野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

6つの新しいバガテル

大井浩明氏の委嘱で、ピアノ曲を書いています。

大井君は、クセナキスの演奏など、現代音楽のピアノ演奏のスペシャリストとして著名な人ですが、その活動は、本当に多彩です。

もともと、今から20年以上前に、京大の音楽サークルに入会しに行ったら、そこで出会ったのが、大井君で(彼は工学部、ぼくは理学部だった)、大学時代、彼と何度もコンサートを開催したり、色々な現代音楽の譜面を見せてもらったり、夜中に2台ピアノで演奏したり、したものです。

その彼は、数多くの賞を受賞し、スイス、フランスに10年以上暮らして後、昨年ごろ、東京在住になり、それをきっかけに、日本の作曲家のピアノ作品をごそっと紹介する企画を立ち上げ、ぼくもその中に加えてもらった、というわけです。

で、この企画は、大井くんの同世代の日本の作曲家5人と、戦前生まれの日本の作曲家5人をとりあげるという企画で、第1回は、松下眞一と野村誠を取り上げています。

松下眞一という作曲家は、京大の理学部出身の作曲家でして、大阪市立大学の物理学の教授をしながら、現代音楽の作曲家でもあった方だそうです。その松下眞一が、構想していた12のバガテルのうち、6曲は譜面があるのだけど、残りの6曲は、譜面がないのだそうです。作曲しなかったのか、作曲したけれども譜面が消失してしまったのかは、不明ですが、この6曲を、野村に書くように、というのが、大井氏の委嘱でした。

参考に、松下作品の1〜6の譜面を見たいと言うと、いや、松下作品は見ずに、タイトルだけで作曲して欲しい、と大井氏。そして、6つのタイトルが与えられました。

1)フーリエ変換
2)アンダルシアに
3)月の光
4)シャンソン
5)語れや、君、そも若き折り、何をかなせし
6)主よ、主よ、そは現し世なり

で、この6曲のタイトルに、何の必然も感じられないまま、〆切が近づき、作曲に着手。すると、だんだん、自分にとって、意味のあるタイトルになり、


1)「Keyboard Choreography Collection」より「振り子奏法」
2)「野村誠×北斎」より「南の北斎」をスペイン風に 
3)子どもとの作曲
4)「福岡市博物館REMIX」より「Arts Management」
5)「老人ホームREMIX」より「たどたどピアノ組曲」第4曲
6)将棋の棋譜をもとに作曲

という6曲になります。譜面は、ほぼ完成。インドネシアへの飛行機の中で、推敲しようと思います。

世界初演は、9月23日です。
http://www.opus55.jp/index.php?ooi_concert