野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ディディエ・ガラス『戦争』

広島の山小屋シアターで、ディディエ・ガラスの一人芝居『戦争 SENSO -The Game of War』があるので、日帰りで広島に行く。原爆が投下された地でもある広島という町で、戦争というタイトルの演劇を見るとは、どういう体験なのだろう?

www.engeki-hiroshima.com

 

ディディエは、非常に身体性の高い演劇を発表しつつ、しばしば哲学を題材にしている。2年前に音楽でがっつり関わらせてもらった『アフメドは語る 音にのせて』も、哲学者アラン・バディウが原作で、移民排斥、排外主義などを扱った演劇だった。

note.com

 

今回は、500年前の小説フランソワ・ラブレーの『ガルガンチュア』を原作としている。彼の身体の中で熟成された表現の背後には、パントマイム、能や狂言、コメディア・デラルテ、ラップなど様々な様式が見え隠れする。彼の様々な表現に惹きつけられ、開演前には泣いていた子どもも集中し、会場は笑いに溢れる。でも、戦争。笑いとユーモアで、戦争の滑稽さを炙り出す。ディディエは彼の持てるエネルギーを全部注ぎ込むような熱演で、戦争をなくすために必死に戦っていた。

 

ディディエと久しぶりの再会。劇研プロデューサーの杉山準さん、岩﨑きえさんをはじめとする無色透明の皆さんとも再会でき、打ち上げにも少し参加させていただき、楽しく交流。ディディエの芝居を観客として鑑賞したことが、今後ディディエとコラボレーションする時の参考になり、色々気づきも多く、来てよかった。あと、同世代のディディエが俳優として、あれだけ熱演しているのを見ると、こちらも大変刺激を受け、自分の方法で戦争をなくす戦いを続けていきたいと改めて思う。

 

帰宅後、里村さんと『境界をうらがえす』プロジェクトのポッドキャストの音源確認作業など、など。

お祈りのための/花壇のための/たった一つの実在を求めて

今日は強めの余震が何度もあった。まだまだ油断は禁物だなぁ。

 

八代で技能実習生をしているヘンドリは、インドネシアでは簡単に手に入るサジャダ(イスラムのお祈り用マット)とサルン(お祈り用腰布)が日本でも簡単に入手できると思っていたが手に入らず困っていた。そこで、ぼくがインドネシアで買って来た。今日は、それを受け取りに我が家まで来てくれた。震災でヘンドリの家の中も大変だったようだが、無事で暮らしているようで、元気そうな顔を見れて安心した。

 

里村さんが『境界をうらがえす』プロジェクトと現代美術館の花壇の活用を結びつけるべくBeyond the Border Garden Projectとして、熊本で暮らす色々な国の人から庭や植物に関するエピソードを集めている。ヘンドリにもシートに記入してもらい、色々お話を聞かせてもらった。

 

まだ見に行っていないが、熊本市現代美術館で展覧会『プラカードのために』が始まっている。

www.camk.jp

 

この展覧会をキュレーションした正路佐知子さんは、以前福岡市美術館の学芸員で、その時に作曲したピアノ曲集《福岡市美術館》の第2集の中に今回の出展作品である田部光子《たった一つの実在を求めて》に基づく同名の曲がある。久しぶりに弾いてみようと思って弾いてみるが、なかなか初見では弾けないので練習してみた。しっかり練習してから展示見に行こう。

makotonomura.hatenablog.com

自宅にて

久しぶりの自宅。長期遠征の洗濯物を全部洗濯するので、洗濯機を3回も回した。買い物も行って、久しぶりの自炊。土鍋で発芽玄米炊いたよ。大相撲中継も久しぶりに見た。

 

買い物に行く途中で墓地の横を通る。地震で倒れまくっていた墓石だが、今日見た感じだと、前よりも若干立っている墓が増えたような印象。お彼岸だったから、墓参りに来てなんとか力仕事した人がいたのだろうか?そもそも墓石って、どれくらい重いのだろう?多分、一人や二人で簡単に持ち上がる重さじゃないはずだ。墓地の復興ってどうやるのだろう?

 

11月22日に行われる足立区花畑でのメモリバのオンライン打ち合わせ。インドネシアに一緒に行った菊地奏絵さん(フルート)、北澤華蓮さん(ヴァイオリン)、桒原幹治さん(ドラム)、野木青依さん(マリンバ)、水野翔子さん(コントラバス)とご一緒できるのは、とっても嬉しい。

aaasenju3.wixsite.com

 

中秋の名月は、曇天の熊本では雲の合間から顔を出していた。

 

 

熊本に戻る

《六段→交段→空段→穴段の調》は、アコーディオン、箏、ピアノに書いた曲だが、竹澤悦子さんから、アコーディオンパートをソプラノサックスにしたバージョンへの編曲を頼まれ、今週、能登で初演される。能登の震災復興のコンサートのために、被災地熊本から編曲譜面をお届けできて嬉しい。本日の練習前に前回の練習の録音を聞かせていただく。

 

インドネシアと東京の遠征を終えて、熊本に戻る。相変わらずJRは最寄駅まで来ていないので、代替バスに乗る。3週間近く離れていたけど、家の周囲はどうなっているかな、と思いながら歩く。駅前のスーパーは、全く営業再開の雰囲気すらなく、立ち入り禁止で真っ暗のまま。あちらこちらにあった倒れ掛けのブロック塀は、だいたい撤去されていて、ちょっと歩くのが怖くなくなった。

 

東の空に満月に近い月がのぼっている。そう言えば、インドネシアでSIPA Festivalに参加した頃、新月だったなぁ。スーツケースの中の洗濯物や土産などを整理しながら、旅を振り返る。アーカイブ動画でKITA! 1010 Septetの演奏を懐かしく味わう。

 

2:57:14〜 野村誠作曲《千住宿1625 Senju Memorial Pun-filled Rebirth Sextet》

3:06:00〜 Memet Chairul Slamet作曲《Senju 2025》

3:15:17〜 野村誠作曲《でしでしでし》

3:26:15〜 即興セッションwith Gondrong Gunarto

3:33:30〜 野村誠作曲《相撲聞序曲》

 

www.youtube.com

池上恵一+問題行動トリオ/神田佳子の世界

渋谷公演通りギャラリーで、パフォーマンス『こい/する/こり コリはからだの問題行動か?』を上演。出演:池上恵一、佐久間新、砂連尾理、野村誠。鍵盤ハーモニカはいっぱい演奏したけど、池上さんがぼくの身体を揉んで描いた紙、(誰かの背中、背骨を再現している)金属の彫刻なども演奏した。地震の体験談も少しした。地球のコリ、大地のコリの話。パフォーマンスは山城大督さんが映像記録してくれているので、後に公開になる予定。終演後は、久しぶりの人など色々な方とお話した。企画の門さん、亀井さん、スタッフ関係者の皆さん、おつかれさま。

inclusion-art.jp

 

すみだパークシアター倉へ移動。神田佳子さんのデビュー30周年記念のコンサートに行く。現代音楽の打楽器奏者として知られる神田さんで数多くの新作初演をしてきた人だが、実は作曲家でもあり、打楽器アンサンブルのみならず、多くの作品を作っている。今日のコンサートもJACSHA(樅山智子、野村誠、鶴見幸代)による篳篥と相撲太鼓の新作初演があった以外は、神田さん作曲の音楽で、思う存分神田佳子の世界を出し切っていた。神田さんブラヴィッシマ!演奏、作曲、企画、主催、全部やり切って大変だったと思うけど、素晴らしかったよ。

 

今日の二つの公演は、ジャンルも内容も全然違ったけど、どちらも自分と同世代の面々がいっぱい出演していて、30年前に出会った仲間たちが力強く表現していることが嬉しかった。30年前、高橋悠治さんに若手演奏家、若手作曲家として声をかけてもらって出会えたぼくたちは、気がついたら当時の悠治さんの年齢になっている。インドネシアツアーで若い世代の才能たちと触れ合い続けた今、30年前の我々若い世代と交流してくれた悠治さんのことを思う。もっともっと若い世代の方々と交流していきたい。その方々が30年後に今日のように集っている時にも顔を出せるよう健康で長生きしようと思った。

 

すまひたいこせちゑ/池上恵一+問題行動トリオ

神田佳子さんのデビュー30周年記念リサイタルのリハーサルに行く。会場に凄い数の打楽器が設置されていて、ワクワクする空間。JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)で作曲した《すまひたいこせちゑ》の2曲目の《相撲》の作曲を担当したが、これまでリハーサルはオンラインでしか聴いていなかったので、初めて中村仁美さんの篳篥と神田さんの相撲太鼓でのデュオの演奏を生で聴き、素直に感激。昨日もリハーサルに立ち合った樅山智子さんによると、野村の曲の演奏、昨日に比べて断然良くなったそうで、作曲家が来ると全然違う、とのこと。そう言われるとリハーサルに来た甲斐がある。

 

東京芸術劇場の山下直弥プロデューサーとJACSHAの樅山、鶴見、野村で打ち合わせ。次年度に向けての企み会議。

 

渋谷公園通りギャラリーに移動。池上恵一さんのコリに関するワークショップの成果作品などで空間が作られていて、こちらも相当にワクワクする空間。明日、ここでパフォーマンスするのか、と思うと、ワクワク。映像撮影の山城大督さんとも久しぶりに再会。砂連尾理さん、佐久間新さんも登場し、企画の門あすかさん、アトリエみつしまの亀井友美さん、皆さん勢揃いされて、インストーラーの方や音響担当の方々もいらして、明日の本番と記録動画撮影に向けて、会場の設営とパフォーマンスの準備(リハーサル)を行う。かなり面白くなりそうだ。

 

 

 

 

台風が来た

台風が来たのだが、千住のホテルをチェックアウトしなければいけない。天気予報を見て一番降雨量の少ない時間を見計らって、次の永田町のホテルに移動。

 

本当は、明後日の神田佳子さんのリサイタルに向けてリハーサルに立ち会う予定だったが、自分自身も明後日に本番を控えているので、台風で濡れて体調を崩すことを恐れて、オンラインでリハを見学し、野村の新曲について神田さんからの質問にお答えしたりする。

 

もう一件、オンライン会議。めとてラボ、音まち事務局、東京芸術大学長津研究室、アーツカウンシル東京の4団体から複数人参加する大勢の方々との会議。本当は昨日『音楽の大実験室vol.2』が開催されて、2月に開催する予定の『音楽の大実験室vol.3』の打ち合わせをする、という流れだった(vol.2が台風で流れてしまった)。いろんな人の意見やアイディアが飛び交い楽しい時間。こうやってアイディアを投げ合っている時間は楽しいし、アイディアを色々実験している時間も楽しい。そういう時間を開いていく活動ができることが幸せ。

 

台風が通り過ぎるまでホテルに籠城。疲労を落とすべく休む。