野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

人の相談に応じながら、なんとなく言ったことのメモ

人の相談に応じながら、なんとなく自分が言ったことのメモ。これは、ぼくが自分自身に向けて言っていることでもある。

この作品は失敗だ、このコンサートは失敗だ、このワークショップは失敗だ、と「失敗」と括ってしまうと、それで終わってしまう。でも、どんなことにも、良い(と思える)ところと悪い(と思える)ところがあるはずだ。それを思い返して、良いところは次につなげ、悪いところには修正を加える。そうやって、次の作品、次のコンサート、次のワークショップにつなげていく。

視野が狭くなったり、作品が小さくまとまっていると、もっと色々勉強した方がいいなじゃないかな、と思う。ここでいう勉強というのは、誰かのやり方を習得することではない。色んな人のやり方を知れば知るほど、自分と似ているところ、自分と違うところがはっきりしてくる。そうやって自分のスタイルを明確にするための鏡として、色んな作品を見ることに意味がある。

一体どうなっちゃうんだろう、と不安なことこそ、自分にとって未知の領域、面白い領域のはずだ。だから、踏み込むべきだと思う。でも、未知の領域に踏み込むときは、不安を抱えながら、細心の注意を払いながら、でも、大胆に進む。

背伸びをしたところで、今の自分の等身大から辿り着ける範囲には限界がある。でも、自分がもっともっとやりたい気持ちがある。現実と理想のギャップ。理想に近づいていくには、現実に向き合って、自分の現在の実力を知りつつ、自分の可能性に期待しつつ、どんどん実践をやり続けていくことだと思う。ぼくは、自分が作曲が下手だ、と感じながら、でも、作りたい音楽のイメージがあるから、今の自分にできる最大限で作品を作る。自分の下手さにあきれながら、でも、現時点で最大限に背伸びできたことにも納得しながら、でも、さらにその先をやりたいから、ずっとずっと作品を作り続ける。