野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

寧波大学での講義と「世界のしょうない音楽ワークショップ」

朝、7時より朝食バイキング。中華料理の種類溢れる朝食。野菜や麺を選ぶと、その場であたためてくれるヌードルサービスや、目玉焼きを焼いてくれるサービスもある。8時から講義なので、食べ過ぎないようにするのが大変。

7時40分に王さんが迎えに来てくれて、車で講義に移動。大学の中に商店街やスーパーマーケットまである。大学の敷地がとにかく広いし、学生の多くも大学構内に住んでいる。大学構内にホテルがあると言っても、歩けば30分はかかるくらいの規模なのだろう。車で移動。

8時からの講義。ちなみに、時間割は、1限 8時―8時45分、2限 8時50分―9時35分、3限 10時―10時45分、4限 10時50分―11時35分。午後は1時から。全て45分授業だが、ぼくの講義は2コマ連続の90分。

ぼくの講義は、英語で行う。音楽学の1年生が100人ほど。日本で音楽学を専攻している学生だけで100人もいるような大学などどこにもないが、さすが中国。人口が多いので、何でも多い。

ぼくの講義は、鍵盤ハーモニカ・イントロダクションから始めて、安い楽器や価値が低いと見られている楽器に実は可能性があること。これは、人に関しても同様であること。だから、創造的な音楽ワークショップをしていることを、できるだけ単純な英語で説明する。

実際に、ワークショップの説明をする上で、簡単にボディパーカッションをして、音を出す。ノリのいい学生にリーダーをしてもらう。あとは、学生のアイディアをフォローしてみることにすると、ラピュタのメロディーを歌いたい、というので、みんなで歌ってもらう。それに合わせて、即興でハモろうとした学生がいたので、それをフォローし、今度は、アドリブ可で歌ってもらう。すると、口笛など、違った奏法も出たので、それらを組み合わせて、再構成して、みんなで合奏(①うた、②口笛、③ブー、④手拍子、⑤パパパ)。ワークショップの参加者のアイディアをフォローし、構成していくという一端を紹介できたと思う。

ホテルに戻り、井口先生と二人でエレベータに乗ったところ、ホテルの人に問いただされる。なんでも、中国では、夫婦でない男女が、同室になることには厳しく、我々がそれぞれの別室でたいあることを鍵を見せて証明するまで、疑われる。日本からの音楽学者と作曲家を、こういう目で見て管理していることに驚く。

しばらく部屋で休んでいると、ノックがあり、ホテルの人が、部屋にぼく一人であることを確認しに来る。まだ、疑っていたのか。びっくりだ。

部屋にある中国茶を飲んでみる。お茶のレベルの高さに驚く。めちゃくちゃ美味しい。大気汚染は酷そうで、到着して間もなく、くしゃみが出たりし始めたので、PM2.5対応のマスク着用。昨日から雨が降っているので、これでもましなのかもしれない。遠くが霞んで見えるのは、雨のせいか大気汚染のせいか、両方か。

昼食も、昨夜に続いて、10品以上が出てくる中華料理。寧波の料理は、とてもあっさりとしていて、日本人に食べやすい味。野菜が多いのも特徴。上海は甘く、北京は醤油味で肉が多く、四川は唐辛子で、 寧波は塩味のあっさりで野菜が多い。

午後、菊武先生の邦楽の授業があったが、車に乗れる人数が限られているので、見学には伺えず。近所を散策する。飲食店が並び普通の町のようにも見えるのだが、歩いている人が学生だけなので、ちょっと不思議な光景。PM2.5対応マスクをつけて散策したが、空気が悪く、だんだん身体のあちこちがむず痒くなり、ホテルに戻ってシャワーを浴びる。一日、何度かシャワーを浴びたくなる。

5時から、大阪音大の先生方と王先生と夕食。毎回、違う食べ物が出てくる。タケノコから、人参の葉から、カボチャ、カニ、魚、大根の葉っぱみたいな葉野菜、豆腐のスープなど、昨日からの食事はどれも印象深い。

6時半よりワークショップ。大学に「世界のしょうない音楽ワークショップ」と日本語で書かれたポスターが貼られている。これは、大阪府豊中市の庄内からの出張ワークショップなのだ。参加者は、確かに70名ほど。最初に、野村の鍵ハモ・イントロダクションの後、菊武先生(箏)、小林さん(ガムラン)、田中さん(シタール)、ひとみさん(三味線)の合奏。皆さんで練習しておられたものに、野村の飛び入りでピアノで加わらせていただく。みんな興味津々で、ビデオをとったりして見る。

中国語の歌を歌ってもらい、それを今日の午前中の授業で生まれた方式(①うた、②口笛、③ブー、④手拍子、⑤パパパ)でやってみる。見事に演奏できる。続いて、作曲にとりかかる。子どもが言った「目晴和嘴巴(イェンチンハーツイバー)」のリズムで、ガムランを演奏してもらい、最初のメロディーができる。続いて、「我難自抜千世界之大(ウォナンツーパーユーシージェチダー)」のリズムで、シタールを弾いてもらい、2番目のメロディーができる。最後に、日本語を教えることになり、「なんぼでもかまへんわ」というリズムになり、これをお箏で弾いて、3番目のメロディーができる。その後、楽器持参の人々が加わって、この1番目と2番目のメロディーに合奏。二胡が数名、中国琵琶、中国箏の人もいるし、ギター、ヴァイオリン、ウクレレ、サックス、クラリネットなどもいる。楽器を見るだけで多国籍なオーケストラ。打楽器も配って打楽器隊ができる。子どもたちが制御不能なので、こどもたちの活躍する場面もつくる。三味線やお箏の体験枠が三味線3人、お箏4人。即席邦楽チームも菊武先生のご指導のもと、がんばって演奏。とりあえず、最後には、通して演奏するところまできました。明日は、もっと発展していき、明後日には、コンサートで発表するのです。

終わった後に、鍵ハモのことを教えて欲しいと、子どもがやってきた。小学生6学年くらいの男の子。どこで買えるのかと聞いてくる。どのメイカーのものがいいのか、など。丁寧に教える。ここで、鍵ハモ奏者が誕生したら面白いな。

それにしても、皆さん、本当にお疲れさまでした。また、明日、よろしくお願いいたします。