野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

関西の作曲家がヨーロッパの作曲家を語る会

福岡のホテルをチェックアウトして、新幹線で新大阪へ移動。新幹線の車内でも、ベートーヴェンの譜面を分析。

豊中市立文化芸術センターに到着。本日は、北口大輔リサイタル(8月28日)に向けてのプレイベント。ここで作品が演奏される3人の作曲家(鈴木潤近藤浩平野村誠)が、このコンサートで演奏されるクラシックの曲(ドビュッシー、ディーリアス、ベートーヴェン)について解説する、というもの。チェリストの北口さんも、チェロ持参でスタンバイ。

鈴木潤さんのドビュッシーチェロソナタに関するレクチャーが本当に面白かった。ドビュッシーとダンスミュージックを結びつけるレクチャーは、初めて聞いたし、ドビュッシーを批判しているようで、魅力をうまく説明している。近藤さんは、他の作曲家の特色をあげては、「でも、そういうことは、ディーリアスはできない」、「そういうことはディーリアスはしない」と言う。ディーリアス的でないものを次々にあげることで、ディーリアスを説明する。また、ディーリアスの生きた時代。同時代者について語っているか、と思いきや、気がつくと、近藤浩平の生きた時代と同時代者としての野村誠鈴木潤武満徹メシアンについて語ったりもする。

ぼくは、ベートーヴェンの変奏曲が、いかに変な構造になっているか?なんて不器用な作曲家なのか?自由をどのように獲得していくのか?どのような錯覚効果をうまく使っているのか?など、説明する。なにせ、第6曲くらいで、32分音符という速い音符が出て、7曲目で16分音符というやや速い音符で、その後に8分音符と、盛り上がるのではなく、徐々に呼吸がゆっくりになってきた後に、10曲目で、ゆっくり(アダージョ)になって、初めて短調になる。この徐々に、落ち込んでいく効果。11曲目もゆっくりの短調の後、最後の12曲目で初めて3拍子になって、急に自由にはじけるのです。そこまで、ずーっと16小節の定型で変奏してたのが、急に、最後になって、自由になって79小節。16小節の曲を10曲やって、11曲目が(5小節だけ追加の)21小節で、最後だけ79小節。つまり他の曲の5倍です。これが、ベートーヴェンというものです。

そして、北口大輔、鈴木潤野村誠近藤浩平の4人による即興演奏が、本日のボーナス企画。

それにしても、クラシック音楽ばかりを専門にするわけではない3人の作曲家がクラシック音楽について語る企画は、意外にありそうでない企画。クラシック音楽の魅力、作曲家の魅力がこんな風に提示されるのは、面白いと思いました。クラシック音楽ファンでない人が楽しめる企画だなぁ。

ますます。8月28日のコンサートが楽しみになりました。チケットは、既に半分以上売れていますので、ご希望の方はお早めにお買い求め下さい。

ということで、京都に戻ると、祇園祭で、浴衣の人、観光客でにぎわっております。