野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

タリック・タンバンの追作曲/家の中に屋根をつくるKITA/第137回だじゃれ音楽研究会

ガムランの新曲《タリック・タンバン》の世界初演まで1週間を切った。ガムラングループ、マルガサリのメンバーはワークショップの経験も豊富で、即興やパフォーマンスが得意だ。だから、この新曲は、決まっているところと自由なところがある。でも、メンバーだけでは人数が足りないので、助っ人で入っているプレイヤーも出演する。そういう人は必ずしも即興というわけでもなく楽譜を読むのが得意だったりもする。そういうことを鑑みて、今朝は、この曲のScene12「のこった」のシーンに1パート新たに作曲して書き足し、楽譜を送る。今日のリハーサルで試すと返事が来る。いよいよ、マルガサリも大阪での最後の練習となり、24日から東京でのリハーサルが開始。

 

午後は、サントリーホールを訪れ、KITAの設営を見学。小ホール(ブルーローズホール)の中に、屋根を作っている。室内に屋根って、能舞台国技館みたいで、日本的な感じがするのに、ジャワ的な雰囲気の建物。たった3日間の公演のために建築を作っている。贅沢な企画だが、東京における西洋音楽の聖地のようなサントリーホールを、空間から別世界にして、そこで従来と全く違ったクリエーションが起こる場にしようという試み。8月25日、ここで、その時その場でしか生まれない音楽を創作する。そのためのヒントを探しに、設営中の会場をウロウロする。壁に色、天井、床、響き、借景、チケット購入後の動線などチェック。屋根ができると、徐々に縁側ができてくるのだろう。

 

夜は、第137回だじゃれ音楽研究会。音まち事務局のスタッフたちがサントリーホールの舞台のサイズになるように測って、会場を作ってくれている。ウイスキーボトルを並べてくれている。

 

前半は、明日の梅田クラブ5周年記念コンサートのリハーサル。昨日の今日で、どうしてこんなに練り上げられていくのか、と思うくらいに、短時間でどんどん良くなる。12年前、インドネシアで謎だと思っていたようなことが、いつの間にか「だじゃ研」で実現している。マニュアルじゃなくて、関係性でプレイし続ける経験が、即興力や柔軟性を養うのだ、ということを、心底思い知らされる。自分が関わっているグループだけど、正直、すごいと思う。

 

後半は、《タリック・タンバン》のリハーサル。今日は音楽というよりも、段取りや動きの確認が多かった。そういう中で動きを順番に確認していく作業をし、本番までの課題も一つずつクリアしていけた。綱をどのように扱うかは、頭を悩ます問題だったが、みんなで知恵を出し合って解決を見つけていった。

 

そんな中、タケオがみんなの輪から外れて、すごい勢いでボトルを鳴らしたり、ピアノを弾いたりした。段取りの確認でその瞬間の音を味わっていないと、タケオは揺さぶりをかけてくる。それは正しい。段取りも大切だが、その時その場を全力で生きることが大切だ。段取りを間違えずにつまらない演奏するよりも、段取りを外れても生きた音を出すことこそ大切だ。今日のリハーサルを踏まえて、さらに段取りをシンプルにしていきたい。