野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

9月の初夢

イスラムの方々にとってのお正月。朝からガムランの演奏を聴こうと、パクアラマン宮殿に出向くと、すごい人で、出店がいっぱい出ていて、焼き鳥とか、お菓子とか売っていて、まさに、日本の初詣と同じような感じ。でも、ガムラン演奏は早朝で終わってしまったようで、聞き逃す。

昨日、譜面を送ったし、新年が始まったので、ようやくインドネシアでの生活がスタートしたような気分。こちらに来て、初めて鍵盤ハーモニカを吹く。グンデル(ガムランの楽器)も、自己流で演奏する。そう、自己流。

これまで、ぼくは日本に住みながら、自己流のガムラン作品を作ってきた。4つの主要作品に、「踊れ!ベートーヴェン」(1996)、「せみ」(2000)、「ペペロペロ」(2003)、「桃太郎」(2001~2005)があって、1996年〜2005年までの10年間に集中的に、これらの作品を作った。まさに、自己流で。そして、2008年に、マルガサリと「桃太郎」のインドネシアツアーを行ったのだが、日本で作り込んだ作品がジャワ人に少なからぬインパクトを残したことは確かだと思うのだが、ジャワ人と十分なコラボレートができなかったことも確かだ。

だから、今年1年でぼくがやりたいのは、野村誠の「ポスト桃太郎」プロジェクト。どんな作品を作るかは分からないけど、インドネシアガムランの新作を作る。極端に言えば、インドネシア人からガムランを教わるのではなく、野村誠流のガムランをやってみたいというインドネシア人に、野村流を教えてみたい。伝統を冒涜するつもりもないし、リスペクトはあるけれど、でも、ぼく自身は伝統音楽を学ぶのではなく、野村誠×インドネシア人によるガムラン音楽を、1年かけて、作り上げてみたい。ひょっとしたら、ガムランという楽器にも囚われない自由度のある音楽ができるかもしれない。そうすれば、その音楽は、ガムラン以外の楽器でも演奏できて、でも、その中にはガムランの精神が宿るような、そんな音楽になるかもしれない。

これが、ぼくの初夢。