野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

りんごオーケストラの余韻

(いろいろ辛いこと多いと思います。いろいろ困ってると思います。ぼくもいろいろ困っていますが、困っている以外のことを中心に日記書いてます。)

 

昨日の「りんご」のオンラインでのコラボ体験が、まだ続いている感じ。色々な人から感想が送られてきたりする。昨日の日記に書いたように、画面上にいた様々な人々の多くは、ぼくにとって顔見知りの友人たちであった。だから、再会のような同窓会のような体験であって。しかし、参加した人々にとっては、知っている顔も数人いたりすることもあるが、多くの人にとっては、お互いに知らない人同士だったと思う。だから、あんなメンバーが、一度にワークショップルームに集められたら、お互いに視線をそらすかもしれないし、よそよそしい空気が流れるかもしれないし、知ったもの同士でかたまって話すかもしれない。でも、みんな平等に、パソコンの向こうにいて、みんな平等に自分の家にいて、それぞれが馴染みの場所にスタンバイしていたので、場の作られ方が、全然違った。

 

昨日に関して言えば、ぼくがホストであり、ファシリテーターだった。そして、りんごを食べる、という曲を作り、その共通のルールを提示した上で、各自が参加した。さて、この「Apples in the Dark or in Light」を、他の人がホストになって、友人たちと楽しんでみるとどうなるのだろう?作曲者の手を離れて、やってみたい人がいたら、試していただければ嬉しい。と同時に、では、次に、野村が、オンラインでどんな企画を考えられるだろう?同じことを二度しようとは思わないので、次に何がしたいか、何ができるか、また考えてみたい。

 

もう一つ、面白かったことが、それぞれの参加者が体験していたことが、違ったということだ。例えば、コタロー君がfacebookにあげていたレポートによれば、回線が遅かったために、音が途中途切れ途切れになったりもしていて、気がつくと彼が最後まで演奏し続けた奏者になった。こちらからは、コタローはマイペースに食べているなぁ、と見えていたのだが、もし、周囲の状況がもっと逐次把握できていたら、もっと急いで食べ終わったかもしれない。また、山城さんから送られてきた画面をとった動画を見ると、そこで見えていた画面も違う。50人参加していても、画面上には25名が同時に映るので、その時に選択して現れてくるようなのだが、人によって違う画面を見ていたようだ。カンさんがスマホで撮影した画面の様子の動画では、最初は誰かが大きな画面に現れていて、他の人が上に小さく表示されている。そして、それぞれの人のところで、聞こえている音の組み合わせやずれ具合も、やはり違っていて、みんなで共有している音楽体験でありながら、誰一人同じ体験をしていないのだ。

 

こうやって、昨日の感想などを、色々な人とやりとりして、余韻に浸れた良い一日だった。そして、今日も自宅で植物に水をやったり、料理をしたり、庭仕事をしたり、本を読んだり、パソコンのデータ整理をしたり、柔軟体操をしたりして、のんびりと過ごす。

 

1年前の今頃は香港にいたんだなぁ。あの国際会議、すごかったなぁ。2年前の4月から、香港の3ヶ月のレジデンス始まったなぁ。明日あたりから、少しずつ2年前の香港の報告をまとめようと思う。

 

1年前の春の国際会議はすごかった。

国際会議始まる - 野村誠の作曲日記

 

そして、2年前の4月12日、ぼくが香港に足を踏み下ろして、いろんなことが変わっていった。そのきっかけの春。

香港に到着 - 野村誠の作曲日記

 

昨日の「Apples in the Dark or in Light」をやって、今年の春も、あとで振り返って、大きな転換点と位置付けられる4月になりそうな予感。狂言師松本薫さんから、能の無観客公演のお知らせが届いた。いろんな実験があちこちで始まっている。ここを生き延びて、なんとか次の春に続けていきたい。