野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

無茶振りとハラスメント

ゲキジョウ実験!!!「銀河鉄道の夜→」の9月の集中ワークショップの3日目。これが、とんでもなく面白くなってきている。門限ズで住民参加型でワークショップをやって舞台作品をつくると、面白くなるだろう、とは思っていた。しかし、2007年にやった演劇交響曲「十年音泉」で、かなり実験的な試みをやったし、豪華アーティストをゲストに呼んで年間100回くらいのワークショップの末に4時間強に及ぶ舞台を創作した体験がある。あの若気の至りの伝説の公演を超える歴史的な公演を生み出すことができるのだろうか、と自分自身でも確信が持てていなかった。ところが、今ははっきり言える。これは、舞台芸術の歴史に新たな1ページを加える記念碑的な公演になるだろうと。

 

演劇、音楽、ダンスのどれが主でも従でもなく共存し、対等にコラボレーションしている。プロやセミプロの人から初心者に近い人までが共存し、作品作りが成立している。インクルーシブとうたっている企画ではないが、障害のある人が応募/参加し、そこに表現/創作への障害がないように必要なケア/フォローを参加者同士で行っている。何より、参加者が主体的に意見やアイディアを提案し、イキイキとしている。そうした表現を構成/演出して生まれている作品が、何より詩的で美しく説得力がある公演になってきている。

 

それくらい順調で手応えを感じているので、心配事項はどんどん減っているのだが、だからこそ、今日はワークショップの最初に、無茶振りとハラスメントの違いについて語った。

 

舞台美術を担当する藤浩志さんが、「無茶振り大歓迎!遠慮なく、どんどん無茶振りして!」と言っている。無茶振りは、やったことがない無茶な要望をすることだ。しかし、無茶振りは、無茶を前提にしての要望なので、もちろん、そこに強制力はない。引き受ける権利もあれば、断る権利もある。ワークショップの中で、今までに体験したこともないようなチャレンジする機会を提供するのも、無茶振りだ。

 

でも、無茶振りを断れないように追い込むと、無茶振りは単なる無茶振りではなく、ハラスメントになり得る。相手を精神的/肉体的に追い込むハラスメントになり得る。だから、無茶振りは、いつでも断る権利があるし、引き受ける権利もある。ワークショップは、なんでもやってみる権利があるし、やらない権利もある。そのことを、もう一度、確認した。みんなが本番に向かって、精一杯頑張ってくれちゃいそうな空気感があるからこそ、敢えて確認した。精一杯頑張ってくれるのは、嬉しい。でも、家庭や仕事や色々な事情で、肉体や精神の色々な事情で、中途半端にしかやれないかもしれないけど参加したい人がいたら、迷惑をかけるから、頑張るかやめるか2択だ、なんて思うかもしれない(今のところ、そういう声を聞いてはいないけど)。だから、敢えて、言ってみた。それぞれが、それぞれのペースで、それぞれの能力で、それぞれのテンションで、関われる創造の場にしたいから。

 

こんな宣言と同時に、今日も濃密な4時間のワークショップ。昨日、一緒に銭湯にも行った舞台監督の大野さんとも、毎日、どんどん具体的なやりとり。舞台美術を担当する藤浩志さんのアシスタントの西川さんが、本日、初登場。照明の田中さんも合流。これらの方々に、本日の通し稽古をしっかり見てもらうことができた!!

 

11月2日、3日の各2回公演の4公演。チケットは既に売れ始めております。遠方からご来場の方々は、できるだけ早めの予約をお勧めいたします。

 

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