野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

60歳以上の女性たちの演劇

60歳以上の女性たちを集めての演劇を、福岡で見ました。倉品淳子さんの演出です。公演は、個人宅のマンションのリビングルームで行われました。当然、近所迷惑もあるだろうし、60歳以上で至近距離だし、声もそんなに大きくないんだろうと思っていたら、デカイです。大声です。予想外。

公演は、もっと彼女たちに楽にできることをやるんだと思ってました。長年、主婦や母親として過ごしたことで培われた身体性を生かして、台所を舞台に演劇が繰り広げられる。そして、一般の劇場では届かない小さな声も、その状況では力を持つ、そんな予想を持って見に行った。

行ってみたら全然違った。それは、60歳以上のメンバーから成る新人たちの公演でした。みんな正攻法に演劇をやっていたのです。倉品さんは、別に、60歳以上の女性の特質を生かして、それなりに見せてしまうこともできたと思うのですが、その路線を途中で捨てたのだと思いました。それは、俳優を素材として使う感覚を捨ててしまい、俳優を本気で育成しようと思ったのだと思います。

つまり、彼女は新人育成に取り組む覚悟を決めてしまったのです。新人育成って、若者に対してすると一般には思われていることで、この60代以上の女性は、これまで母親として、子どもの育成に力を注いできたと思われます。この60代以上の女性の未来に投資するための新人育成。あ、なんてことだろう。新しい劇団が始まってしまったのだなぁ。

打ち上げに参加しました。だいたい、60歳以上と言うのですが、ああ、ぼくが以前教えていた女子大の女子大生みたいだ。女子大生よりエネルギーがあるかもしれない。大勢のおばさま方のエネルギーに囲まれての打ち上げ自体も、初体験でした。

みなさんお疲れ様でした。