野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

脱皮に向けて

今日は新月。何か新しいことが始まる予感。 と思ったら、「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」より、こんな告知が公開されていた。
 
 
 
あ、もちろん、ぼくは関係者なので、いろいろな経緯は知っているのだけど、大規模イベントとして、「千住の1010人 in 2020年」も「実際の会場での開催」を中止すると、活字で公開されているのを見ると、その文字の強さに、キャイーンと蹴飛ばされたような気分になる。もちろん、昨日までのブログでも、10月31日に向けて準備中と書いている通り、10月31日にオンラインの参加型の音楽フェスとでも言うべきイベントを、現在着々と準備しているし、もう次に向かって邁進している最中なのだが。念のために言っておくと、ここで言われていることは、あくまで、「実際の会場での開催」の中止である。
 
以下、faecebookで投稿した私信。
 
2014年10月12日に「千住の1010人」を開催し、千住の足立市場にて奇跡的に1010人での大オーケストラを実現することができました。
 
2020年5月31日に「千住の1010人 in 2020年」を開催すべく、何年も前から大勢の方々を巻き込みつつ準備をして参りましたが、2020年の3月に、10月への延期を発表いたしました。
 
2020年7月に、10月31日の開催の告知をいたしました。この時点で、既にオンラインの要素を含めた形への大規模な転換案を構想して準備をしておりました。
 
2020年9月、当初予定していた形での開催は行わない、という告知が出ました。当初予定した形での開催ができないのは、長期間準備してきたプロジェクトとしては、非常に悔しく残念な思いでもあります。しかし、同時に、当初予定していなかった全く違う発想の形態にチャレンジできるチャンスが到来したと、ますます本気になって日々、新プロジェクトとして準備を重ねております。
 
自分が長年築いてきた活動の集大成としての「千住の1010人 in 2020年」をやるのではなく、自分の殻を脱ぎ捨てて脱皮し、新たな音楽と出会う機会なのだ、と改めて思いました。
 
ということで、この5ヶ月間かけて、この大規模企画の大転換を行なっております。現場で音楽を生み出すことが真骨頂だと思っていた自分が、5ヶ月前にZOOMをダウンロードし、不慣れな世界での試行錯誤の連続。このリモート会議用のアプリが、楽器の音をノイズとみなして排除するし、タイムラグがあって同時には音が出せないし、通常の音楽が全く成立しない。これは、通常じゃない音楽しかできないから、大チャンスと思いました。
 
そうした実験に「だじゃ研」(=だじゃれ音楽研究会)の方々が、付き合ってくれました。リモートでの合奏は、自分の音楽の常識を覆される体験の連続で、笑いながら大失敗したり、思わぬ抜け道を見つけたり、発見の数々。5ヶ月たって、すごい面白くなってきております。この面白さを、どうやって公開する形にしていくのか、どうやって展開していくのかが、現在の課題。ようやく、この地平に立てたという実感。未知の領域、面白いです。
 
転換後の企画の詳細は近々公開します。お楽しみに!ぼくも、本当に楽しみです!!!!

 (野村誠 2020年9月17日記)

 

とにかく、今年の1月1日に、今年の抱負は脱皮と書いた。しかし、今までの活動の延長線上で継続して活動しているので、いきなり脱皮なんてできない。当初は5月31日に「千住の1010人 in 2020年」をやり終えたら、脱皮に向けて長期の旅をして充電しようかと、漠然と考えていたが、パンデミックでロックダウンの日々が訪れ、延長線上での継続した活動を強制終了や強制延期になり、いきなり脱皮を強いられる感じになった。背中を押してもらっている感じで、感謝でもある。
 
結局、4月末から4ヶ月以上も毎日四股を1000回踏み続け、ほぼ毎日、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)メンバーと顔を合わせ、今まで以上に相撲聞芸術の深みにはまっている。
 
今朝は、一ノ矢さんより雑誌「きらめき+」9月号が届いた。先月、世界初演された野村誠作曲/一ノ矢作詞「初代高砂浦五郎」について、4ページにわたる原稿を書いてくださったのだ。そして、
 
紀貫之世阿弥→(初代)高砂浦五郎→一ノ矢→野村誠竹澤悦子
 
という 和歌→能→相撲→作曲→地歌 という流れについても言及していただいていて、本当にありがたい。今、世阿弥に関する本を二冊、同時に読んでいるが、世阿弥は「寿福増長」と能について何度も言っているらしい。高砂の終わりにも、「寿福を抱き」という歌詞があり、それを新作「初代高砂浦五郎」にも入れてみた。世阿弥は、自分の芸術である能が、古今和歌集にも禅にも疫病退散にも、繋がっているように言う。相撲も作曲も地歌も能も全て同根である。根っこでつながっている。一ノ矢さんの原稿を読み、鎌田東二世阿弥を読みながら、そんなことを思う。
 
本日は、門限ズの打ち合わせ。春楽器に愛知大学で講義をした「門限ズ」(=演劇xダンスx音楽xマネジメントのプレイヤーによるバンド)。2008年の結成以来、時々どこかに出没しては、不思議な活動を続けてきた。秋楽器も講義に行くことになった。訳のわからないことを、訳のわからないまま混沌と味わう舞台を学生たちと生み出すべく、打ち合わせ。同時多発ワークショップのような舞台。楽しみ。
 

10月11日のJACSHAの《オペラ双葉山 竹野の段》のチラシのデザインがあがってくる。デザイナーさん仕事はやーい。みんなで一気に校正。