野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

瓦の音楽がジョグジャと出会った日

インドネシアジョグジャカルタMuseum Tembi Rumah Budayaで、「瓦の音楽」コンサート。いよいよ本番。会場では、美術家のヤヤットさんが、瓦に絵を描いて、それをぶら下げる舞台美術を構成中。さすが、予算をかけずに、魅力的な舞台づくりは、さすがインドネシア人です。A W A J I の5文字もぶら下がっている。逆からみると、J A W A とも読める。

雨天のため客足が心配された。100人来れば満員な会場だが、「瓦の音楽」にどれくらい興味を集めるだろう?インドネシア在住30年の加藤マミさんが来られる。お元気そう。作曲家でLima Gunungを主宰するスタントさんも来る。SENYAWAというバンドでも活躍するWukir Suryadi(彼は、色々な楽器を自作し演奏し、2013年に「原発」をテーマに濃密なコラボレーションをした)がパートナーのグンディスと共に現れる。スボウォさんがイタリアでガムランを教えていた時の学生達がジョグジャに留学中で、4人のイタリア人がやって来る。ガムランの達人のスニョトさん、舞踊家のビモさん、ウッティさんもいる。ジョグジャカルタ現代音楽祭のディレクターで作曲家のMichael Asmaraさん、ジョグジャの芸大で作曲を教えているロイケも来ている。実験的教育のマングナン小学校で音楽を教えるンダルーさんの顔も。気がつくと、客席は200名以上の人で入りきれず、窓を開けて、立ち見で窓の外から見る観客も出始める。

19:30開演だが、インドネシア時間で20:00開演。定刻に始めることは、ほぼないらしい。MCを片言のインドネシア語でやりながら、一曲ずつ進めていく。

1 スレンドロ瓦と隅巴瓦の音楽(野村誠+やぶくみこ)
2 創作瓦の音楽(野村誠+やぶくみこ)
3 ゴデアンの古瓦(野村誠+やぶくみこ+Gardika Gigih Pradipta)
4 ジャティワンギの鍵盤瓦(野村誠+やぶくみこ+Gardika Gigih Pradipta+Welly Hendratmoko)
5 日本瓦舞踊(野村誠+やぶくみこ+Gardika Gigih Pradipta+Welly Hendratmoko+Yohanes Subowo+佐久間新)
6 出会う(ガンサデワ+野村誠+やぶくみこ+Gardika Gigih Pradipta+Welly Hendratmoko+Yohanes Subowo+佐久間新+小日山拓也+伊原秀太郎+ソロのダンサー+渡邊亨+上田謙太郎+会場の人々)

最初の2曲は、日本の瓦を、野村誠とやぶくみこのデュオで聞かせる。大人数での音楽を好む傾向があるインドネシアでは、こうした小編成の音楽は、珍しく響くだろう。日本人二人の瓦の音に耳を澄ます時間。

ギギーと3人での古瓦のセッションの響きで、ジャワの瓦の音色を味わってもらって後、ウェリー君も入ってのカルテット。これは、ジャティワンギ(西ジャワ)の瓦を演奏。ウェリーの演奏する瓦がペンタトニックで音階がクリアなので、野村とギギーは、鍵盤ハーモニカで伴奏する曲。それ以前の3曲と全く違ったテイスト。そして、スボウォさんが入っての5重奏では、ウェリーがグンデル(ガムランの楽器)を演奏。佐久間新さんの踊り。途中から、ギギーもピアノ、そして、ピアノは、野村が入れ替わったりする。前半の最後の見せ場。

休憩後は、メメットの挨拶。なんと、全部が日本語(平出さんに訳してもらったらしい)。「マコトサンハスバラシイ??????デス。ワタシハ????」と延々と続くメメットの挨拶。ぼくが、はてな?という表情をする度、観客は爆笑。途中から、メメットの日本語を、ぼくがインドネシア語訳していく。

そして、メメットのバンド「ガンサデワ」に千住からのイハラさん、コヒヤマさんも加わってのガンサデワの演奏は、急遽ゲストで入ったウェリーの太鼓が素晴らし過ぎて、演奏が引き締まりまくる。知っていたけど、ウェリー凄い。

そして、曲の最後に、ぼくも加わって、まず鍵ハモ。佐久間さんとインドネシアの女性ダンサーのデュオダンスに、コヒヤマさんもフルートで乱入。ぼくも鍵ハモで、絡んでいく。そして、ぼくが瓦を演奏し始めると、どんどんガンサデワの面々も、我らがスタッフも、みんな瓦を演奏。20名ほどで、瓦を演奏。20人で一斉に演奏しても、決して耳に痛くならないグルーヴが出るのが、瓦の凄いところ。屋根にスコールが降るように、瓦が鳴り続ける。やぶさんが、背伸びしながら、ぶらさがっているA W A J I の瓦を叩いている。かき回される空間。気がつくと、ぼくの手にあった瓦を観客の人にも叩いてもらい、ギギーの横に行って、一緒にピアノを弾き、メメットの笛の横に行き、鍵ハモを吹き、11年前に、ニティプラヤンでアナンや佐久間さんのパフォーマンスした時の台詞「I love you so much」が甦ってきて言いたくなり、みんなの愛を噛みしめながら、演奏を続けて、Matur Nuwen(ジャワ語でありがとう)と言って後、曲はコーダに突入して、ウェリーの決めの太鼓で終わるだろうから、最後は瓦を手渡した何人かの観客の人に目で合図して、一緒にフィニッシュ。大歓声と拍手。

また来るよ、ジョグジャ。みんな待っててくれて、ありがとう。取材を受けて、色んな人と記念撮影して、予定のご飯がなくなってしまうハプニングになるくらい打ち上げに残ってくれる人がいて、でも、追加注文、ちゃんと、みんな食べて、おつかれさまーー。ジョグジャ、ありがとう。淡路島ありがとう。ジャティワンギありがとう。ありがとう。ありがとう。

瓦の音楽facebookページ
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