野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

かずえつこと そういうこと 鳥のようにのように

両国門天ホールでのコンサートでした。沢井一恵先生、竹澤悦子さんとの夢のような時間。このお二人とリハーサル、本番、雑談なども含めて、9時間近い時間を、共に過ごせる貴重な一日でした。コンサートのプログラムは、

第1部
1 野村誠作曲・作詞 「鍵盤ハーモニカ・イントロダクション」(2013)
2 野村誠作曲/木ノ下裕一作詞 「狸囃子」(2015)
3 湯浅譲二作曲/松尾芭蕉作詞 「箏歌・芭蕉五句」(1978)

第2部
4 野村誠作曲 「すってんころりん幻想曲」(2016)
5 野村誠/沢井忠夫作曲 「『鳥のように(1985)』のように」
6 野村誠作曲 「かずえつこと 即興のための50のエテュード」(2017)よりno.2「タイとインドネシア」、no.47「鏡の国のアレア」

コンサートは、超満員で、邦楽関係者、相撲関係者、現代音楽関係者、インドネシア関係者、だじゃれ関係者などの方々がお集りいただき、素敵な集いでありました。

野村誠作曲/木ノ下裕一作詞 「狸囃子」(2015)も、久しぶりに、竹澤さんの独演で聴きました。三味線の曲は、ほとんど書いたことがないので、この曲を書く時は、色々な三味線音楽を勉強しました。30分近い大作で、全部上演するのは、演奏者にとっては大変なことなのですが、聴く方とすると、もう全部一気にやっていただけるのは、喜びでもあります。熱演ありがとうです。また、湯浅譲二作曲「箏歌・芭蕉五句」の演奏は、本当に素晴らしかった。一恵先生の演奏する動作が、双葉山のうっちゃりとそっくりとのこと。箏曲界の最前線を走り続けた一恵先生の奏法は、伝説の力士と同じ身体技法に辿り着いているのか、と感動。

鳥取で作った野村誠作曲「すってんころりん幻想曲」(2016)を、こうして再演できることも喜び。しかも、客席に鳥取に縁のある小山さんや里村さんもいて、そして、蛇谷さん他の鳥取の面々と過ごした時間、過ごした中で生まれたフレーズを、ここで蘇るのが、嬉しい出会いでした。

今日、個人的にチャレンジだったのが、沢井忠夫作曲「鳥のように」(1985)に基づく即興演奏、「鳥のようにのように」でした。しかも、楽屋から沢井一恵先生と竹澤悦ちゃんも出てきて、ピアノのすぐ側の席に座り、客席には数多くの箏曲家がいて、スタッフにも箏曲家がいて、その中で、自分なりの沢井忠夫先生へのオマージュとしての演奏をする。大きな宿題でした。無我夢中でピアノを弾くことができて、忠夫先生の音楽に自分なりにがっぷり四つで取り組ませていただき、本当に貴重なピアノソロをさせていただきました。

そして、野村誠作曲「かずえつこと 即興のための50のエテュード」(2017)より「タイとインドネシア」と「鏡の国のアレア」を、悦ちゃんと一恵先生と共演できたのは、大きな大きな体験でした。お二人と思う存分遊んでいただくと同時に、作品を完成させるとか、演奏を完成させるのではなく、遊びながら、まだまだ未知の箏の可能性を探す時間であり、まだまだ未知の音楽の可能性を夢見る時間となれたこと、それが本当に嬉しかったです。未知の世界がいっぱいあって、その入口をなかなか見つけることはできませんが、それでも、闇雲に模索する中で、時々偶発的に入口を見つける瞬間に出会えます。そうした箏の音楽に魅せられて、今宵の体験は、また次なる冒険への大きな大きな糧になりました。本当に有り難い体験でした。

ありがとう。みなさん。これからも、また、箏の音楽を切り開いていきたい。この20年間、なんだかんだで、ずっと箏の音楽と関わってきた気がします。

1997年 初の箏曲「押亀のエテュード」作曲。日原史絵委嘱。
1998年 竹澤悦子と出会う。尺八、箏、ピアノ、鍵盤ハーモニカ、ワークショップ参加者による「ごんべえさん」作曲。箏、笙、三絃、太棹、打物のための「つん、こいつめ」作曲。
1999年 竹澤悦子と老人ホーム「至誠ホーム」での似顔曲。竹澤悦子
2000年 水谷隆子のための箏曲「りす」作曲。
2002年 箏衛門のための箏アンサンブル「52×51」を作曲。箏アンサンブル「せみbongo」作曲
2003年 十七絃デュオ「つみき」作曲(菊地奈緒子市川慎委嘱)
2005年 箏デュオ「パパとママ」作曲
2006年 尺八、箏、十七絃のための「Japasta」作曲
2010年 尺八、箏、木琴、イギルのための「北斎漫画四重奏」作曲
2011年 「北斎漫画四重奏」小布施公演
2012年 「北斎漫画四重奏」墨田公演
2013年 竹澤悦子とマレーシア公演
2014年 箏を含む1010人のアンサンブルのための「千住の1010人」作曲。
2015年 竹澤悦子ほかとマレーシア公演。三味線弾き語りのための「狸囃子」作曲、箏、ピアノ、アコーディオンのための「六段→交段→空段→穴段の調」作曲。
2016年 箏、ピアノを含む「すってんころりん幻想曲」作曲、箏の練習曲「小鳥の練習曲」作曲。
2017年 地歌越後獅子」を含む(日本センチュリー交響楽団のテーマ)「想家」作曲。即興する箏曲家のための「かずえつこと 即興のための50のエテュード」作曲。地歌越後獅子」に基づく「越後獅子コンチェルト」作曲。
2018年 沢井一恵、竹澤悦子とのコンサート。

門天ホールの黒崎さんと語り合って後、終電近くに千住の仲町の家に戻ると、そこで友政さんと小日山さんの深夜のフォーラムが待ち構えており(山下くんがいなくても)、結局4時まで語り込んで後の就寝。明朝は豊橋へ出発なのに。