野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作曲ははかどらず/安田宏さん/琵琶法師

《春日の50の物語》の50曲の中からトーンチャイムの合奏に編曲しようと、どの曲がいいかなと考えて、《紅葉ヶ丘》で考え始め、《春日北小学校のお話し会》にしようと考えて結構スケッチをした後、やっぱり《ドリームクローバー》にしようと気が変わり、どれも決定打に欠くので、違うのかも、と思っていて、今日はそういう日かもと、明日考えようと思う。

 

だじゃ研メンバーの安田宏さんと1時間ほど話す。気候変動に昆布アーティストとして対峙する彼の態度は非常にユニークで、絶望とか諦めではなく、次世代に向けて今できることを精一杯やりたいという希望に溢れていて、勇気づけられる。こうした芽を摘まずに育んでいくこと、つないでいくこと。そのために、何ができるのか?

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兵藤裕己著『琵琶法師 〈異界〉を語る人々』(岩波新書)読了。

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昨秋の肥後琵琶350周年記念イベントに立ち合い、今、ようやくこの本を読む。古い文献を数多く参照し、そこから昔の琵琶を推察する。現在、4柱や5柱である琵琶は、かつて6柱のものがあったそうで、1982年に佐賀で6柱の琵琶を演奏する盲僧(藤瀬良伝、光岡正順)と出会っていて、かつては九州全域で6柱の琵琶があったのでは、と推察している。6柱の琵琶って!

 

『新猿楽記』の中で「琵琶法師の物語」と出てくる、とのこと。確かに、

 

呪師、侏儒舞、田楽、傀儡子、唐術、品玉、輪鼓、八玉、独相撲、独双六、無骨有骨延動、‥‥、琵琶法師之物語、千秋万歳之酒禱、‥‥

 

猿楽のモノマネ芸の中に、相撲も琵琶も万歳も入っている!どんな風にモノマネしたのだろう?

 

渡世民である琵琶弾きたちは、相撲人と同様、時の権力者との関係の中で継承されてきた。室町幕府徳川幕府により当道座が権威化されていき、それと同時に抑圧された盲僧琵琶もあった。

 

この本の中で肥後琵琶の占める割合は非常に少ない。歴史的にも近世であり、地理的にも九州の肥後であるから当然そうだ。と同時に、1980年代に肥後琵琶弾きの山鹿良之に著者が出会い、そこに多大なインパクトを受けたことが本全体の通奏低音のように流れている。受け取り手によって千変万化する山鹿良之像を一つずつ味わっていきたい。

 

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