野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

身体で知り合う

福岡に来ております。九州大学の長津結一郎さんの招聘にて、門限ズ(=遠田誠+倉品淳子+野村誠吉野さつき)でワークショップ。本日の講座は、「演劇と社会包摂」制作実践講座の「身体で知り合う―表現とケアの2日間」の一日目。講師は、長津さん、門限ズに加えて、森裕生さん(舞台パフォーマー)、里村歩さん(俳優)。この森さん、里村さんという苗字だけ聞いて、ぼくの中では、さいたまトリエンナーレでお世話になった森真理子さんと、里村真理さんという森+里村コンビのことが、頭に浮かぶ。

森さん、里村さんの経歴はこちら。

森裕生:舞台パフォーマー

講演家・プロマジシャン・役者・モデル・ボーカリストといった顔をもつ。先天性脳性麻痺による四肢体幹障害という才能がある。ステージネームは「Mr.Handy」。2013年「君の近くで・・・」(TECALL主催)で主演、2016年〜2017年 身体的にバラエティあふれるひとたちの演劇公演『BUNNA』(認定NPO法人ニコちゃんの会主催)に出演。著書として『まるはだか〜脳性まひプロマジシャンMr.Handy 誕生の日』(梓書院)がある。

里村歩:俳優

生まれつきの障がいではなく、原因不明で突然発症する。2014年より、俳優としての活動を開始。身体的にバラエティあふれるひとたちの演劇公演『BUNNA』(認定NPO法人ニコちゃんの会主催)に出演。その後、2016年には横浜・大阪公演、2017年の奈良・福岡公演と連続出演し、現在も同法人の俳優として継続的に活動している。

講座は、「門限ズ」の活動映像の紹介から始まり、楽器を鳴らし、カラダを動かし「愛してる」という演劇+音楽+ダンスワークショップになり、さらには、吉野さんと野村の対談に様々な妨害/障害がやってくるパフォーマンス。これを、里村さんと長津さんの対談でもやったりした。森さんの30分間の講演もあり、里村さんのファシリテートで、初恋を題材にした漫才も繰り広げられ、10秒リレーで、音楽もダンスも語りもして後、楽器を持ってキャンパス内を練り歩く。踊ったり、歌ったり、叫んだり、交わったり、歩いたりする。その後、冷房のきいた部屋に戻ると、ぼくはピアノを弾きたくなり、ピアノを弾く。遠田誠や倉品淳子が踊っている。鳥取から来た踊り子も踊っている。気がつくと、散々踊った後に、里村さんが車椅子でダンスの輪に入る。気がつくと、遠田+里村デュオに、ぼくがピアノで即興で音楽をしている。二人の緊張感のある無言のダンス、無言の会話。それは、形容し難い美しさで、ぼくは演奏をつづけた。そして、森さんも加わった3人のダンス。ピアノとダンス。4人の異なる身体が、対話する。このダンスが見られただけで、福岡に来た甲斐があった。

九州大学の中村美亜さんは、実は城山中学校の同期。35年前、城山中学校でオーケストラを指揮していた姿は、今でも覚えている。ソーシャルアートラボ研究員の村谷つかささんは、20年前に学生時代に、福岡で野村のワークショップに参加して以来の再会らしい。そして、九州大学の長津さんは、13年前の学生時代に、エイブルアート・オンステージのコラボシアターフェスティバルのボランティアスタッフをしてくれていた。その人たちに、インタビューをされる。様々な時間が多層的に重なり合い、今とつながっている。今日の出会いも、また未来のどこかにつながっていくことだろう。

懇親会、門限ズのミーティングの後、深夜のホテルで、ベートーヴェンの楽譜を分析。明日の講座の準備中。