野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

戯曲の依頼

青森、宮城を経て、東京に戻って来ました。帰りの新幹線の車内では、えずこホールの2月の公演のことを考えていました。

これは、もともと、演出家の生田萬さん、振付家矢内原美邦さん、音楽家野村誠の3人のディレクターのもとで、住民参加型総合音楽劇を作るというプロジェクトでした。ところが、いろいろやっているうちに、野村が総合ディレクターで、矢内原さんは振付、現在は演出家のスタッフもいない状況になりました。

ということで、かなり、色々な方針変更があって、ぼくが総合ディレクターとして、方向性を出す必要があるわけです。これは、横浜トリエンナーレの総合ディレクターの磯崎新さんの降板があって、急遽川俣正さんが総合ディレクターになった時のような状況です。川俣さんは、前任者の方向性とは全く違う川俣さんらしいアプローチで、半年程度の非常に短い準備期間で、川俣ワールドの展覧会を行いました。この例は、非常に参考になります。

ということで、えずこホールの音楽劇も、野村がディレクターになったということで、半年ちょっとの準備期間ですが、今からでも野村色でドンドン進めるということにすべきです。

で、新幹線の中で考えているうちに、どんどんイメージが沸いてきました。舞台美術はどうしようかな、井上信太くんにはホエールトーンで最高の仕事をしてもらったし、また頼むわけにもいかないし・・・。

考えているうちに、藤浩志さんに連絡をしようと、思いつきました。藤さんは、そもそも、パフォーマンス集団ダムタイプの前身のカルマを立ち上げた人でもあるし、住民参加型の様々なアートプロジェクトをやっている人だし、藤さんだったら、住民を巻き込んで、舞台美術を作るとか、劇場空間自体を変貌させたり、ワークショップをやったり、何か音楽劇そのものにも踏み込んで提案してくれそうな気がする。そうやって、考えているうちに、移動式屋台で陶芸を焼いているアーティストきむらとしろうじんじんにも、参加要請してみようとか、現代詩人の吉増剛造さんに住民の方々の書いた詩を朗読してもらうようにお願いしてみるとか、イメージがワーっと膨らんでいった。「音楽劇」、「ホール」という言葉に囚われすぎていてはいけない、と思う。多分、えずこホールの10年間に一度も来たことのないようなアーティストに、10周年に関わってもらい、音楽劇とは縁がなさそうな美術家や詩人や小説家などが、こんな音楽劇だってできるよ、とドンドン踏み込んで来て、それが、単なる重ね合わせや実験に終わらず、成立するような舞台。そんなのが、できるでしょう。

と、頭の中では、どんどんイメージが展開していきました。問題は、アーティストのスケジュールが確保できるかです。これから、ドンドン交渉していきます。

で、さっそく小説家の飯田茂実くんに連絡をして、昨日のワークショップで作った15行の文章を戯曲化してもらうことをお願いしました。というのは、昨日、見せてもらった自主ワークショップで作った音楽劇は、戯曲の断片を題材にしていたからです。だったら、自分たちの作ったストーリーを、小説家に戯曲にしてもらって、それを試しにワークショップの題材にしてみよう、というアイディアです。7月11日にえずこホールでのワークショップでやる予定で、そこには、俳優の倉品淳子さんも来てくれそうです。