野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

タイと日本のリモート音楽交流/低音の振動が好き/ウェブサイトのリニューアル

タイの音大の大学生、大学院生約10名と、日本のだじゃ研(=だじゃれ音楽研究会)約10名でのオンライン交流。Princess Galyani Vadhana音楽院の元副学長で作曲家のアノタイが企画するタイのシンポジウムPGVIS 2021の一環として開催。今まで何度もタイには行ったし、タイの大学でレクチャーやワークショップも何度もしたことがある。でも、その時は、ぼく一人が日本から行って、タイの人たちと交流する。でも、今回は、ぼくだけではなく、半分がタイで半分が日本。みんな自宅から参加しているのに、2つの国の人々が国境を超えて、いきなり音楽をしてしまう。しかも、通常の「音楽」ではなく、どこにもないような音の実験をして交流する。こんなことができる時代になったのだなぁ、とつくづく思う。

 

最初に、みんなで楽器を鳴らした。自由にセッション。とても良いカオス。続いて、タイでテルミンを演奏している人がいて、日本にオタマトーンを演奏している人がいたので、テルミンオタマトーンの二人で演奏してもらった。電子音だけなので、途中で胡弓のような音に聞こえて不思議だ。続いて、ギターやウクレレをやっていた人だけで演奏。フリー即興で色々なパッセージが複雑に重なったりずれたりして面白い。続いて、日本語とタイ語の会話。インドネシア語も混ざる。続いて、ニューミュージック。タイ語で指は「ニュー」なので、指を使った新しい音楽をやる。でも、今日は「ニュー」アイディアを募集。指パッチンで賑やかなのから、爪をカチャカチャやったり、指で本をパタパタ鳴らしたり。最後は、タイの学生が準備してくれた《Music for (H)ear》。耳を触って音を出したりするのは、寺内大輔の《耳の音楽》を思い出すが、寺内作品は演奏者の即興に任されているところが、《Music for (H)ear》では、触り方などがパワポのスライドで細かく説明され、最初は手で耳を触り、途中は指で耳を触り、最後にはコップを使って耳を触る。演奏が終わった時には、耳の様々なツボが刺激されて、体調がよくなった気がした。

 

タイとの交流は、

8月25日のシンポジウム
9月12日には、アジアだじゃれ音Line音楽祭

aaa-senju.com

と続いていく。

 

コントラバスの新曲を書いている。書いているというよりは、新曲のためのスケッチをし続けている。「ことばとコントラバス」というお題で作曲なのだが、コントラバスのためのスケッチを続けて、言葉が出てくるまで続けようと思って続けている。まだ言葉は生まれてこないので、コントラバスのスケッチが続いている。委嘱者の近藤聖也さんの演奏音源や動画などを参照している。コントラバスは音域が広い楽器なので、かなり低い音から高い音まで出る。コントラバスの様々な技巧や音域を駆使した作品を何曲も聴いた。そして、音が振動として伝わる低音域が、ぼくにとってのコントラバスの特色だと思い、全曲低音域だけを使って作曲できないか、と思って作曲を始めたら、低い音の連続が楽しい。とことん低い音だけで、やれるだけやってみようと思う。そこに、バリトンの歌声や、ビオラダガンバがトッピングされるような音楽。あとは、言葉が生まれてきてくれるまで、作曲を続けよう。

 

里村さんが野村誠ウェブサイトのリニューアル作業をしてくれている。ぼくの仕事が広範囲に渡っているので、うまく整理して見やすいサイトにするのが、なかなか難しい。できるだけシンプルな作りにして、ディープなところまで掘り下げたい人は掘り下げられる、みたいなサイトにしたい。

 

makotonomura.net