野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「千住の1010人 in 2020年」延期のお知らせ

鳥取銀河鉄道祭」のドキュメントブックなどが郵送で届く。約2年間、門限ズとして関わったプロジェクトは、門限ギリギリまで遊び続けて、本当に門限ギリギリに色々なことが間に合って、未だ咀嚼できないような成果をあげた。あの後、鳥取の人々はどうしているのだろう。夢のような時間であった。また再会したい。

 

5月31日に予定していた「千住の1010人 in 2020年」の延期が、本日、正式に発表になった。昨日、ぼくが作文した以下の文章も公開になった。

 

 5月31日に予定していた「千住の1010人 in 2020年」を、10月に延期することになった。計画通りに行えないのは、実はすごく悔しい。大変な苦労をして準備してきたスタッフ、仲間たちの気持ちを思うと、本当に残念で胸が痛くなる。でも、その苦労の成果を5月31日に実現できるには、不安材料が多すぎるので、延期の決断をした。悔しいが、話し合いの末、これが最善だと判断した。
 我々の決断は延期であって、中止ではない。我々「千住だじゃれ音楽祭」の9年間は、予想外のハプニングや無茶振りの連続で、みんなそれらを乗り越えてきたから今がある。だから、今こそ、我々のこれまで培ってきた柔軟力を発揮する場面だ。ぼくたちの企画で、計画を変更しなかったことなんてない。これまでの9年間、ぼくたちは、前向きにどんどん変更してきた。変更に対応して即興で演奏するし、変更に対応する柔軟なマネジメントをしてきた。だから、本番が5ヶ月先に延期になったことだって、前向きにとらえられるはずだ。5ヶ月準備期間が増えることで、ぼくたちの企画を、さらに面白く充実したものに変更できるチャンスだ。
 今、新型コロナウイルスとともに生きる中、ぼくたちは、アートのこと、コミュニケーションのこと、交流のこと、隔離のこと、地域のこと、世界のことなど、各自いろいろ考えている。そこには、すごい可能性があると思う。また、歴史上の様々な疫病に対して、過去の音楽がどう振る舞ってきたのかも、改めて考え直す機会にもなっている。これも、すごい可能性がある。だから、今、しっかり考えて、しっかり休んで、しっかり体力をつけて、10月の実現に向けて、もう一度、仕切り直そうと思う。2021年以降の未来にも繋がっていく波動となるような音楽のやり方、プロジェクトの組み立て方を、再検討してリベンジしよう。まずは、延期のご報告と決意表明。うん、ぼくらのやり方で成功させよう。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

「千住の1010人 in 2020年」に限らず、ぼくは、一つひとつの仕事を丁寧にやりたいと思っている。力技でエイヤーと何とか形にするのではなくて、時間の許す限り丁寧にやりたい。今回、新型コロナウイルスが出てきて、いろいろ思い出した。ぼくは、90年代に路上演奏をいっぱいやっていた。東京の山手線の全駅で路上演奏したし、それ以外にも様々な場所で路上演奏をした。路上演奏をしていて、気づいたことがあった。特に20年前にそうだったのだが、駅前で演奏していて、高齢者や車椅子の人に出会うケースが極端に少ないと感じた。だから、路上で出会えない人に、わざわざ会いに行こうと思って、1999年に、「お年寄りとの共同作曲」を始めた。今、新型コロナウイルスで、人が集う場に出てこれない人々がいるけれども、新型コロナウイルスが流行らなくても、家や病院や施設などから出て来れない人々がいる。「千住の1010人 in 2020年」は、町に音楽を響かせる。路上に公園に川に電車に、音楽を響かせる。それでも、町まで出て来られない人々に、どうやって音楽を届けることができるのか。いや、届けるだけでなく、どうやって参加できるのか。そのことを、もう一度、考え直す時間にしたい。

 

「千住の1010人 in 2020年」延期の詳細情報は、こちら。

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