野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

見えないは見える

JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の世話人の里村真理さんと打ち合わせ。「オペラ双葉山」の今後の展開に向けて、いろいろ書類作成など。通常、一人で行う作曲を複数で行う共同作曲にずっと取り組んできたけれども、書類の作成も複数で作っていくのは、面白い。相互作用があって、インタラクティブな場になるので、一人だと思いつかないことが発想できる。そこに、ぼくは可能性を感じて、共同作曲をテーマにしてきたのだろう。

 

ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショー」の公演が近づいてきている。砂連尾理さんと佐久間新さんという尊敬する二人のダンサーのデュオダンスのために、新曲を作曲している。コンセプトを持たずに、どんな全体になるかをイメージせずに、毎日、ひたすら譜面を書いて、こねくりまわす。ある種の粘土遊びのような感じで作曲しているが、粘土をいじっているうちに、徐々に、何かが立ち上がってくるように、曲の輪郭が少しずつ見えてきていて、大詰め。今週末には完成の見込み。作曲しながら、香港での様々な出会いが想起され、そうしたことが曲の中に浸透していく。さらには、ジャワ舞踊の達人がイメージされたり、亡き砂連尾さんのお父さんをイメージしたりもする。そして、ヴァイオリンの巖埼友美さん、クラリネットの吉岡奏絵さんの音色も思っている。作曲している時、ぼくは自宅で一人で作曲しているようだが、そこに不在の人たちの存在を感じて、作曲している。一人で作曲していても、不在の人々との共同作曲のつもりで臨んでいる。だから、ぼくが作曲で目指していることは、演奏している人だけでなく、いろいろな人の声が響くことだ。

 

昨日に引き続き、「問題行動ショー」の公演会場であるアクア文化ホールに行く。今日は、砂連尾理さんと会場下見。砂連尾さんと会場を見ながら、公演のアイディアをディスカッションする。照明の藤原さん、プロデューサーの柿塚さんも加わり、あーだ、こーだ、けーだと語り合う。ホール閉館後も、場所を変えて話し合い、そこに佐久間新さんも合流。「ひとり相撲」とは見えない神様と踊るダンス。または、不在の人と踊るダンスかもしれない。香港で出会った数多くの人々のうち、13名も来日して出演してくれるが、もちろん、舞台上に不在の様々な香港で出会った人々は不在だ。例えば、香港で一番濃密に関わったベリーニだって来ない。そうした見えない人々を感じられるようなダンス、見えないは見える。「カエルとヘビ」の不思議な歌。砂連尾さん、佐久間さんと話しているうちに、まだ見えないはずの本番の舞台が見えた。「見えないは見える」、「見えないはダンス」。その場にいる人、その場にいない人、いろいろな人と時間と場を、ワープできるような公演になる。

 

 

http://www.toyonaka-hall.jp/event/event-12190/