野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本音楽即興学会が設立

日本音楽即興学会が設立ということで、神戸まで日帰り旅行に行ってきました。

朝寝坊で遅刻しましたが、音楽療法研究家である沼田里衣さんの「知的障害者と音楽家による即興演奏ー『音遊びの会』の例」、作曲家の寺内大輔くんの「頭の中での即興演奏」、イースロンドン大学で即興演奏を教えているユミ・ハラ・コークウェルさんによる「英国の大学における即興音楽教育」という3つの発表があり、ぼくは、3番目の発表の頃に、ようやく神戸大にたどりついた。

到着すると、ジャスミン茶のペットボトルを手渡された。The Japanese Association for the Study of Musical IMprovisationで、略称JASMIMで、ジャスミンティーを飲みながら即興について研究する会なのです。

その後、パフォーマンスの時間が設けられていて、「会場に来られた会員による演奏」ということで、希望者が一人一分ずつ即興演奏をする。15人以上の人がソロをやり、ぼくもせっかくなので、ピアノを弾きました。

で、突如、ここにいる全員(40人くらい)で、説明も込みで10分くらいでできることを何かやってくれ、と頼まれたので、ぼくと寺内大輔くんがやることに。そう言えば、若尾裕さん(神戸大教授、作曲家)が、ぼくはピンチヒッターだから、やらなくていいです、と言っていたけど、ひょっとしたら、当初、寺内君と野村にやってもらおうと計画していたのかもしれない。でも、ぼくが現れないから、寺内くんと若尾さんでやる、ということになった。でも、遅刻したけど現れたから、若尾さんはやらずに、寺内君とぼくがやった、そういう流れだったのかもしれない。ま、遅刻したので、状況は全く分かりませんが、音楽即興学会だから、まあ、あんまり事前に決まっていなくて、その場で即興的に決まっていくのもいいのでしょう。

寺内君は、内と外という曲。みんなが自分の心の中で即興演奏をしていて、音は出さない。でも、10分間くらいの間に、一度くらい、自分の中で鳴っている音を声に(一瞬だけ)出していく、というルールのもの。これは、音はしないのに、沈黙でも静寂でもない。物理的な音は皆無なのに、非常に音数の多い音楽になる。でも、これを録音して聴くと、かなり音数の少ない音楽になる。面白い体験でした。

ぼくは、「手拍子のロンド」をやってみた。なぜかというと、楽器を持ってきている人が多かったので、楽器を使ったことをやりたかった。それで、「楽器のロンド」をやってみようと思ったので、その導入として、「手拍子のロンド」。「手拍子のロンド」については、野村誠片岡祐介「音楽ってどうやるの」(あおぞら音楽社)に書いてあります。

また、今日の「手拍子のロンド」は特別だった。楽器の場面のテクスチャも独特だったが、声の場面では、声の即興をする専門家が何人もいるので、ロングトーンクラスターみたいなものと、超絶のソロみたいなものが面白く共存していたり、影響し合ったり。

「楽器のロンド」は会員の皆さんの意見をもとに、座って楽器→立って静寂→立ったまま楽器→座って口の音(声は除く)→座って楽器
というのをやってみた。やってみて思ったのは、次回やる時は。

座って楽器→立って静寂→歩いて楽器→立ち止まって静寂→座って楽器→立って静寂

というような流れがあると面白いかも、と思った。
交流会などでも、いろいろお話できてよかった。

若尾さん曰く、世界的に探しても音楽の即興に関する学会は、見当たらなかったようで、これは世界に先駆けた音楽の即興を研究する学会になるということです。ということで、この会が、どんな研究をして、どんな発信をしていけるのか、楽しみなところで、

基本的に、学者さんだけで構成される学会ではないので、即興について研究するという研究の方法自体も発明していったり、学会というもののあり方自体も発明していけるようなそんな会になればいいな、と入会した一会員としては思います。

http://jasmim.net/