野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

《たいようオルガン》世界初演!!!!!

水戸芸術館で《たいようオルガン》世界初演。演奏は、石丸由佳さん(オルガン)、小林沙羅さん(ソプラノ)。原作の絵本は、荒井良二さん。水戸のオルガンには、3000本以上のパイプがあり、それを全部使ったんじゃないか、というくらい色々な音色が出てた。パイプオルガンは宗教音楽もできるけれども、神を賛美するだけじゃなくって、雑草も賛美できるんだ。民謡もできるし、ヒップホップもできるし、雨がぽつぽつ降り出して、土砂降りになって、雷がすごい低音で鳴るのもできるし、鳥も鳴くし、砂漠の砂に足をとられながらの行進もできるし、カーニバルも、お遊戯も、雅楽も、ラッパもできる。朝から夜まで、ゾウバスが走っていく絵本の世界の中、オルガンは七変化していった。石丸さんは、オルガンでこんな変な音は出したことないぞ、という音色をいっぱい作ってくれた。日本画の顔料で描いたら、みんな浮世絵みたいになるわけはなく、全く違った絵画が描ける。油絵の具で絵を描いたら、みんなバロックの宗教画みたいになるわけはなく、全く違った絵画が描ける。同様に、パイプオルガンで演奏したら、みんなバロックの宗教音楽みたいになるわけはなく、全く違った音楽がつくれる。本当に色んな響きが出たし、2本の手の10本の指と、両足を忙しく動かして、次々に変わる音色と野村の書いた厄介な譜面を、目一杯楽しんで演奏してくれたのが、石丸さん。学生時代から、絵本をオルガンで演奏するのが夢だった、というこの企画のためにあるような逸材。

 

ソプラノの小林沙羅さんが、また凄かった。もの凄く澄んだ歌声で、天上から降り注ぐような歌声で、しかし、役者であり、語り部であるような、これまた、この企画のためにあるような逸材。美しいところも、切ないところも、可笑しいところも、激しいところも、ノリノリなところも、すごくいい。

 

荒井良二さんも、舞台やりたいよー、と乗り気。荒井さんが舞台セット作って空間作って、このお二人の演奏がさらに深まっていったら、と夢想すると、ワクワクしかない。

 

音響、映像のスタッフたちの仕事がばっちりだったのも、いい現場だったなぁ。また、水戸に来たくなるなぁ。15年前に九州大学荒井良二野村誠のワークショップを企画した遠藤綾さんも久しぶりに再会。15年前の福岡の山の中での濃密な3日間のことが、今でも彼女の日々の活動につながっていると聞くと、嬉しい。

 

そして、今回の奇跡のような面子をコーディネートした学芸員の高巣真樹さん!最高の企画でした。そして、見守りサポートしてくださる芸術監督の中村晃さん!ありがとうございます。この水戸芸術館発の企画、今日を起点にして、育てていきましょう。

 

ということで、束の間の惑星直列のような奇跡の公演が終わり、十和田に向かって北上。トンネルを抜けると、北国!風邪ひかないようにしよう。週末は、十和田市現代美術館での公演だーー。