野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

cafe OTOライブ

ロンドンの実験音楽の作曲家Michael Parsonsのお宅に泊まっております。スクラッチ・オーケストラというイギリス実験音楽の伝説的なグループ(1969-1974)の創始者であり、80年頃にはイギリス初のガムラングループEnglish Gamelan Orchestra(だったかな?)の創設メンバーで、その後もアクティブに活動している。現在78歳だが、最近もフィンランドの合唱グループのために作曲してフィンランドまで行ったり、スイスのBasel Symphoniettaのために作曲したりもしている。マイケルが、Leonardo Music JournalでDavid RothenbergがWhale Musicと称して、クジラに自分の演奏を聴かせているのが載っていて、君のことを思い出したよ、と教えてくれる。マイケルの机にあったTom JohnsonのOther Harmony -beyond tonal and atonalという本は、数学的に調性と無調を含めて説明する理論書で、意外に面白そうだった。来週レコーディングするためのアレンジ作業をしているので、午前中は彼の邪魔をしないように、ぼくは図書館で過ごす。Swiss Cottage Libraryという地元の図書館で、そこに、Charles Ivesの交響曲のスコアがあったりもするし、朝の読書には、ちょうどいい。

午後、やぶくみこさんがマイケルに自分の曲の録音を聴いてもらって後、Cafe OTOに移動。本日のイベントは、Japan Portraitと呼ばれるもの。出演団体4つ。やぶさんは、ガムランのグンデルという楽器をロンドン在住のインドネシア人作曲家のAris Daryonoから借りる。アリスと久しぶりに再会。

定刻より大幅に遅れて始まるのは、いつものことらしい。観客は超満員で立ち見も多い。出演の一人目が、ヴァイオリニストの小町碧さん。細川俊夫さん、湯浅譲二さんのヴィオリン独奏曲を簡単な解説も合わせて、見事に演奏された。二つ目が、野村とやぶ。現代音楽の無伴奏ヴァイオリンの後に、野村による無伴奏の鍵盤ハーモニカで始まり、そのままピアノ独奏へ。その後、やぶさんのグンデル独奏に、ロンドンの人々が聴き惚れて後、ピアノとグンデルでのデュオ。この二つの調律の違う楽器が共存する音楽は、インドネシアでも日本でもイギリスでもない国籍不明のしかし確実にぼくらの音楽として鳴り響き、不思議な音の世界に誘われていく。5本だけ持ってきた瓦の鍵盤も、少しだけ演奏。演奏後は、多くの人々から握手や喜びの言葉をいただき、CDも予想より遥かに売れて、サインもして、飲み物も御馳走になり、好評であったようだ。続いて、竹澤悦子さんと知り合いであるという大阪音大で学んだことがある作曲家のVerity Lane作曲の「Snow」。小鼓の麻生花帆さんと内部奏法のピアニストのデュオ。花帆さんは、小川実加子さんとお知り合いだそうで、世界は狭い。故高田和子さんともご縁のある方だったそうで、高田さんのことを懐かしみました。最後は、Abirdwhaleによる映像と音のパフォーマンス。4演目が全然違うテイストであり、不思議な繋がりの一夜でした。2001年にHayward Galleryでしょうぎ作曲をした時に、出前でしょうぎ作曲に行ったダニエルにも再会したり、モノクローム・サーカスのダンサーだった有吉さんに再会したり、色々ロンドンの方々も見に来て下さり、感激です。また、来なくっちゃ。