野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

9月の予定

本当は、今日は人間ドックを予約していたのだが、震災でバタバタすぎて先が見通せないので、10月に延期にしてもらった。というのも、9月は、インドネシアと東京でイベントが色々あるので、健康診断の時間がないので、10月上旬に設定。健康で乗り切ろう。ということで、9月の予定は、

 

9月12日が、インドネシアのフェスティバルでの本番。SIPA Festival 2026のウェブサイトが、まだcoming soonだったのもインドネシアらしい。

sipafestival.com

 

9月20日に、東京藝術大学千住キャンパスにて、インドネシアツアーに参加するアーティストが勢揃いして、

aaa-senju.com

 

9月23日に、渋谷公演通りギャラリーで、パフォーマンスする。

inclusion-art.jp

 

9月23日に、JACSHA作曲《すまひたいこせちゑ》が中村仁美さん(篳篥)と神田佳子さん(相撲太鼓)が世界初演。

sumooto.yoshiko-kanda.com

 

で、インドネシアツアーのために、譜面を書こうと思っていた。今日から取りかかろうと思っていたのだが、現地でマリンバがレンタルできるかどうかが未だ不明で、今日は、マリンバorシロフォンの手配ができるのか、それとも無理だったら、インドネシアの伝統楽器の木琴(ガンバン、クリンタンなど)を使うのか、どちらかになるかで編成が全然変わるから、まだ譜面書けないな。

 

 

 

 

手伝ったり手伝われたり

熊本の震災から2週間が経過。今日は、里村さんと自宅の片づけに行くが、オレクシーさんも手伝いに来てくれる。普段は熊本ナンバーの車がほとんどの宇城市近郊で、新潟、横浜、別府など、色々な出身地の車が走っている。各地から助けに来てくれているのだなぁ。

 

災害ボランティアに来ると、かえって足手まといになって迷惑なんじゃないか、と遠慮する人もいるけど、足手まといになってもいいから、今の現状を体験しに来ることは決して悪くない。報道が伝える状況、SNSが伝える状況と、実際の空気は違う。来てみたいと分からないことがある。そして、少しでも被災地の空気感を知っていることは、次に自分達が被災した時に、絶対活かされる。熊本市内在住のオレクシーさんが、片づけを手伝いたいと申し出てくれることは、やはり嬉しいこと。

 

震災後、「何か力になれることないですか?」、「何か必要なものあったら送ります?」など有難いお言葉をいただいた。しかし、こちらも被災者初体験で、何を手伝ってもらえばいいのか、何が必要なのかが、すぐに判断ができない。手伝いたいという人一人ひとりの特性に応じて、必要な役割や仕事を割りふれれば、相当いい感じにできそうだなぁ。

 

我が家に着いたら、真っ先にオレクシーさんがピアノを弾き出した。ぼくも後でピアノをいっぱい弾いた。片づけも必要だけど、楽器も弾いてあげないとねー。

 

震災ゴミを近所の公園で毎日受け付けることになっている。自宅の水道は全開ではないが、どうやら復旧した模様で、蛇口を捻ると水が出る。自宅の片づけを少し進めた後、近所の美術館の片づけを手伝いに行く。自宅もあらゆる物が散在したけど、美術館のバックヤードも当然散在し、足の踏み場もなくなり、通り道もなくなるくらいの状況にはなる。ヘルメットと軍手をお借りして、お手伝い。いっぱい力仕事した。力仕事のお礼にと、スタッフの方のお家で収穫したスイカをご馳走になった。働いた後にかぶりつくスイカは格別だ。

 

オレクシーさんと片づけをしていると、被災地の片づけしているのに、ロシアの襲撃を受けたウクライナで片づけている錯覚に陥る。ハルキウでは毎日襲撃があり、毎日片づけがあるとのこと。

 

断層から少し西に離れると被害が少なく、同じ宇城市でも水道の復旧も西の方が早いと聞いていたので、松合の方に行ってみた。白壁の景観が有名な地域だ。水道の被害は少なかったのかもしれないが、歴史的な古い建築が崩れていて悲しい。

 

夜は、オレクシーさん、ダーリアさん、里村さんと4人でディナーした。いっぱい体を動かした自分へのご褒美として。

 

災害という無茶ぶり/Thinking in Jazz

今日で震災から2週間。ぼくは最初の4日はいなかったので10日間。とりあえず、ここまでは、緊迫感と勢いで走ってきたけど、息切れしないように、次のフェーズにうまくスライドしたい。

 

これまでアーティスト・イン・レジデンスなどで、色々な土地で宿泊先の状況に応じて自炊しながら生活することには慣れているので、熊本市内で武田力さんのお宅での滞在生活に、比較的スムーズに移行できていると思う。短期滞在の時に、必要最小限の調味料を買うとか、使い切れる量で食材を買うとか、レジデンスの経験は避難生活に活かせるんだなぁ、と思う。逆に言うと、レジデンスや居候などの経験を少しはしている方が、予期せぬ避難生活に慣れるのが楽だと思う。

 

あと、即興性や柔軟性など、予定通りに事が運ばないことに慣れていると、災害やハプニングの際に、ストレスが少ないと思う。そういう意味でも、常日頃から無茶ぶりに馴染んでおくと、いざという時に楽かもしれない。災害って最大級の「無茶ぶり」だもんなぁ。

 

熊本県が行う『ホテル等避難』に里村さんが登録してくれていて、コールセンターから電話がきた。里村さんの職場に近いことを考慮した上で、条件に合うホテルが2週間後くらいから避難先として利用可能とのことで、有り難くお願いする。被災者にとって避難先が得られると同時に、震災の影響で収入が減っているであろうホテルに県からお金が回るということなのだろう。

www.pref.kumamoto.jp

 

今日は肥後琵琶のお稽古の予定をキャンセルさせていただき、ゆっくり休み、生活のための必要な買い物などをし、震災関係の様々な情報などをネットなどで調べて整理する時間をとれた。

 

7月の旅の途中で読んだ本、Paul F Berliner著『Thinking in Jazz』。うっかり注文して、分厚すぎて、こんな本を読めるんだろうか、と思ったけど、根気よく読んだら面白かった。民族音楽学者がジャズミュージシャンたちに行った膨大なインタビューを見事に編み込んで、ジャズとは何か、ジャズの演奏家たちは、何をどう感じて演奏しているのかを炙り出す。最初から最後まで全部読んだけど、どこかのページを開いてランダムに読んでも、きっと面白い。音楽家たちの感覚的な言葉の引用の数々から言語化していく力作。譜例が巻末にまとまっているので、読みながら参照するのは面倒だけど、譜例のページだけを見るのも面白い。

press.uchicago.edu

ドコサ?の原稿/寅雄さん来る/マリア・クリコフスカ/1ヶ月後はインドネシア

昨夜書こうと思っていた熊本の情報誌『ドコサ?』の連載コラムの原稿を書き始める。震災のことを書こうと思って、31年前の神戸の震災とイギリスのヨークでやった神戸のためのコンサートのことを書き始めるが、しっくりこない。

 

午後には、大澤寅雄さんが熊本市現代美術館を訪ねて来てくれたので、美術館に行き、寅雄さん、里村さんと話す。寅雄さんは午前中に宇土市民会館にも行って来られたそうだ。1週間だけ行われる映像上映の企画を見ていく。現在展示中のソー・ソウエンさんの映像作品や、ウクライナのマリア・クリコフスカの制作風景など貴重なドキュメント映像も見られる。

www.camk.jp

 

夜は、来月のインドネシアツアーのメンバーとのオンライン会議。インドネシアツアーのことと、帰国後に東京で予定している二つの本番のことなど。1ヶ月後、3ヶ月後のことを想像するのは楽しい。

 

再び、原稿執筆に戻り、イギリスの話はやめて、震災のことと相撲節会のことと最新作のことを交えて書いた。

 

 

FACT『アートの現場を耕す!』

FACT(福岡県障がい者文化芸術活動支援センター)主催のワークショップ『アートの現場を耕す!ココロとカラダをほぐす音楽ワークショップ』@北九州芸術劇場小劇場の講師を務めた。震災があったので延期しても良いと言われていたが、せっかくの機会なので熊本から小倉まで出かけた。

fact.or.jp

 

1週間前には使えなかった熊本駅のエスカレーターは復旧していた。

 

FACTの樋口さんと古賀さんと打ち合わせ、技術スタッフとの音響とプロジェクターの確認の後、樋口さん、古賀さんとランチ。樋口さんとお仕事するのは、26年前に福岡でのエイブルアートフォーラムでご一緒して以来かな。話は弾む。

 

ワークショップは3時間半。参加者の方々一人一人の思いを聞き、参加されていた親子が練習していた8ビートのドラムのリズムをみんなでやってみたり、8ビートのリズムが入っている手遊び『いわしのひらき』をやってみたり。そんな導入から、宇城市不知火美術館・図書館でやった『とびだすプロジェクト〜表現は日常にこだまする』の記録映像を見て、鍵盤ハーモニカ・イントロダクションで自己紹介して、その流れで、みんなで手拍子になって、それに合わせてピアノも演奏した。せっかく楽器を持ってきてもらっているので、自由に楽器を鳴らして遊んだりした。「せーの」、「1234」、「123」、「1234の発展バージョン」などをやって、楽器で遊ぶ。ピアノの周りに集まって、ピアノに叫んで弦が共鳴する音を楽しんだり、こんなピアノの弾き方もあるよ、と色々な奏法を紹介したり。いつから作曲しているのかとの質問もあり、小学生時代のピアノ曲《たぬきときつね》を演奏したりもした。香港のi-dArtでの滞在の話などして、動画も少し見てもらう。日本舞踊をする参加者から舞踊を教わる。楽器を演奏しながら、踊ったり歩いたりをみんなでやってみたりする。参加者一人ひとりの感想などを聞いて、色々話して、ワークショップが終わる。終わり間際に、樋口さんが、26年前のフォーラムで野村が紹介した特別養護老人ホーム至誠ホームの春子さんが木琴の隙間を演奏したことを語ってくださった。あの時の春子さんの「隙間演奏」は26年経っても樋口さんの心に残っていたことが感無量で、26年経っても賞味期限が切れてない音楽を、今後もやっていきたいと思った。

 

篳篥と相撲太鼓の新曲

丸一日、缶詰になることにして、篳篥と相撲太鼓のための新曲の譜面を書く。《すまひたいこせちゑ》の2曲目《相撲》という3分半くらいの曲。

 

今日は余震も少なく、一瞬食材を買いにスーパーまで20分ほど出かけた以外は、完全に引き篭もりで、15時間ほど譜面を書いていた。

 

相撲(すまひ)という曲で、発音としては、「すまい」。「すまい」という曲を作るはずが、自分の「すまい」が被災して、仮の「すまい」で「すまい」を作曲することになるなんて、タイトルを決めた時は思いもしなかった。

 

篳篥と相撲太鼓でリズムユニゾンになるところを書いて、それは指揮者とか合図とかなしでやるのは困難な譜面で、視覚的な合図なしに合わせようとした結果ずれたりすることを想定している。ちょっと相撲の立ち合いみたい。もちろん、ずれなくても良い。

 

先月の大相撲名古屋場所の星取り表をもとに、相撲太鼓のリズムを作って、それに篳篥がどう加わるか、みたいなことを考えているうちに、篳篥という楽器の印象が自分の中でどんどん変化していった。

 

深夜には書き終えて、普通だったら、もう1日寝かせて、推敲してから送るけど、推敲しているうちに大震災が起きて、送信できなくなったら困るなぁ、と思い、まずは送ってしまえと思い、送信。

 

 

新たな滞在先

震災後、初めて自宅で目覚める。里村さんの出勤と合わせて、熊本市内に移動。『境界をうらがえす』プロジェクトでご一緒しているアーティストの武田力さんのご実家に滞在させていただけることになり、鍵を受け取り、部屋に入ることができる。自宅の水道が再開するまで、ここを拠点にさせていただけることに、大感謝。落ち着いて作曲できる場所ができて、篳篥と相撲太鼓の新作の譜面を書き始める。

 

音まち事務局メンバーとのオンライン会議。大巻伸嗣さんのメモリアル・リバースについて。足立区内で色々な場所で実施してきているが、今年度、また初めての地域で実施する構想らしい。

 

www.youtube.com

 

震災後、初めて料理した。半月ほど外食が続いていたので、自炊できるのは嬉しい。8月6日なのに、広島のことを忘れているうちに、今日が終わっていった。