野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

福岡市美術館3日目(楽日)

福岡市美術館でのコレコネ組曲ワークショップの3日目。美術作品を楽譜として解読することで、1日目に7曲、2日目に7曲が生まれた。本日も7曲作りました。題材になったのは、以下の通り。


1曲目 片山雅史(1955−) 「皮膜2004ー蜜色の奥底に」(2003)
一日目のワークショップでは、箏、クラリネット、フルート、ギターなど、いわゆる楽器が活躍した。昨日のワークショップでは、そういう楽器は登場せず、リコーダーとか鍵盤ハーモニカが大活躍した。ところが、今日は、鍵盤ハーモニカも姿を消し、手作り太鼓、たわし、アサラトなど、非常にシンプルな音の世界。昨日がメロディーだとすれば、今日はノイズ系、音響系、微音系。その微音の良さを堪能できたのが、この曲。微弱な音が空間を埋め尽くしできあがるテクスチャーが美しい。

2曲目 マリノ・マリーニ(1901−1980) 騎手(1952)
ついに、ブロンズの彫刻作品に取り組めた。絵画を楽譜として見る時は、みんなで一方向から作品を鑑賞するが、彫刻の場合、どこからその彫刻を見るかで、違った楽譜に見えてくる。だから、各自が自分の正面を決める。必然的に、演奏者が空間的に配置されることになった。

そして、5つのグループが、以下の5曲に取り組んだ。

3曲目 狩野探幽(1602−1674) 「獺図」(江戸時代)
草間彌生も、ウォーホールも、ダリも、大竹伸郎も、様々な現代アートの大きな作品がある部屋なのに、地味で小さくて渋い作品が選ばれるところが、意外性がある。演奏は、カワウソの足音、鳴き声、爪の音などを題材にしているが、終始一貫して、大きな変化はなく、執拗に繊細な音を浴びせ続ける曲。この曲を聞きながら、この絵を見ているのが面白かった。

4曲目 春日社寺曼荼羅図(鎌倉時代
曼荼羅というのは、その中に色んなものが描かれているので、音楽も複雑な構造の曲になる。これまた、メロディーなどはなく、ただただ音がある。曼荼羅が楽譜に見えて来た。

5曲目 村上勝(1947−) 赤い羽状(1992)
本日、二つ目の立体作品。アサラトと、リード内蔵ポンプの2人で、ほぼ成立する曲(冒頭に一瞬スライド笛も登場したが)。それぞれが、モールス信号のリズムのように、リズムを乱射していくようなリズミックな曲。もちろん、拍子とかではない、独特の無拍節のリズム。

6曲目 伝・辺文進 「百鳥図」(明時代)
寡黙な男の子2人によるリコーダーのデュオ。これが、またまた渋い。リコーダーも尺八のようになったり、鼓のようになったり、絵は中国の絵だが、音楽のアプローチには、和風な感じが漂う。

7曲目 日光菩薩立像(江戸時代)
3日間の最後を飾る曲は、もうこれしかない、という仏像。これを楽譜に見立てると、どんな音楽になるのか、と思うが、見事に楽譜として解読。いきなり曲の初めは、おへその穴から出る音から始まるし、最後には、仏像がのっている台を表すし。リード内蔵ポンプ、口琴カスタネット、そもそも楽器編成も渋い。


ということで、福岡での3daysを終えて、21曲をピアノ曲にすべく、東京に戻ってきました。スタッフ皆さん、参加者の皆さん、本当にお疲れさまでした。いやぁー、本当にいい勉強させていただきました。