野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

コンサート

今日はコンサート本番。朝8時からリハーサル。ところが朝6時半に、ギギーから電話。「メメット先生が9時から試験監督しなければいけないと連絡が来たので、夕方5時に変更できないか」とのこと。朝7時に、メメットとギギーが我が家に来て、運ぶべき楽器を車に積み込み、相談。夕方5時から練習することに。それだったら、最初から5時にしておけばゆっくり寝られたのになー、と思うが、仕方がない。メメットさんは、よく予定を忘れるようだ。

夕方5時から全5曲を練習し、本番。50人ほどの観客だが、熱心なお客さん達。作曲家のアスモロさん、オットーさん、若手作曲家のコーシン君、アメリカ人のガムラン作曲家のヴィンセントさんをはじめとした面々。小学校で音楽を教えるンダルーさんや、中学校で音楽を教えるパルチアントさん。ひかりさん、のりこさん、たなかさん、いでさんなど、ジョグジャ在住の日本人の方々も来ていただきました。音が美しかった。西洋音楽学科の先生メメットさん、伝統音楽学科の先生スニョトさん、西洋音楽学科卒業の若い作曲家ギギー君、伝統音楽学科卒業の若い作曲家ウェリー君が、こうやって対等に共演している場が成立し、西洋音階とガムランのスレンドロ音階が、どちらにも比重がかかり過ぎずに共存する。これまで、様々なコラボレーションをジョグジャでしてきたけれども、伝統音楽の音楽家と、ここまで濃厚に関われたのは、初めてでした。これまで、ジャワ伝統音楽の音楽家達と関わる時、ガムランの文法に寄り添わないと関われなかったり、無理矢理入ってもらっているような違和感もあったりしました。しかし、今日のコンサートでは、伝統チーム(ニョト先生+ウェリー君)、西洋音楽チーム(メメット先生+ギギー君)、日本チーム(マコト+くみこ)などと3つのグループに分離することはなく、完全に6人が仲間として、同じ土俵でコラボレートできた。また、ジョグジャに新時代が来たなぁ、と思った。終演の直後に作曲家のスタントさんが到着し「君達、終わるの早いよ。せめて、9時半に始めてよ」と言う。そして、連れてきた音楽評論家の人に、「マコトの音楽は、武満とか日本の現代音楽と全然違って、喜びに溢れているんだよ」と紹介してくれた。コンサートを聴いてもらえなかったのは本当に残念だが、嬉しいコメントだった。

イスラム教徒の多いジャワでの打ち上げは、お酒はなしのお食事。ニョト先生とメメット先生が、お酒も飲んでいないのに、酔っぱらったかのようなハイテンションだった。メメット先生とギギー君が、作曲のプロセスについて、二人で語り合っている場面があった。メメット先生は、人前でジャワ・ガムランの楽器を演奏したこと自体が、どうやら初めてだったようだ。ぼくのような外国人のプロジェクトがあることで、こうした越境が成立したとするならば、外国人としての役割が果たせて嬉しい。インドネシアでの2ヶ月の大きな成果を実感し、興奮してなかなか寝つけなかった。