野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジョグジャのピアノを触る

 ジョグジャの芸大の大学院のセミナー「音楽と創造1」に行く。今週は、民族音楽バックグラウンドのワヤン・スニン先生。ワヤン氏は、95年に中川真氏の招聘で、島根に演奏に行ったことがあると言っていた。ワヤン先生の授業は、簡単な挨拶と講義の概説をすると、ガジャマダ大学で催しがあるので、と言って、さっさと帰ってしまった。
 ぼくは、講堂のピアノの使用許可をもらっているので、こちらに来て、初めてピアノを触る。ヤマハアップライトピアノ。鍵盤を弾くと、きしきしと、軋む音がする。まるで、グンデルを弾く時のようなノイズ。こんなピアノ初めてだ。調律は、思った程狂っていない。ただし、湿気の多い雨季のインドネシア。鍵盤の反応は悪く、連打などは無理。鍵盤が戻って来ないことも多い。こうした鍵盤の特性でピアノを弾くと、鍵盤の戻りの悪さをカバーできるようなフレーズを、無意識に作って即興をしている自分に気づく。状態の悪いピアノから受けるインスピレーション。
 ピアノを弾いていると、数人の大学院生が寄って来る。スラウェシの民族音楽をやると言うアスリルは、makasarとか、John Celebesと言うが、それが何かは分からないので、今度調べてみようと思う。イチャルは、ジャズピアノをやるらしいが、弾いてみてと言っても恥ずかしがって弾かないで、ぼくのピアノをじっと聞いている。ギタはダンサー。伝統かコンテンポラリーかと聞くと、コンテンポラリーとのこと。どんなダンスを踊るのだろう。音楽の学生が彼女にぼくを説明する時に、日本の作曲家で日本で大学の先生をしている、と説明していた。今、ぼくは大学の先生をしていないが、大学の先生をしていたことがある。インドネシア語には、時制がないから、これは間違いではない。3時間ほど、ピアノを練習した。
 昼は、妻がグンデルの個人レッスンを受けていた。妻が教わった内容を、ノートに書き写し、試しに5線譜にも書き写してみる。そうやって書き写してみて、気づく。驚くことに、8小節のパターンにグンデルのパターンを、3小節の繰り返しを基本につけている。ただし、3小節+3小節+3小節だとずれてしまうので、3小節+3小節+2小節。これは、他の曲にも当てはまるのか、それとも、この曲だけなのだろうか?
 夜は、美術家のアンキ・プルバンドノと会う。彼は、来月にシンガポールでの個展を控えているらしい。偶然入った店で、アンキの友人のミュージシャンと出会う。スカのバンドをやっているらしく、明日、スタジオに遊びに行く約束をした。来週、アンキが共同運営するアートギャラリーMES56の9周年パーティーがあるらしく、遊びに行くことにした。