野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「福岡市美術館」組曲の2日目

昨日と違う10人の参加者で、昨日とほぼ同じスケジュールで、新たに7曲が作られました。やった曲は、以下の通り。

1曲目 靉嘔(1931−) 「絵物語 Ms. and Mr. Rainbow」(1974)
グラデーションになった27色があることから、27音が常に鳴っている曲で、人間、宇宙人、曲線、loveなどのキーワードを解釈した曲になった。

2曲目 レオナール・フジタ(1886−1968) 「仰臥裸婦」(1931)
女性のヌード、猫などが最初に見えてきて、これを楽譜として読むことが難しそうだったが、シーツのしわや、縦のライン、髪の毛や腕の曲線などを、各自が音楽に変換していった。

以上、2曲は全員でやって、以下、5グループに分かれて活動。

3曲目 オットー・ディックス(1891−1961) 「死と復活I(自殺者)」(1922)
テナーリコーダー、鍵ハモ、ギターによるトリオ。こういう題材の絵(エッチング)を子どもが選択するのが意外とも思うし、でも、リコーダーのメロディー、鍵ハモのロングトーン、ギターのコードが、違った相で独立してある。なんとも不穏な複雑な味わいの曲。

4曲目 ジョアン・ミロ(1893−1983) 「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子」(1945)
リコーダーと鍵ハモの軽快でかわいく楽しげなデュオ。二人の女の子が、この絵と隣にある絵とどっちにするか、30分以上、悩んだらしい。最終的にミロの絵を選んだが、その過程では、葛藤がいっぱいあったそうだ。もちろん、ミロの作品がこの美術館のコレクションの目玉であったりするらしいことなどとは関係なく、二つの作品を比較しながら、一点を選ぶ30分のドラマ自体も素敵だと思った。

5曲目 児島善三郎(1893−1962) 「福岡市展望」(1923)
リコーダーと鍵ハモとリード内蔵ポンプによる。ここは、子ども(鍵ハモ/ポンプ)と大人(リコーダー)の二人組。キャベツ畑を鍵盤の点描で、高い木をリコーダーのロングトーンで、海を鍵ハモのグリッサンドで、都会のビルをリコーダーでカクカク演奏、など、風景画の中から4つのセクションができる。彼女の鍵ハモの演奏は、非常にアヴァンギャルドで、切れ味が鋭く、リコーダーの方は、そこに控えめに寄り添うようなコントラストだった。

6曲目 恩地孝四郎(1891−1955) 「ただよへるもの」(1914)
木版の小さな作品。音楽も非常にコンパクトで、リコーダー、スライド笛、ポンプなどで、次々に短い6つの音形でできてくる。1番目の音形が最後の6番目で再現される。


7曲目 黒田重太郎(1887−1970) 「茨の径」(1922)
子どもたちは、どうして渋い絵を選ぶのだろう?これもリコーダーと鍵ハモのデュオなのだが、「福岡市展望」とは全く違って、前衛的な要素はなく、メロディーを交互に行う対位法(1 大きな木→葉、2 小さな木→家)と、ハーモニー(大きな茂み)というクラシカルな小品。リコーダー+鍵ハモで2曲聞いたが、前衛的と古典的な2作品を聞き比べて、それぞれの良さに驚きました。

ということで、二日目終了。3時間以上、また、特に休憩もなく進んでいったのですが、みんな(子どもも大人も)の集中力の高いことに驚く。昨日の7作品とも全然違った味わい。明日がいよいよ最終日。明日は、どうなるのだろう?参加者、スタッフの皆さん、おつかれさまでした。