野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

《問題行動ショー》と《ルー・ハリソンへのオマージュ》の収録

本日は、アクア文化ホールで野村誠作曲の《問題行動ショー》(2019)と《ルー・ハリソンへのオマージュ ヴァイオリンとバリガムランのための四重奏》(2017)の収録をした。コロナで公演が行えなくなっている公共ホールに対して、公文協(全国公立文化施設協会)が11月に突如動画配信の助成金を出すことになり、しかし、2月までに行わなければいけないという正気の沙汰でないスケジュール。それに、プロデューサーの柿塚さんが、野村誠の作曲作品をまとめて演奏する企画で応募し採択され、本日と2月上旬に収録する。スケジュールの隙間の時間を使って、リハーサルをしたり、収録をするという強行企画。自分の作曲作品の動画アーカイブができるのは、本当にありがたい。昨年2月に、ポーランドの国営ラジオPolskie Radioの番組Nokturnで、野村誠を特集した2時間番組が放送されたのも、嬉しかったけど。あ、それに、すみゆめで「野村誠X北斎」の作品がまとめて動画配信されたのも、貴重なアーカイブ

 

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映像、録音のスタッフの方々、そして、ホールの舞台、照明のスタッフの方々にも感謝。舞台、照明のスタッフの方々の姿を見ると、この10ヶ月間にホールの仕事はどれだけキャンセルされたのだろう?仕事をしたいのに仕事ができずにいるのは、本当に辛いことだろうという思いが頭をよぎる。

 

《問題行動ショー》は、2年前にアクア文化ホールで演奏した。あの時には、砂連尾さんと佐久間さんの踊りもあった。会場にはお客さんがいた。香港から多くの仲間が来ていた。ざわめきの中で演奏した。見えない世界のことを思う。今日、ここに不在の人々のことを思いながら、そこに届けるような音楽を奏でたい。それと同時に、15分間息を抜く間もないほど緊張感が持続する譜面と目一杯格闘し、ヴァイオリンの巖埼さん、クラリネットの吉岡さんと音で対話をしていく。この二人、本当にいい演奏家で、一音、一音、ニュアンスが変わっていくのが、味わい深い。本当に難しい曲を作曲したなぁ。でも、この二人と演奏したくて書いちゃったんだなぁ。大切に、魂を込めながら、異世界へと誘われるべく、演奏。この曲を何テイクかやったら、集中力が枯渇するくらいヘトヘトになった。

 

バリガムランのギータクンチャナと巖埼さんのヴァイオリンでの《ルー・ハリソンへのオマージュ》は、3年前の初演とは印象が変わった。当時は、西洋楽器のヴァイオリンとインドネシアガムランの異質さが際立った演奏だった。今日は、異質なはずの二つの楽器が融和して、西洋とアジアが対立するとかではなく、西洋でもアジアでもないかもしれない、どこかの国の音楽かもしれない世界が醸し出された。3年の時を経て、音楽が発酵してきている。3年前の時は、今日よりもガムラン楽器がドレミっぽく聞こえた。今日は、全然、ドレミじゃなかった。ぼくが作曲した音楽なのに、民族音楽に聞こえた。巖埼さんは、昨日の午前にこの曲をリハーサルして、夜には、センチュリー響の定期演奏会で、リゲティバルトーク、ヨハンシュトラウスを演奏し、今日のこの収録に参加。感謝。ガムラン奏者とヴァイオリニストが、頭にインドネシアの花を飾っているのも良かったなぁ。

 

おつかれさまでしたーーー。