野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

小学校の先生向けのDVD

朝、ホテルでヒューと別れる。12月26日に長崎で会って、今日が1月25日。1ヶ月間、毎日彼と過ごしてきた。明日から彼のボケにつっこまなくていいか、と思うと寂しいが、5ヶ月後にはイギリスで再会するので、まぁ、しばしのお別れ。1ヶ月間、おつかれさまでした。


 昨年まで平盛小学校の先生で、今年から別の小学校に移った糸井登先生の監修する小学校の先生向けのDVDの撮影のために、京都橘大学に行く。
 小学校の先生が教室でできる音楽ゲームのようなものをまとめたDVDを作りたい、ということだったので、今日は一日、ミュージシャンとしての自分の能力は、基本的に封印して、やってみることに。楽器も極力使わずに、やってみた。


 午前中、約2時間。机を叩いたり、足をバタバタしたり、から始まって、本をパタンと閉じるBookologyもやった。このBookologyは、単に手拍子を回したりするより、相当音の変化が面白くて、耳に楽しい。これで、色んなリズムを演奏してみた。試しに何かの曲を演奏するつもりで演奏すると、本をパタンパタンとしているだけなのに、なんだか、そういうピッチに聞こえてくる。
 ということで、急に思いついて、曲名当てクイズをやった。「どんぐりころころ」とか簡単なメロディーでクイズをやるが、まぁ、リズム以外は表現できないので、まぁ、なかなか当たらない。ぼくが当てる番になった。最初「ロンドン橋」だと思った。6小節目までは、リズムからいって間違いないと思った。ところが、7小節目でリズムが違ったので、これは、どうも違う。とっさに「メリーさんの羊」と答えたら、正解。これ、DVDを見る人はやらせだと思うでしょうけど、、、。
 あらためて、この2曲を比べてみると、6小節目までリズムが同じなだけでなく、2つの曲を同時演奏すると、ハーモニーとしても、かなり良さそうで、突然2部合唱をした。で、曲の途中でも合図が出たら、二つの曲が交代するゲームをすることに。


 すると、「もしもし亀よ」と「浦島太郎」が同じリズムだ、という話もあった。この二つは全く同じリズムなのだが、歌詞もメロディーも違う。でも、リズムはユニゾン。そこで、替え歌をして、替えメロディーをすれば、オリジナル曲の作詞・作曲ができる、というのをやってみた。いい歌ができた。


 午後は、ヒューにちなんで「これじゃない」と「スイッチ」をやってみる。「スイッチ」は、声でしりとりしながら動きも混ぜながらやる高度なバージョンも試みた。
 それから、糸井さんの小学校に初めて来た時のことを思い出し、アフリカの人に教わった変拍子の手遊び、ヒューから教わったルイジアナの手遊び、そして、ガーナの人に教わったリズム遊びをしてみた。

 
 このまま、いつまでも楽器を使わずに最後まで行ってしまいそうだったので、14:30過ぎくらいになって、少し楽器も使いませんか、と糸井さん。では、と楽器を出す。まずは、赤羽台西小学校でやった「疲れたから、お休みなさい」をやってみるが、それに改良案がついて、「手拍子→楽器→休み→楽器→声→休み」という構成になった。2回目の楽器の時に、1回目とは違った楽器をする。


 それから、短い即興にタイトルをつけて、作曲する、というのもやってみた。さらに、楽器でやる「だるまさんが転んだ」をやったが、これは、ピアノ協奏曲「だるまさん作曲中」でやって以来、久しぶりにやった。昔、YCAMがまだできない頃、山口で子どもとやって以来かも。みんなが瞬時に音を止める能力に、感動。遊びだと思うと、こんなにきれいに、音ってミュートできるのか。


 ミュートにちなんで、いすとりゲームで負けた人が演奏する「いすとりゲーム」もやった。


 最後に、一人ずつが順番に一音ずつ鳴らしていって、席替えしながらシャッフルするのをやってみた。これはイギリスのベルリンギングの逆。音の順番は入れ替わらないけど、場所が入れ替わっていく。そしたら、参加している学生から、これをみんなで背を向け合って、耳だけを頼りにやってみよう、ということになった。このゲームは、ゲームとして楽しかったのだが、音として、とても良かったし、リズムのずっこけ具合も良かった。


 今回の撮影に関しては、録音のスタッフをきちんとして欲しい、というぼくの要望に応えてもらえたので、映像だけど、音の魅力を伝えられるものにはなったと思う。
  

 今日は撮影にあたって、「音楽ってどうやるの」に書いた内容は、一切やらないつもりでいた。だって、そっちは本が既に出ているし、、、。また、「あいのて」で紹介した内容も、基本的にはやらないつもりでいた。
 で、「ホエールトーン・オペラ」の楽譜集と「キーボード・コレオグラフィー・コレクション」を持っていっていた。ネタに困ったら見ようと思っていた。ネタが尽きないうちに、撮影の時間は終わってしまいました。
 野村誠じゃないとできないことを極力避けて、学校の先生がそのまま実践できることを選んでやってみたつもりで、そういう拘束の中で、一日過ごしたのは珍しい体験で、ある意味、休暇のような楽しい一日で、疲れがとれました。


 糸井先生、橘大の池田先生、学生さん、撮影スタッフの皆さん、おつかれさまでした。