野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「福岡市美術館組曲」プロジェクト1日目

福岡市文化芸術振興財団企画のワークショップ1日目。1日3時間。定員10名。毎日違う人が来て、3日で30人が来ることになっている。やる内容は、絵を楽譜として解釈して、演奏するワークショップ。今日、7曲作る予定。その7曲は、ワークショップ後、野村がピアノ曲として編曲/作曲/記譜し、9月には福岡市美術館で無料配布される予定。

この財団は、これまで何度も内橋和久さんのワークショップを行っているので、内橋さんのワークショップに参加している即興音楽系の人が何人かは来るだろうと思っていたが、ふたを開けてみると、子どもがすごく多かった。大人が3人(フルート、箏、クラリネット)と子どもが6人(ギター1、リコーダー2、鍵ハモ3)。しかも、1年生が二人もいる。

15:30〜16:00までが、別室で導入の説明などをする。どんな楽器を持ってきたの?とか、今日は何をするのか、など。

16:00〜17:15 続いて、展示室に行って、作品を選んで、さっそく楽譜として読む。

1曲目 多々羅義雄(1894−1968)「房州海岸」(1914)
風景画。この絵を一点やるだけで、一時間を費やした。木の形、屋根の形、山の形など、形から曲を導きだす。 

2曲目 元永定正(1922−)「作品」(1963)
2曲目は、大きな抽象画。10分で大雑把に作る。

この時点で、ワークショップが始まって2時間近くの時間が経過しているのだが、特に休憩も入れずにやっているのに、時間が経てば経つほど、メンバーの集中力が増してくる感じ。小学校1年生が、ぐずるどころか、集中力が途切れないのには、驚いた。

17:15〜18:00 ここで、5グループに分かれて活動。

18:00〜18:30 グループごとに発表。

3曲目は、菊畑茂久馬(1935−) 「ルーレットNo.1」(1964)
饒舌な作品で、絵で描かれている上に、そこに色々なオブジェが貼付けてある。要素の多い作品だ。クラリネット+パーカッションの曲になったのだが、非常に饒舌な曲になり、本日の中で最も長い曲になった。

4曲目は、ジョゼフ・アルバース(1888−1976) 「正方形に捧ぐ"森の静寂”」
ギターとリコーダーの男の子二人グループ。ミニマルな絵画にミニマルに挑み、3曲目と好対照なくらい短くシンプル。

5曲目は、作者不詳「泰西風俗図屏風」(桃山時代
重要文化財は、リコーダーと鍵ハモの女の子二人グループ。絵からは想像もつかないくらいのシンプルな曲になる。

6曲目は、田淵安一(1921−)「死んだ花の思い出のために」(1967)
箏と鍵ハモのデュオで、色鮮やかなカラフルな絵画の中にある点の数や、線の本数なども緻密にカウントする一年生が仕切って曲が生まれてきていた。複雑な絵を緻密に曲にしている。

7曲目は、荒川修作(1936−) 「偶然の墓碑」(1974−76)
放射線状に引かれた幾何学的な直線が、フルートと鍵ハモで、ストイックに音楽になっていて、非常に美しい。

以上の5曲は、ぱっと一度演奏されても、一体、何を見てどう演奏しているのか、さっぱり分からない。ただ、単なるデタラメではなく、確固とした裏付けがあることは、その堂々とした自信のある演奏の様子に表れている。それで、説明してもらうと、なるほどと思うし、絵が違って見えてくる。面白い。

18:30〜19:00ごろ

あとかたづけ、アンケート記入などして、徐々に解散。

今日生まれた7曲、とてもピアノ曲になるところが想像できないので、ぼくにとっては大きな宿題です。明日,明後日も楽しみだ。