野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

 Ship (Broom) 女たちは ききわけられる アトリウム

昨日に続いて、ACACにて鍵ハモのワークショップ。今日は、作った曲を録音して聴いてみました。新作が4曲できました。できた作品には、本の開いたところにあった単語でタイトルをつけた。以下、できた作品とその解説。

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1 Ship (Broom) (2008)

3つのグループから成る。
グループ1は、反復するオスティナートを演奏し、繰り返しながら、だんだんゆっくりになって止まる。オルゴールが止まるように。オスティナートは、以下の方法で、本を開いて決定する。
グループ2は、毎回、音域が変化するグリッサンドを演奏する。メンバー全員で音を出すタイミングは合わせて。アイコンタクトだけで、同時に演奏する。これを7回繰り返したら、最高音をロングトーンでのばす。グループ1が遅くなってきたら、こちらの演奏も遅くなる。
グループ3は、グループ2のロングトーンが聞こえたら、高音域を平手で押さえて、トーンクラスターのロングトーンフォルティッシモで演奏した後、ピアニッシモで単音を短く演奏する。

(オスティナートの作り方)
まず、本を開いて、ページ数の1の位の数字(0〜9)で、0の場合は10音、それ以外の場合は出た数だけの音から成るオスティナートを作る。オスティナートの作り方も、本を開いてつくる。まず、本を開いた時に、本が逆さまになっていたら、開いたページの1の位の数字だけ下がる。通常の向きならば、1の位の数字だけ上がる。例えば、最初に通常の向きで6が出たら、ドの音から半音階で6音あがって、#ファになる。以下、同様に続けて、オスティナートをつくる。

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2 女たちは

全員が横一列に並ぶ。各自が、好きなタイミングで、好きなスピードで、同心円の円弧を描くように歩く。一息の間、単音を一音のばす。半円(180度)歩き終えたら、終了する。また、途中でやめてしまいたくなったら、途中で演奏をやめ、その場で立ち止まる。

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3 ききわけられる

4つのグループがそれぞれ違ったパルスを演奏し続ける

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4 アトリウム

各自が定められた数字により、一つの鍵盤を担当する。定められた数字により、歩く方角を決定する(時計の12時に合わせて)。定められた数字の回数だけ呼吸するまでは、その場で演奏し、それ以降は、まっすぐ進みながら演奏。壁(または境界線)にきたら、光が反射するようにはねかえって進み続ける。常に、決められた鍵盤の音をロングトーンで演奏する。誰かと遭遇したら、じゃんけんをして、負けた場合は、勝った人の音にチェンジする。これをやり続ける。

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今回は藤本さん、小杉さんの作品からアイディアを得たので、ずいぶん、偶然性、ジョン・ケージ的な発想が多くなったのが、特徴でした。

「Ship(Broom)」は、最後にどんどんゆっくりになってくると、いつ曲が終わるのか、次の音は発せられるのかを、集中して聴けたところが、とても面白かったです。

「女たちは」は、展示会場(Gallery A)でやったので、小杉さんの作品の音と重なりあって、面白かったです。こちらの展示室には、藤本さんは「Silent」と名付けて、音を発しない作品のみを展示しています。逆に、Gallery Bでは、小杉さんは音を発しない作品を展示しているので、二人が同時に音を発している空間はないわけです。だから、小杉作品に、これらの音が重なり合ったのは、面白かったです。

「ききわけられる」は、小杉作品の「Pulses」という作品の4つの異なるパルスを聴いて、それを再現しようとする試みでした。この曲に対して、偶然ついたタイトルが「ききわけられる」だったのは、びっくり。

「アトリウム」は、ACACの中庭にあたるようなところで演奏したので、まさに「アトリウム」で、これも偶然。びっくりです。
「アトリウム」は、最終的には、一音になるかもしれないし、ならないかもしれないところが面白いです。今日は10分ほど続けたら、90%の人がAになったのですが、2、3人F#がいて、1人くらいFがいて、最後まで一音になりませんでした。もう少し続ければ、完全に一音になったのか。絶滅しそうで絶滅しない音が面白かったです。

ちなみに、英語のタイトルは、「アトリウム」がAtoriumはいいとして、「女たちは」の英語訳は、Ladies are...なのか、Women are...なのか、どっちかなぁ。それと、「ききわけられる」は、Possible to distinguish by hearingが直訳かなぁ。また、ネイティブの人に、なんていったらいいか、聴いてみます。

ということで、青森での2日間のワークショップは終了しました。この4作品を、今後もどこかで演奏していきたいと思っています。ということで、新曲がいっぱいできたなぁ。

いずれ、鍵盤ハーモニカのための曲集として、まとめたいなぁ。