野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

エイブルアート・オンステージ第4期募集中

エイブルアート・オンステージ活動支援プログラム第4期支援先を募集中です。
http://www.ableart.org/AAonstage/boshu4.html

ぼくは、2004年度の第1期より、このプログラムの実行委員をしていて、選考にもあたっています。明治安田生命
社会貢献プログラムとして行われていて、「障害のある人が参加する」という部分は、必須ですが、プロジェクトとしては、意欲的なプログラム、実験的なプロジェクトを、積極的に支援していこうというものです。支援も、金銭的なサポートだけではなく、必要であれば、実行委員がアイディアの相談に応じたり、作品づくりのサポートをしたり、要望があれば、作品に出演したり、創作に関わっていくこともあります。実行委員でありながら、ぼくも第1期の「さあ、トーマス」や第2期の「ほうきぼし」に出演しました。

これまでに、中川真さん、羊屋白玉さん、大友良英さんなど国際的に活躍しているアーティストも参加してくれていますし、東京芸大先端芸術学科の学生からの応募や、神戸大学大学院生を中心としたプロジェクトなど、学生からの応募で採用になったプロジェクトもあります。

とこうやって一生懸命書くのも、書類選考をしていて、つまらない応募書類の山を目にすることほど怖いことはありません。一体どうなっちゃうんだろう?これって実現できるんだろうか?でも、こんなことできたらすごいなぁ、とワクワクさせるような応募書類を見たいのです。じゃないと、選考していて、本当につらいです。野心的なプラン、ハチャメチャなプラン、とんでもないプランなど、期待しています。

で、今日は第3期に参加している「めくるめく紙芝居プロジェクト」の井手上さんとお話をしました。彼女は京都で「子どもとアーティストの出会い」というNPOを立ち上げた人です。堤さんが東京で立ち上げたNPOは「芸術家と子どもたち」。ところが、井手上さんは、子どもが先に来るのです。彼女にとっては子どもが先で、アーティストが後。堤さんにとっては、芸術家が先で子どもたちが後。なるほどなぁ、と思いました。

井手上さんは、「めくるめく」プロジェクトでは、「子どもとアーティストの出会い」ではなくって、「アートマネジメントと障害のある人たちの出会い」に取り組もうとしているようです。初めて取り組む分野で、相当難しく、なかなか方向性が見えなかったようで、ぼく自身が知る限りでのエイブルアート・オンステージのこれまでの3年間で問題になってきたこと、様々な課題、可能性について、話をしました。

例えば、クラシックのコンサートは、未就学児を観客として排除しています。静かに座っていられない人も、最初から観客として排除しています。あるアートマネージャーが「0歳児から楽しめるクラシックコンサート」みたいな企画を立てない限り、0歳児は決してクラシックコンサートに行くチャンスはないのです。そして、様々な劇場公演は、様々な人を無自覚に排除しています。そして、アートマネージャーがどれだけそのことに自覚的でいられるのか?公演のちらしを作るときに、どれくらい様々な人にアクセス可能な宣伝形態が可能なのか?例えば、日本語のみで書かれたちらしは、日本語が読めない人には、届かない。それから、アウトリーチという言葉があって、アートマネジメント業界でも、よく使う言葉です。この言葉は、児童虐待などを発見するのに、児童相談所などで待っているだけでは、なかなか虐待が発見できないので、児童保険員の人が町に出て行って、子どもたちの中に入って行って、虐待の子どもがいないか探しに混じっていくときにもアウトリーチと言うそうです。ちなみに、英和辞典を見たら、outreachは、「至れり尽くせりの奉仕活動」と書いてありました。

というわけで、「めくるめく」では、「エイブルアート・マネジメント」とでも言ったらいいのでしょうか、そういうことを始めようとしているわけです。その道は険しいと思いますが、頑張ってください。そして、関わる橘大学の学生さんたちにとっても、すごい経験になったり、アーツマネジメントを根本から考えるきっかけになるのではないか、と期待しています。