野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

冬の旅〜世界に認められる一音

 新大阪のスペースココで、「野村誠の旅する音楽 春夏秋冬」の最終回、冬。今日は、なんだかヒューとの1ヶ月について話したり、地名の話でブラックプールの話をしたりした。これまでは、話していて、どんどんテンションが上がってくるようなところもあったと思うけど、今日は、やっぱりヒューとの1ヶ月が終わって、クールダウンな気持ちも強いので、話のテンションが高揚することもなく、淡々と進んだような気がする。そういう意味でも、冬っぽい。


 1曲目は、ヒューとの1ヶ月を思いながら、ピアノを弾くようにと言われ、2曲目はブラックプールを思い描いてピアノを弾くように言われた。4回合わせて8曲の即興をしたわけだが、今度、この8曲を聞き返してみて、8つのピアノ曲として再構成したい、という気持ちも生まれてきた。

 
 ワークショップが面白かった。ヒューが相撲を見に行った話から、相撲をテーマに即興演奏。相撲というのは、勝負はたったの10秒程度で終わってしまうが、その10秒にかけるために、3分くらい塩をまいたりして、集中力を高めていって、最初の瞬間に全精力を傾けるところ。そこで、3分間音を出さずに集中して、最初の一音に向けて準備して、「はっけよいのこった」の合図とともに10秒だけ演奏してもらう、というのをやった。この3分間の長い沈黙の間、各自の頭の中では、最初の一音をイメージしていて、でも、たった10秒でそれを表現していく、これが面白かった。相撲というものの本質を、初めて体験したような気がした。 最後に、「キーボード・コレオグラフィー・コレクション」のApproaches17に取り組んだ。世界に認められる一音。