野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アンコールワット

アナンのスケジュールは、朝寝坊のぼくにはつらい。
いきなり早起きさせられて、不思議なひげのおじさん夫婦と朝食。
この人は、モンコルさんで、カンボジアの内戦やらで失われた伝統音楽や伝統楽器の復興・復元・再生に力を注いでいる人。戦争で楽器も家族も失って、そこから、今までやってきた人。アナンもすごく尊敬していて、彼からカンボジアの音楽について、いっぱい教わったらしい。かつては、プノンペンの芸術学校で教えていたり、文化庁の仕事もしていたらしいが、今は、シェムリアップ郊外の村に住んで、子どもたちなど若い音楽家の育成をしている。今日は、近くのお寺の復元された伝統楽器の稽古場に足を運ぶ。そこで、カンボジアオーボエの(チャルメラみたいなやつ)70歳くらいの先生が、すごい音で吹き鳴らしたあと、すぐに息が大変、疲れた、と休むさまもよかった。アナンは、カンボジアの音楽も相当知っていて、一緒に演奏できている。すごい。そして、ぼくは鍵ハモで即興をしたら、外にいた犬や七面鳥が騒ぎ出して、動物との音楽会になった。七面鳥は鍵ハモが好きかもしれない。

アンコールワットでは、演奏する気にならなかったが、アンコールトムのバイオンという遺跡に行ったら、お掃除しているおばちゃん達いっぱい。アナンが、コンニチハ、マイネームイズ佐久間、と冗談を言っていて、来れなかった佐久間くんのことを思い出す。ぼくが鍵ハモを吹き始めたら、アナンは踊る。アナンだけど、佐久間らしい。でも、テイストはアナン。おばちゃんに受けまくる。やぶちゃんと葉っぱを踏み鳴らしたり、石を踏み鳴らしたり、足での音楽もある。ペタペタと音がすると思ったら、土をならす作業をしている人たち。即席リズムセッションに笑顔、でも、遠くのガイドさんは不機嫌になった。バイオンで、バイオンという名前のミネラルウォーターのペットボトルがいい音をさせた。

バイオンという名前は、尾引さんも喜ぶだろうし、あいのてさんでも使えそうだし、このペットボトルは日本に持ち帰ろう。

その後、さらに、さびれた遺跡タ・プローム。この森には、聴いたこともない高音で細かいトレモロを演奏するセミが鳴いている。この音はすごい。最初、電子音かと思った。木の根元で、木に抱かれるようにして、鍵ハモ即興した。

その後、山登りして、プノン・バケンという遺跡に。ここから四方が眺められて、夕日も眺められるし、夕日を見てカメラを持った観光客の大群も眺められる。アナンは写真を撮る観光客の写真を撮り、幸弘さんは夕日の写真を撮っていた。ボパリの友人のプノンペンのヴァイオリン奏者と西洋音楽の男声歌手と偶然会う。歌手くんは広島のエリザベーと大学に勉強に行ったりもしたそうです。

夜空にはカノープスも輝いていた。