野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

みんながドンドン意見を言い始めた!

ゲキジョウ実験!!!「銀河鉄道の夜→」9月の集中ワークショップ2日目。

 

昨日も面白い創作の場だったけど、今日は凄かった。何が凄かったかと言うと、演出家がトップダウンで指示を出し、キャストがそれに従うのではない。キャストの面々も、スタッフも、みんなが意見を出し合いながら、試行錯誤で創作/稽古が進んでいることだ。

 

今日のワークショップの最初に、注意事項を書いた紙を配って説明した。注意事項の紙は、わざわざ居酒屋で料理の下に敷いてあった紙に、手書きで心をこめて書いた文章にした。その中に、「質問、意見は、いつでも大歓迎!」という一文がある。そして、今日の最初にも、これを強調した。この公演は、門限ズの作品をみんなが演じるんじゃない。みんながつくるものを、門限ズが交通整理して、舞台公演になる。だから、いつ何時でも、質問してもいいし、意見を言ってもいい。しかも、どんなトンチンカンな意見でも質問でも言ってもいいし、それが創作には絶対必要だ、と。

 

舞台作品をつくることに慣れている門限ズが作品をまとめていくのは、確実な方法だ。でも、今日は敢えて、このシーンからこのシーンにどうやって転換したらいいと思う?ここは、どう演出したらいいと思う?と問いを投げかけて、出演するメンバーの意見を待った。そして、トンチンカンな意見は、トンチンカンではなく、シーンを面白くした。門限ズは、本当に交通整理になった。どんどん、出演者が主体的に考えて動くようになった。こうした状況は、ワークショップ参加者にとって、主体的に考えて舞台に関わる学びの場になっているだけでなく、その結果、自ら納得した上で演じるパフォーマンスは、圧倒的に説得力が増している。言われてやらされているように演じているのではなく、自分で考えて演じる説得力は、全然違う。自分で工夫して演奏する演奏は、断然説得力がある。昨日休んでいなかった人には、門限ズから説明するのではなく、昨日いた出演者が説明していく。

 

吉野さつきが言う。今日、みんなが意見を言っているところだけを編集して集めた動画を、全国のホール関係者に見せたい、と。市民とつくる舞台企画は数多くあるが、演出家に指示されて指導されて演じるのではなく、こうして一緒につくっていく企画は、まだまだ珍しいと言う。熟練した演出家に全ての判断を委ねて、俳優はそれに準ずるあり方もある。でも、それは、熟練した政治家に全ての判断を委ねて、国民はそれに従属する国家、を思う。その政治家が絶対的に信頼できるのであれば、それも平和なのかもしれない。しかし、熟練した政治家が権力を掌握し独裁する国家よりも、国民が声をあげ、その声に耳を傾ける政治家がいる国家を、ぼくは望む。そして、仮に自分たちが熟練したアーティストであるとしても、俳優のダンサーの音楽家のワークショップ参加者の声に耳を傾けて、一緒につくっていくことで、より美しい世界を創造できると信じて、ぼくらは今日も創作を続ける。そして、そうした美と出会い、今日もゾクゾクとしたのだ。