野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

さいたま子ども劇場ワークショップ2日目

ワークショップの2日目。ホワイトボードに落書きをしている子どもが間違って油性マジックでかいて、消えなくなりました。それを、慌ててお母さんたちが、消しゴムで消せば消える、といって消しています。子どもの尻拭いをお母さんがするのはどうか、と思ったので、子どもたちに消してもらいました。

もちろん、落書きをした子どもに悪気はないでしょうし、まさか、消えなくなるとは思っていなかったでしょう。でも、消えなくなったのは事実ですし、やっぱり、それは自分で消すべきだと、思うのです。

ということで、開始が少し遅れて、最初にザウルスにハープの演奏をしてもらいました。そして、その後に、もう一つ演奏を聴いてもらおうと思い、「即興ミュージカル」を聴いてもらうことにしました。というのは、今回、大人からのリクエストで是非ミュージカルを作って欲しい、と要望がありました。しかし、子どもたちは、別にミュージカルがやりたくて集まった感じでもない。というか、そもそも、ミュージカルが何かも知らないから、イメージできない。そこで、ぼくは君たちとこんなことをやってみたい、という例を示して、それに子どもが興味を示すかどうかで、今日・明日の方向性を確認しようと思いました。

で、即興ミュージカルを始めたところ、ザウルスが劇を始めて、なかなか歌を歌わない、楽器を演奏しないのです。そのうち、ザウルスは子どもを追い掛け回して、追いかけっこになり、混沌。それでも、柔軟な子どもたちは、キビ団子になったり、犬になったりして、即興芝居をしていました。

ということで、ミュージカルをやりたい、というコンセプトを伝えることはできませんで、なぜかみんなで劇遊びをしてしまったわけです。音楽の魅力について、自分の全身全霊で演奏して伝えるチャンスだったのに、音楽ではなく、劇をしてしまった。でも、劇を楽しんだ子もいたようで、「もう一回やりたい」という声をあげる子どもも出てきて、お話をつくろうという声もあがりました。つくりたくない、という声もあがりました。ぼくは、とにかく音楽がやりたい、と思いました。ザウルスも音楽がやりたかったのだそうですが、なぜか、やりたくもない追いかけっこや劇をしてしまったそうです。わんぱく君たちに囲まれると、そういう磁場に引きずり込まれることもあるのかもしれません。

それで、お話を作ることにしたところ、「顔が100メートル、体が1ミリの男の子」という設定で、お話が始まりました。ここで、「ぼくの顔は100メートル、ぼくの体1ミリ」という歌詞の歌を作って、みんなに歌ってもらい、振りをつけて踊りました。

その後、話の展開に困りましたが、体のバランスが悪いので、すぐ転んでしまうから、お米をいっぱい食べたら、太ってしまって、顔が1ミリで、体が100メートルになったので、まあ、これでいいことにしましょう。

最後に、昨日、女の子が「男の子の意見ばかりで歌ができたから、女の子だけで歌がつくりたい」と言っていたので、女の子だけで歌を作る時間を設け、別室でザウルスと歌作り。

ぼくの方は、男の子たちと歌作り。ぼくが歌を作ろうと言うと、「そんなのつまらんから、鬼ごっこにしよう」と答えが返ってきました。ぼくは、「鬼ごっこは、ぼくがいないときでもできるから、ぼくがいない時にやって。ぼくは、音楽をしたいからここに来たし、音楽をするためにここに来た。」というような答えをしました。それでも、歌なんて「やだ、きもい」と言う子どももいました。「やだ、きもい」という意見も、彼の真実の声なのでしょうから、それを無視するなら、子どもたちだって、ぼくの「音楽がしたい」という声も無視してしまうでしょう。ぼくは、ぼくの音楽がしたい、という要求を通す代わりに、彼らの意見にも耳を貸していこうと思いました。そして、「やだ、きもい」と歌ったのです。

すると、そういうことかと、子どもたちは、次々に言葉を出してきました。それは、こんな歌詞になりました。

うぜーんだよ、やだ、きもい
みんなのうた、やだ
ベトナムのへや
じしん かみなり、かじ、おやじ
じしん かんちょう かじ おやじ
おら〜 うまれて 5ねん 5ねん
しね おまえは ブタバカだ

これを、ピアノ伴奏つきで歌いました。中途半端な歌ではいけないので、思いっきりキャラクターを作った声で、力強く歌ってみました。すると、子どもたちは、大笑いで、この歌を一緒に歌い始めました。2番も作ろう、と作詞を始めました。2番は、1番ほど歌詞が歌とマッチしていないし、言葉も理屈っぽくなっているので、自然消滅するかもしれませんが、こんな感じです。

ばか〜なんだよ、だまってろ
じさつしろ やだ
おまえはくさいんだ〜

まで、できたところで、女の子の歌ができたので、お互いの歌を発表し合いました。女の子はかわいい歌を作っていました。男の子の歌を聞かせると、女の子が嫌悪感を示しました。植物なんかにも「死ね」とか、そういう言葉を聞かせると成長が悪くなる、よくないんだ、という女の子もいました。ぼく60回くらい「死ね」って言われてるけど、言い返してるよ、という男の子もいました。

ぼくは、この歌はいい歌だと思う、歌の世界で、舞台の世界で、日常に言えないことも表現できることがある、とか、いろいろ自分の考えを伝えました。多分、納得はしなかったと思いますが、こういう考えの大人がいるんだ、ということは、伝えてみました。

何はともあれ、1日目に1曲、2日目に3曲の歌ができました。明日のワークショップで、さらにすすめて、最後には、発表をします。どんなミュージカルになるのでしょうか?