野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ルチアーノ・ベリオと宮沢賢治と門限ズ

鳥取に移動。移動の車内で、David Osmond-Smith著の「Berio」を読んでいた。ルチアーノ・ベリオは、20世紀のイタリアの作曲家。ベリオは、ミュージックシアターの作品が多数あるが、1970年代の「オペラ」という作品では、死を扱った3つの題材が混ざり合い、そのうちの一つが「タイタニック号の沈没」。今、鳥取で作っている舞台「ゲキジョウ実験!!! 銀河鉄道の夜→」でも、タイタニックのくだりは出てきて、生と死を題材にした複数のレイヤーが重なり合うので、ベリオは似たようなことを「オペラ」でやろうとしたのだろうと思い、ベリオの「オペラ」を改めて聴いてみたいと思った。

 

とりぎん文化会館のリハーサルで、インクルーシブ・ダンスグループ「星のいり口」の方々とのリハーサル。ここでは鳥取大学名誉教授の佐分利先生は「さぶちゃん」と呼ばれていて、障害や年齢や性別や職業や、そういった様々な違いに関係なく、いろいろな技量や個性の人がダンスを楽しんでいる。リハーサル/ワークショップは、門限ズのエンちゃん(遠田誠)のナビゲートで進む。公演の中でも重要なシーンになるのだが、皆さん舞台に慣れているのか、素早く理解されて、どんどん本領を発揮してダンスされているのが印象的。

 

大阪の日本センチュリー交響楽団が偶々鳥取の小中学校に演奏にきていて、ヴィオラの森亜紀子さんと偶然会う。ワークショップでも、ヴィオラを演奏してもらい、銀鉄部室にも遊びに来ていただく。

 

銀鉄部室では、美術家藤浩志さんや様々なメンバーが、黙々と衣装や美術をつくっている。これが、プランがあって作っているのではなく、即興で作っている。即興美術で、その場で思いついたままに、思い思いに色々な物が作られている。一人の美術家のディレクションで統一感を作るのではない。藤さんが全体に責任を持ってナビゲートされているのは確かなのだが、各自が自分の好みやこだわりで、自由にどんどん作っていく。藤さんは、大きなフレームは作るけれども、その中で自由度が非常に大きい。その総体として、舞台美術が形を見せてくる。市民参加型の即興美術。本番になるまで、全容は不明で、本番が始まって以降も増殖し続けるかもしれない。ダンス、演劇、音楽が即興なのは、イメージできたけど、美術もこんなに即興でできるんだなぁ、と改めて感動。