野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

さいたま子ども劇場と水谷隆子ちゃん

与野本町にワークショップに行きました。1年生〜3年生の予定が、4,5年生も希望があって、1〜5年生が約25人。そのうち1年生が10人、男の子が20人近くという人数構成です。音楽ワークショップというと、女の子の比率が多いのです。いずみホールの「鍵ハモで作曲」では男の子が少数、一番男の子が多かった「ずっこけ音楽をつくろう」でちょうど半々でした。

まず、今日の子どもたちは、野次るのがうまい。これは、発達心理の服部敬子さんが言っていた5歳児の挨拶というやつです。5歳児と対面する時は、「名前は?はっとり?じゃあ、はっとりはなげブー」みたいなのは、歓迎の意味らしいのです。小学生でもそうなんですね。今度、服部さんに聞いてみよう。

今日は楽器をいっぱい運ぶために、鍵ハモを持ってこれませんでした。そこで、自己紹介にピアノを弾いたのですが、主催者からのリクエストで、ぼくの子ども時代の「タヌキとキツネ」を演奏しました。すると、どうして「タヌキとキツネ」というタイトルになったか、と質問されました。子どもの頃のことだから、忘れちゃった、大人は楽しいことも悲しいこともいっぱいあるから、いっぱい忘れちゃうんだよ、と答えました。すると、「忘れないように、ビデオカメラにとればいいじゃん」と答えが返ってきました。いや、正確にはビデオカメラを言い間違えて、「ひげおカメラにとれば」と返ってきたのです。

そこで、アシスタントのザウルスさんに「ひげおカメラ」で即興で歌ってもらいました。それが引き金になって、

びみょうカメラ、おならカメラ、はなぢカメラ、いっぱいとれるカメラ、ひげおカメラ、メカカメラ、ゆうたいりだつカメラ、しょうたろうカメラ、ガメラ、くちおカメラ、バカメラ、あつのりカメラ、れいカメラ、へんてこカメラ、ゴーストカメラ、でんでんカメラ、ザウルスカメラ、蚊メラ

という歌詞ができました。最後のカメラのカを「蚊」にしたのは、飛び入りの5年生の工夫です。蚊のところだけ、蚊が飛ぶような音で伸ばして、音色も変える工夫があります。で、シラソの3音しか使わないシンプルなメロディーになりました。シンプルですが、意外にいい。

これらの歌詞は、男の子が次々に連鎖的に発言して出てきたので、女の子の意見が投影されていない、と女の子の主張が出てきました。そこで、女の子だけ集まって歌を作ろうということになりましたが、今日は少し言葉が出たところまででした。この続きは、明日やりましょう。

その後、楽器をみんなに触ってもらいました(トランペット、ミニアコーディオン、様々なパーカッション、お土産のミニバリガムラン、様々な笛や玩具、いろいろです)。みんな好き好きに楽器を触って鳴らしているので、さっきのカメラの曲をピアノで弾いていたら、子どもたちは入れ替わり立ち代り、ぼくの傍に来て、自分の楽器の演奏を聞かせにくるのです。全部、ぼくが持ってきた楽器だからぼくは知っているのですが、わざわざ聞かせに来てくれるのです。そして、ぼくのピアノに合わせて、演奏するのですが、思った以上にリズム感がいいです。

そして、アメリカ在住の箏(こと)演奏家の水谷隆子さんが見学に来たので、箏つきでカメラの曲をやってみました(いやぁ、お久しぶりです)。途中で、みんなで楽器をしている時に、ピアノの伴奏を抜いたり、入れたりしたのですが、子どもたち聴いていないかと思ったら、とてもよく聞いていて、合図がないのに、ちゃんと合わせてくる。

ワークショップが終わった後も、結構長い時間、子どもたちは楽器をやっていました。

それから、なぜか「相撲」の挑戦を受けました。現代の子どもが相撲をして遊ぶとは思わなかったので、相撲をしました。日本の古い文化は色々すたれていくのか、と思っていたら、相変わらず、現代の子どもが相撲をして遊んでいる。なくならないんだ、と思いました。お箏という楽器も、お相撲も、現代に生きていて、未来につながっていくのだ、そう思えて、ちょっと得した気分になりました。

明日は、鍵ハモを持って行こう。そして、ザウルスにはハープを持ってきてもらおう。お箏がハープになるのもいいなぁ。