野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

地球がぶっこわれる、人間ヨーヨー(熱帯音楽祭ワークショップ)

今日は、大阪の豊崎東小学校にて、「子ども熱帯音楽祭」に向けたワークショップ第2回目(第1回目は、ジャワ舞踊家の佐久間新さんによる)。企画当初は、「子ども創造音楽祭」だったのだけど、「創造性」などという概念よりも、もうちょっとイメージを明確に、と話し合っているうちに出てきたのが、「熱帯音楽」。ここで言う「熱帯音楽」の下敷きになっているのが、インドネシアでの数々の即興セッション、インドネシアでお金がなくて楽器が変えない小学校が、ペットボトルなどでリズムアンサンブルをしている光景。こうしたところを起点として、「熱帯音楽」とは何かを考えていくことも、ワークショップになっていく。そんな問いを持って、小学校に出かける。コーディネートは、大阪市大都市研究プラザ講師の雨森信さん。

低学年のグループは、1年生と2年生で合わせて約10人。「熱帯って分かる?」と聞くと、意味は分からないらしく、「ねっとう?」という言葉を発した子ども。それで、熱帯とは、一年中暑いところで、そこでは、冬がない。インドネシアは熱帯で、そこの音楽祭が面白かったから、大阪で熱帯音楽祭をすることになったんだ、と説明。そして、ぼくはノムラマコトという作曲家だ、と説明して、鍵盤ハーモニカの演奏を聴いてもらう。

演奏を聴きながら、途中、ちょっとしたニュアンスの変化でゲラゲラ笑う子どもたち。そして、一人が突然、ぼくの演奏を聴きながら、何かを言った。よく聞き取れなかったので、ぼくは「えっ?地球がうんこ?」と聞き返して、鍵ハモを吹く。すると、子どもは、「地球がぶっこわれるーー」。ぼくは、続けて「地球がぶっこわれるーー」と反復。再度、「地球がぶっこわれるーー」と大合唱。すると、「人間ヨーヨー」と子ども達。

そこで、ぼくは、

ちきゅうがぶっこわれるー
にんげんヨーヨー

とホワイトボードに書く。すると、子どもたちは、その続きの歌詞を作り始めた。

ちきゅうがぶっこわれるー
にんげんヨーヨー
ちきゅうがたいように
おしっこすーるー
たいようがおこーるー
ちきゅうがないたー
たいようがこまる

という歌詞の歌があっと言う間にできあがってしまう。まさか、低学年の子どもたちから、こんな歌詞が出るとは、想定外。別にエコロジーをテーマに作詞しましょう、とか言ったわけでもないし。でも、この歌詞、脱原発ソングでも、CO2削減ソングでもあり得る歌詞であり、心底驚いた。しかも、ぼくは歌詞の選択もしていなくって、子どもが言った言葉が全部入っている。子どもたちが議論したのは、唯一、「たいようがおこーるー」にするか、「たいようおこーるー」とするか、助詞の「が」を入れるか入れないか、だけ。また、振付を考える子どももあらわれる。そして、こんな歌を完成させた子ども達は、次のことをしないと飽きちゃうよと主張すべく、ハイテンションに走り回り、ホワイトボードに太陽の絵を描き、ぼくの膝を枕にして、横になり、非常に自由にくつろぎ始める。ワークショップ開始30分後のこと。

そこで、じゃあ、次のことをしましょうと、ペットボトルでの演奏を披露すると、また、突然、鑑賞モードに入る子ども達。そして、ペットボトルを叩きたがる。そこに、部屋にあった段ボールなども加えて、楽器じゃないものアンサンブルを開始。「熱帯のインドネシアの子どもたちと、こんな風に音楽をした。」と説明して、ジョグジャカルタのマングナン小学校で子どもたちが演奏していたリズムを教え、「インドネシア語の1234(tu-wa-ga-pat)」の合図で、ソロをやったり、tuttiになったりする即興リズムアンサンブルをした。ジョグジャの子ども達のリズムは、次第に大阪のリズムに変形されていき、回を重ねる度にアドリブが工夫が増え、ペットボトルや段ボールなどの楽器を持ちかえ、インプロを楽しんだ。

ということで、低学年の1時間が終了。続いて、高学年。こちらは、4年生一人、5年生一人。ハイテンションな低学年と違って、じっくりと話をする。ハワイに行ったことがある男の子と、千葉に行ったことがある男の子の二人。インドネシアについて、若干、話をすると、「インドネシア行きたい」。面白い音楽ができて、このプロジェクトが評価されれば、インドネシアに行ける可能性もあるよ、と説明する。そして、熱帯音楽祭に関するダジャレを考えてもらう。

熱帯のところで寝たい
パパイヤはパパいやだ
サルが動物園から去る
オランウータンはおらん、ブータン
でも、イルカはいるかも
海に膿みができた
マンゴは一万個とれる
熱帯音楽祭

こんな言葉ができて、これをどんなリズムで言うかを考えた。ストーブ(火のついていない)の金具を叩いてリズムを出す男の子は、サンバのアゴゴのようなリズムを叩きながらラップのようなリズムで言葉を言う。将棋盤をカチカチ叩きビー玉でリズムを取る男の子は、控え目に日本風なリズムで唱える。異なった二つのリズム感が交互に出る。

こうして決まったリズムを、段ボールやペットボトルなどにアレンジして演奏した。次回は、このリズムを、色んな楽器でやってアレンジすることに。将来は、これを発展させて、ガムラン曲にする構想についても、子ども達に説明した。

今日の手応えは十分。このまま、「熱帯音楽祭ワークショップ」継続していくと、この子ども達、いずれ即興の達人になり、いつの間にかガムランの達人にもなってしまい、大阪の子ども独自のガムランを結成し、最終的にはインドネシア公演もできてしまうだろう。で、大阪には、インドネシアで修行したガムラン奏者が何人もいるし、さらには、バリ人やジャワ人のガムラン演奏家も住んでいたりする。こういう人達もいずれ熱帯音楽祭に関わってもらいたいな、と思った。