野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

つみき again!

京都府立博物館の別館ホールで、「箏と洋楽器が紡ぐ音楽」で、野村誠作曲「つみき」(2003)が演奏されるので、台風情報をチェックして後、出かけていく。

行くと、池辺晋一郎っぽい曲が聞こえてきて、何かなぁと思ったら、池辺さんの「凍る」(1977)という曲だった。ぼくの「つみき」は、十七絃デュオ。カーティス・パターソンさんとマクイーン時田深山さんによる演奏。カートさんは、何度もぼくの曲を演奏してくれているが、深山さんとは、今日が初対面。深山さんは、昨晩我が家に泊まっておられたユイさんとお友達だそうだ。世界は狭い。深山さんは、既に「せみbongo」という野村作品を演奏したことがあるとのこと。

「つみき」のリハーサルに立ち合い、自分の曲だけれども再演の度に形を変える曲なので、新鮮な驚きいっぱいで楽しむ。素晴らしき演奏家のお二人。

藤家渓子さん作曲の「きよきなぎさに」という箏曲(演奏は、中川佳代子さん)が、本当に素晴らしい曲で、聞き惚れる。実は、藤家さんのお父さんは数学者で、ぼくは京大の学生時代に藤家先生の複素解析学の授業をとっていた。藤家先生の授業で教わったことは、全て忘れてしまったかもしれないけれども、それでも、藤家先生の授業でノートをとっていた感覚は今も身体に残っている。明日が先生が亡くなられての1周忌なのだそうで、藤家さんのお母さま、弟さんにも紹介されて、ご挨拶させていただく。これも、不思議な繋がり。

今回の演奏曲目に「つみき」を推薦して下さったのは、中川佳代子さん。2003年の墨田トリフォニーでの初演を覚えていて下さり、推薦して下さったとのこと。有り難い。

また1988年生まれの服部伶香さんの「21世紀邦楽プロジェクト」で第1位になった作品も演奏された。服部さんは、子ども時代に遠藤誠津子先生に習っていたらしく、この先生は、ぼくにバルトークを教え、林光ピアノの本をくれた先生であり、こんなところで、遠藤先生のお弟子さんと出会えるなんて、と驚く、と同時に、嬉しい。

9演目のうちの3演目を演奏された箏曲家の麻植美弥子さんは、ぼくが何度か共演したことがある松澤佑紗さんの先生だそうで、また、ここでも繋がりがあり、驚く。なんだか、みんな色々と繋がっている。

台風が近づいている中、それでも100人近くのお客さんが来られたことに、頭が下がる。感謝です。そして、皆さんの演奏が本当に素晴らしかった。日本の伝統音楽が素晴らしいと同時に、それに取り組む作曲家の試み、そして、それを引き受けてやりきる演奏家の真摯な態度。ぼくの大好きな音楽を、思い切り楽しむことができて、幸せこの上ないです。

打ち上げに参加して後、雨も降らずに、余裕で家に帰る。すると、突然、豪雨が降り始め、間一髪だったと家の中で台風の音を聞いて、夜が更けていく。