楽に、出会えた感触は未だない。ここで熊本のアートシーンを否定してしまうのでなく、今あることを全肯定しつつ、どうやって熊本のシーンが活性化していくことにつながるのだろう?そんなことを言うと、熊本の方々からは余計なお世話と思われるかもしれない。でも、せっかく住んでいるのだから、ここで交わって面白い場やつながりを作っていきたいな、と思った。

 

 

 

 

クエン酸水は楽しい/ライオンの大ぞん/ストレッチ

本日は、里村さんがオフだったので、自宅の掃除やDIYなどをして過ごす。重曹クエン酸を駆使しながら、掃除すると化学の実験のようで楽しい。綺麗になると気持ちいい。

 

3月3日に高松市美術館世界初演する合唱曲《ライオンの大ぞん》の楽譜を吟味しながら、来週、中学生との練習に備えている。童話を原作にしているので、合唱も工夫するとお話の魅力が伝わりやすくなりそうだ。この話は最高に面白いのだけど、ぼくが作った合唱曲も楽しくなっているので、ワクワク。本番1回だけなんて、もったいないなぁ。

 

里村さんがコマ取りアニメを作っていて、音つけてと軽くリクエストされたので、軽くトイピアノを弾いてみた。こうやって遊ぶのも楽しい。

 

最近、毎日少しだけストレッチをやっていて、なかなか気持ちいい。体が柔らかくなったら、もう少し発想も柔軟になれるかなぁ。もっと頭を柔らかくして、自分の想像力の外側に行けるよう、もっともっと柔軟に音楽創造していきたい。というか既存の音楽の概念なんて飛び越えて、ひっくり返したい。柔軟だけじゃなくて、逆立ちもするか。