野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作曲は弔い

2008年に結成した「門限ズ」は、見えない凧をあげたり、レクチャーに足つぼしたり、遠足したり、般若心経と即興セッションしたり、演劇と音楽とダンスとマネジメントの混在する遊びを続けてきた。その門限ズが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を、市民参加音楽劇として舞台化する、というのは、新傾向の活動だった。そして、そこに美術家の藤浩志も加わって、歴史に残すべき伝説の舞台公演になった。

 

藤さんが言う。「作らなきゃいけない、じゃない。作りたい物を作って欲しい。作りたくない物は、作らなくていい。」

 

市民参加型のプロジェクトで、アーティスト主導で市民がなんだかやらされているだけ、みたいになることもある。でも、藤さんも、門限ズも、クリエーションするための場を設定して、あとは、皆さん作ってくださいね、と放り投げる。作りたい人が作り始める。やりたい人がやり始める。様子を見たい人が様子を見る。やりたい人がやっているのに反応して、別の人がやり始める。そんな風にして、音楽やダンスや演劇や美術ができていく。それは、本当に面白かった。

 

今回の大発見は、同時多発ワークショップ。音楽のワークショップと演劇のワークショップとダンスのワークショップが狭い空間で同時に行われている。この状況が面白く、時に、音楽とダンスが、時に演劇と音楽が、時にダンスと演劇が、意図せずに偶然のシンクロをする。こうした同時多発ワークショップの偶然の出会いの面白さから、何かが作れるかも、という予感はあったので、次に門限ズでやる時には、またやってみたい。

 

ちなみに、門限ズのこれまでの活動を3つの時期に分けると、

 

第1期 2009−2010年 門仲天井ホール(東京)でライブ、イギリスツアー、福岡市博物館でワークショップ、福岡アジア美術館でライブ。「10秒リレー」、「足つぼレクチャー」、「凧あげ」など、とにかく4人で遊んで実験を試行錯誤する初期。

 

第2期 2016-2017年 豊橋でのワークショップや遠足。えずこホール20周年記念イベントでのパフォーマンスなどで、散歩や遠足など、5年のブランクの後の再始動の時期。

 

第3期 2018−2019年 九州大学ソーシャルアートラボでのワークショップや、鳥取銀河鉄道祭でのワークショップ。「プラネタリウム劇場 銀河鉄道の夜」、「ゲキジョウ実験!!!銀河鉄道の夜→」など、鳥取で濃密に舞台作品を創作した時期。

 

第4期 2020ー  同時多発ワークショップの先にある何かを試行錯誤する?

 

門限ズが次のフェーズに入る、そういう時期にいる気がする。鳥取でのワークショップの中でいっぱい発見があって、いっぱい宿題をもらったので、さらに次のことが始められる予感。

 

皆さんと深夜まで語り続けられて、ようやく2020年以降の門限ズを考え始める気持ちになれた。あと、佐分利先生とお話しして、作品をアーカイブするというのは、「弔い」の意味なのかもしれない。ぼくは、かつて生きた時間を弔うために、作曲しているのかもしれないなぁ、と思った。

 

鳥取で出会った皆さんに感謝。