野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

寧波大学でのワークショップ2日目

中国の寧波大学に滞在中。本日も、 寧波大学ホテルでの朝食バイキングを満喫の後、8時半にホテルを出発。 寧波の文化視察(観光)。

寧波は小さな町と聞いていたが、中国人にとっての小さな町は、決して小さくなく、車で走っていて、町並みを見た印象では、少なくとも100万人以上の人口を抱える都市。しかし、北京や上海など、1000万規模の大都市が多数ある中国では、 寧波は小さな田舎町と呼ばれるようだ。

ちなみに、 寧波にとっての隣町は上海で、王さん曰く、「上海は近いですよ。新幹線で2時間くらい。」とのこと。確かに、中国のスケール感で見れば、新幹線で2時間は近いのだろう。

王さんから、「昨日のワークショップ、学生たちは面白いと喜んでいる」との報告を受ける。こんなワークショップが開催されるのは、中国初だろう、とのことで、音楽ジャーナルに王さんはレポートを書く予定とのこと。

阿育王寺という西暦200年頃にできたお寺に着く。中国は歴史が古いので、平気で3世紀とかの寺院がある。まずは、瓦屋根のデザインに目が行く。鬼瓦の場所に、象がいたり、屋根の上に鏡があったり、屋根が面白い。ウルトラマンのような像があったり、新鮮なことが色々。お経も独特で、メロディーはインドネシアで言うところのスレンドロ音階。日本で言うところの民謡の陽旋法。それにしても、一緒に回っているのが、インド音楽の田中さん、バリガムランの小林さん、邦楽の菊武先生、中国音楽の井口さんなので、何を見ても、インドとインドネシアと中国と日本の視点で比較して見られるので面白い。仏教は、インドから中国を通して日本に伝わったのだと、それぞれのコメントを聞きながら、楽しむ。

続いて、楽器屋さんへ。ピアノなどの西洋楽器も売っているが、中国楽器も売っている。香港の楽器屋さんにあったラインナップと意外に似ている。香港では、中国から輸入しているので、もちろん、こちらの方が安いだろう。中国打楽器を以前いろいろ買ったが、香港で知的障害の人々とのセッションでバチが壊れたり、紛失したりしたので、バチをまとめ買いする。

これまで中華を食べ続けているのだが、それでも感動のランチ。中国文化、特に 寧波の食文化に敬服するばかり。食材そのものの美味しさを引き出すこと、これだけ多様な味を出せること、 寧波の豊かさを思い知る。もうこれで、当分、日本で中華料理を食べる気がしなくなってしまった。

午後は、 寧波博物館に行く。入場無料。 寧波は歴史が古い。紀元前5世紀の瓦が展示されていて、感動する。日本に瓦が伝わる1000年近く前、2500年ほど前の瓦は、普通に叩いて演奏したらいい音がしそうに見えた。その後も、色々な時代の瓦もあり、陶器も多数ある。さらに、展示を見ることで、 寧波は日本との繋がりが大きいことを知る。元寇で元の船が戦力を整えて九州を襲う準備をした港も寧波。雪舟が渡って中国文化を習得したのも寧波。鎌倉時代に、日本に仏教文化を伝来したのも、ここからだ。確かに、長崎の五島から、大陸を目指すと、ここが玄関になるのもうなづける。そんなに日本と関わりの深かった地で、今こうして音楽交流をしていることの意味を、改めて考えさせられる。

1時間ほどホテルで休憩して後、5時より夕食で、例によって中華料理の奥深さを味わって後、18時半よりワークショップ2日目。

今日は、音楽院のカホンやコンガやジャンベなどの打楽器もお借りして、豪華に。昨日、楽器の説明もしなかったので、今日は最初に、箏、三味線、シタール、バリガムラン(スリン、レヨン)の説明をして後、シタールの田中さんの作曲した曲を披露。これに、野村は即興でピアノで加わった。

その後、早速、ワークショップ開始。最初は、騒然とした状態で止まる練習をしようと思い、野村が動いている時は音を出して、野村が止まったら音を止める、というのを試す。最初、みんな全然、見ていないので、止まっても音が止まらない。何度も繰り返していくうちに、これができるようになる。これができるようになったので、止まった時に指差された人がソロ演奏をする、というのもやってみる。中国楽器の学生は、かなり技術的に上手だったりするが、急に指されると、何か既存の曲を引用するケースが多い。でも、これを続けていくうちに、集中してアンサンブルできるようになって、徐々にオーケストラとしての一体感が出てくる。いい感じ。

続いて、昨日の「なんぼでもかまへんわ」をみんなで歌う。何回繰り返すかと尋ねて、3回になる。3回を繰り返しながら盛り上がる。ハーモニーも試してみる。これまた、いい感じ。

昨日やった中国の歌の指揮を、ぼくの代わりに学生に指揮をしてもらうことにする。ピアノ君が立候補して指揮をする。ここは、ぼくがピアノで伴奏する。ピアノ君は戸惑いながらも指揮者の任務を楽しく頑張る。いい感じ。

続いて、太鼓のリズムを、今日の大勢の打楽器隊でやってみる。これは、そんなに拍は合っていないが良いエネルギー。止まり方のルールなどを決める。ノリノリのアンサンブル。いい感じ。

昨日つくったメロディーを演奏する。①シタールとバリガムラン、②中国楽器、③西洋楽器、④全員、⑤声、⑥邦楽器という順番になって、その後に、みんなで、「なんぼでもかまへんわ」を3回歌う。色んな楽器の音色や魅力も感じられて、いい感じ。

以上、全部を通し、いよいよ明日の本番を迎えられそう。最後に、このままで本番でいいか?何か、修正点など提案はないか?と尋ねると、昨日やってた冒頭の子どもの場面はないのか、と質問あり。そこで、子どものコーナーをつくる。せっかくなので、子どものコーナーの指揮者を別に募集したところ、友人たちの推薦で、クラリネット君が指揮者になる。このクラリネットのお兄さんの合図に合わせて、子どもたちが舌打ちしたり楽器をしたりする。とてもかわいい。いい感じ。

ということで、昨日と今日の二日間のワークショップで作った曲を通してリハーサル。いよいよ明日が本番。衣装の相談をして、明日の集合時間を告げて、ワークショップ閉会。おつかれさまーー。

ホテルに戻って、井口先生の部屋で全体ミーティング。いよいよ明日は、コンサート。