野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

21世紀の音楽劇を実験する

オペラ、音楽劇、シアターピース、歌舞伎、能、スンドラタリ、京劇、、、音楽と演劇やダンスなどが融合していくジャンルが色々あって、古典の名作を昔ながらに上演することもあるが、現代においてどんな可能性があるのか、いろいろな実験も行われてもいる。ぼくが関わる場合は、だいたい、その実験の方で、例えば、ヒュー・ナンキヴェルとやった4幕の「Whaletone Opera」、ガムラングループのマルガサリとのワークインプログレスの(未だ途上である)5幕の「桃太郎」、住民参加型総合音楽劇「演劇交響曲 十年音泉」、ディディエ・ガラスのノンバーバルシアター「ことばのはじまり」、などがある。

 

今は、鳥取大学の先生でダンサーである木野彩子さんの壮大な構想のもとで、鳥取銀河鉄道祭に関わっていて、鳥取の芸術に携わる方々を数多く巻き込んで、門限ズがナビゲートしながら、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を実験していく。今日は、じょほんこ(=倉品淳子)率いるダンスチーム、ノム(=野村誠)率いる音楽チームでの合同リハーサル。

 

音楽チームは、メンバー全部合わせると、太鼓いろいろ、クラリネット、サックス、ヴァイオリン、チェロ、ギター、ウクレレ、インドの笛、のこぎり、木琴、トーンチャイム、などの楽器がある。しかし、日によって、欠席する人がいるから、毎回、違った楽器の組み合わせでやりくりしなければいけない。そうした状況で対応できる即興力が高まることも、大切なことだ。昨日、バッチリうまくいった「活版所」の演奏も、昨日のリーダーだった小学生が今日はいないので、別の人が彼の代わりを務め、昨日とは違う味わいで成立させていく。

 

演劇だけでつくっていたシーンに音をつけると、それだけで演技が変わっていくから面白い。逆に、演技が入ることで音楽が変わっていく。そういう相互作用がどんどん起こる。

 

鳥取大学でのワークショップが終わった後、夕方、鳥取西高校に行って、合唱部とリハーサル。そこにも、昼間のワークショップのメンバーがたくさんやってきてくれる。高校生は、野村が作曲した「さそりの祈り」と「今こそ渡れ渡り鳥」を譜読みしてくれていたので、曲を深めていく作業を一緒にできた。特に、合唱とセリフが融合したり、合唱と動きが融合したり、短い時間だけれども、ここでも相互作用が起こったことが嬉しい。

 

というわけで、京都に戻る。今回の道中は、音楽劇について考える上で、今回はイギリスの古本屋で買って本棚に眠っていたAndreas Liess「CARL ORFF  His life and his music」を読む。「カルミナブラーナ」がギリシア語、ラテン語、ドイツ語など、いろいろな歌詞で歌われるけれども、「オペラ双葉山」も古語だったり、現代語だったり、インドネシア語だったり、英語だったり、いろいろな言葉で歌われるかもしれないよなぁ、と思ったり、語りによる劇と歌や音楽による劇との関係について、動きと音楽について、などなど、前世紀の作曲家だけれども、でも、今、鳥取でやっていることにフィードバックするための考えるヒントはいっぱいもらえると思った。この本は、おすすめの名著とかでは全然なかったが、とりあえず、読了。音楽教育にも非常に影響を及ぼし、自分の音楽劇のことを「世界劇」と呼んだ作曲家を参照した夜。そして、音楽教育にも音楽劇にも強く関わり続けているのが、奇才ヒュー・ナンキヴェル。来週はイギリスで合流する。この動画を見てみよう。

 

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