野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

服部桜の背中

梅雨が明けて、夏が来た。京都はクマゼミが鳴いている。気温がじわじわと上がっている。今朝の「四股1000」では、序ノ口の取組を見ながら四股を踏み、服部桜の相撲に歓声があがった。服部桜とは、大相撲に入門して5年間、序ノ口から一切出世することがなく、3勝194敗1休という成績を残している伝説的な力士。これだけ負け続けるのに、辞めずに続けているのは、才能かもしれないし、悟りかもしれない。負けた後の服部桜の後ろ姿は、砂連尾さんの目には一仕事を終えて満足した姿とうつっていたようだ。

 

9月6日の北斎バンドのコンサートに向けての作曲作業。7月に行った4つのオンラインでのワークショップを元にした4つの小品を作曲する。まずは、隅田川をテーマに作った歌をアレンジ。沖縄音階の歌を木琴で奏で、イギル(胡弓)が通奏低音、箏が相撲の太鼓のリズムを演奏するアレンジ。そこに尺八が、沖縄音階ではなく木曽節を奏でる、という感じになった。

 

大相撲も大詰め13日目。優勝争いは、1敗の新大関の朝乃山と1敗の元大関で怪我で序二段まで陥落して奇跡の復帰をして幕内に戻ってきた照ノ富士照ノ富士が朝乃山を下し単独トップに立った。3年前には、照ノ富士大関で優勝争いをして、稀勢の里の奇跡の優勝の際に、負傷した稀勢の里に千秋楽の本割と優勝決定戦で連敗して、準優勝になってしまった。その後、稀勢の里は怪我で休場続きで引退し、照ノ富士も休場が続き、大関陥落どころか、十両、幕下、三段目、序二段と落ち続けた。その照ノ富士が復活して朝乃山に勝利したのは、ドラマ。

 

里村さんと家のDIY作業をする。BGMに2月19日放送のポーランドラジオの2時間番組「相撲は音楽か?」をかける。野村の音楽、相撲の音楽、そして戸島美喜夫の音楽をかけてくれた番組。今でもこちらで、聞ける。

www.polskieradio.pl

明日の「四股1000」に向けて、2016年12月6日に3回やったJACSHAフォーラムの1回目のテープ起こし(30分のトークの前半10分程度)をする。自分たちで話しているのに、4年経つと覚えていないこともたくさんあるし、色々参考になる話がいっぱいある。どうして、もっと以前にやっておかなかったんだろう、と本当に悔やまれるが、コロナでステイホームになったおかげで、こうしたアーカイブ作業に取り組めているのは、感謝。コロナさえなければ、「帰ってきた千住の1010人」も上演できたはずだし、「祇園精舎の宿題の」も上演できたはずだし、「メシアンゲーム」も上演できはず。今年、作曲した新曲が、次々に上演されず、延期や中止になり悔しい。でも、コロナがあったから、「I am Jacsha. You are Bacsha.」を作曲し、イギリスのロブがツイッター初演をすることができたし、「四股1000」が始まったし、こうしてJACSHAフォーラムを書き起こしたり、できている。失われた分、その分、何かが入ってくるんだなぁ。その何かをつかまえようとしている日々だなぁ。