野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

到着後すぐに本番@Wonderfruit2023

色々考えて、荷物は機内持ち込みだけの最小限で朝6時半に家を出発し、8時半に福岡空港に着き、10時のフライトで予定通り出発。機内で、宮脇昭『木を植えよ!』(新潮選書)読了。その土地の固有の木を混植することで豊かな生態系が生まれること、庭など幅1メートルくらいの土地でも森は作れ、それは防災にもなるとのこと、など興味深く読む。今日、これから出演するWonderfruitで演奏するステージがある森は、宮脇さんの思想に基づいて植樹されたそうだ。

 

www.shinchosha.co.jp

 

バンコクに予定より10分ほど早く13:35着陸。気温は35℃。空港を駆け抜けて、入国手続きを一番に済ませて、13:50ごろに国際線到着ゲートに。ピックアップ担当のBomも見つけ、トイレで冬服から夏服に着替えて、送迎に車に乗せられたのが14:15ごろ。Bomも一緒に行くのかと思ったら、彼は空港でアーティストを次々にピックアップするのが仕事らしい。よって、運転手のおじさんと二人だけの2時間半のドライブが始まる。

 

サウンドチェックが17時半、本番は19時なので、渋滞さえなければ間に合うという計算だが、ドキドキ。そもそも飛行機が遅れなくてよかった。幸い、渋滞にも巻き込まれず、高速道路でバンコクを通り抜け、南下し続けて、いつまでも着かない。本当に正しいところに連れて行ってくれるのだろうか?このおじさんを信じるしかない。

 

17時ごろに高速を離れて、田舎道に入って行ったので、会場に着くかと思いきや、スタッフのホテルで降ろされる。ここで、Tumという人物に引き渡されると、Tumが車を呼んでくれて、ここでPaulという人物に連れられて、車をフェス会場のアーティスト・チェックインで降ろされる。そこで、名前を言うと、リストバンドを付けられて、舗装されていない狭い道を走るオモチャの車みたいなのに乗せられて、森の中に連れて行かれると、そこにステージがあって、ニックとジェームスがいた。17時半、到着と同時にサウンドチェックが始まる。

 

ニックはラップトップから環境音などのフィールドレコーディング音源。ジェームスは、ラップトップから電子音など。ぼくは、ケンハモに加えて、ジェームスが集めてくれていた丸太、竹、枝、石などを鳴らす。音響のスタッフは優秀で速やかに対応。サウンドチェックとともに、日没。大自然の中の美しい夕焼け。あっという間に、あたりは真っ暗になるが、各所で照明と爆音が鳴り響く。ああ、この感じ。タイだなぁ。

 

ヒュー・ナンキヴェルの息子のフランクが会いにくる。バンコクに住んで4年経つらしい。ぼくがイギリスに行く度にヒューの家に泊まっていたので、ぼくは彼からすると親戚のおじさんみたいなもの。バンコクテクノ系の音楽のレーベルやったり、コミュニティラジオをしたりもしているらしい。

 

開演前にかかっているBGMが素晴らしい。鍵盤ハーモニカの演奏が味わい深く、この音源ただものではない。ジェームスに聞くと、ジェームスの作品らしいが、ケンハモはTerry Rileyとのこと。テリー・ライリーは今回このフェスに参加する予定だったが、高齢で体調的に不安だったので、参加をキャンセルしたらしい。日本でいいから、テリー・ライリーとケンハモで即興してみたいと思った。

 

19時15分ごろ開演。ぼくは枝を演奏し、ニックは北海道やタイで録音した環境音を流し、野村のピアノの音(録音)も流れる中、ぼくはケンハモを演奏する。タイの森に挨拶するように。そして、そのまま野村のケンハモソロに。ソロの演奏は即興で、しかし、途中で観客がノリノリで手拍子してきて、こちらも触発されてどんどん演奏。ニックが丸太を引きずる音を流す。ぼくは丸太を叩いたり、枝を折ったり、木を金槌で叩く。そのまま2度目のケンハモソロに。遠方の別ステージから聴こえてくるテクノの低音があるので、それを逆用して、高音域で様々な不協和音でビートを刻みまくる。ニックが森の音を鳴らすと、ぼくは石を打ち鳴らし、北海道での手拍子のエコーの音源が流れると、ぼくは手拍子を生演奏し、最後は観客にも手拍子で参加を促す。20時終演。いい感じでライブができてよかった。鍵盤ハーモニカの可能性を色々示せてよかった。明後日に出演する西本毅さんも、鍵盤ハーモニカでシェーンベルクみたいな音が出ていて、驚いたなどと嬉しいコメントも。

 

www.takeshinishimoto.com

 

片付けて後、フランク、ニック、ジェームス、西本さんらとアーティストラウンジで夕食後、ヒューが近年聴いた最高のサックスと称した人のライブ(21時半〜)を見て、確かにユニークで、しかし眠いので、30分ほど聴いてホテルに戻る。ホテルまでも車で20分くらい。海辺のホテルの30階の部屋だった。

 

wonderfruit.co