野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

月の光

大井浩明さんのリサイタルのためのピアノ曲「6つの新しいバガテル」作曲。6曲のタイトルは、松下眞一が構想した6つ。まったく何の脈絡もない6曲を、自分に引きつけて作曲中。

昨日から今朝にかけて「アンダルシアに」を書き終える。結構、音数の多い曲になったので、「月の光」は、あっさりと短い曲に。「月の光」を作曲している今日は、満月。不思議なものです。「月の光」と言えば、「お湯の音楽会」で上演した「フロリズム1番」が「月光」というタイトルだったので、これをピアノ曲にする、という考えもあったのですが、7月1日/2日の北九州での小学生との作曲ワークショップで作った曲を、「月の光」にすることは決まっていたので、その線で。4つのクラスで4曲作っていたのですが、4曲混ぜると欲張りなので、1曲だけにしました。

後半の3曲について考え中ですが、「語れや君、そも若き折、何をかなせし」というのは、ヴェルレーヌの詩(永井荷風訳)の中に出てくる一節なので、まずは、今は、この詩を読んでいます。

空は屋根のかなたに
かくも静かにかくも青し。
樹は屋根のかなたに
青き葉をゆする。


打仰ぐ空高く御寺の鐘は
やわらかに鳴る。
打仰ぐ樹の上に鳥は
かなしく歌ふ。


ああ神よ。質朴なる人生は
かしこなりけり。
かの平和なる物のひびきは
街より来る。


君、過ぎし日になにをかなせし。
君今こゝに唯だ嘆く。
語れや、君、そもわかき折
なにをかなせし。