野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

あいのてさんコンサート

調布のちょうふ音楽祭で、あいのてさんコンサートでした。応募は500名ほどあったところで抽選で当たった200名の方が入場できました。

最初に依頼があったときは、この時期はイギリスに行っている予定だったので、ぼくは出演せずに、青と黄色のあいのてさん二人でのイベントになっていました。しかし、都合があいているので、ちらしに名前がのっていないのに、出演しました。

今日は、青のあいのてさんである尾引浩志さんが、会場に到着間際に交通事故をやってしまい、でも、ほかの車と接触した程度で大丈夫だったのですが、事故処理のため、1時間以上遅れて到着。でも、無事に本番が迎えられてよかった。

そもそも、ぼくが出演しない予定だったので、これまでの打ち合わせの経緯なども何も知らなかったのに、尾引さんが交通事故で遅れてきたりして、本番前に、「今日の進行は、ぼくが仕切ります」と宣言してしまいました。でも、実際にステージが始まってみてから、自分が、今日のイベントに向けて、主催者との打ち合わせは全くしていないし、経緯がわかっていない飛び入りゲストの立場なのに、進行をやっているちぐはぐな立ち位置。

主催者の人もいろいろ考えてくれて、客席にもデコレーションがしてあったり、風船があったり。また、空き缶やペットボトルなどもいろいろあって、開演前から子どもたちが大音量で演奏していました。この辺もどういう経緯でこうなっているのかが、わかっていなかったし、コンサートだと思っていたけれど、募集はワークショップとなっていたらしい、とのこと。今日は、ちゃんと飛び入りの立場でいればよかったのかも。

コンサートとしては、客席の子どもたちが楽器を叩いている音がかなり大きいので、ステージ上の微妙な音の出し入れは、なかなか客席に届いていきません。観客が持っている楽器が、福岡や山口の時みたいに、紙だったりする方が、客席の音と舞台の音のバランスもいいかもしれません。

ということで、この環境の中で演奏する音を観客に届けることは、なかなか試練で、強度のある音を発していかなければと頑張ってみるわけです。そうやって頑張っていると、ちょっと演奏が雑かなぁ、と葛藤が起こるのですが、しかし、繊細な微妙な音の出し入れをやってみようとしても、客席の子どものドンチャンにかき消されて吹き飛ばされるので、躊躇なく音を出していくしかないのです。

あとは、テレビで「あいのて」を知っているお客さんたちに、テレビで知っていることを生で体験できた、ということ以上の体験をしてもらえるようなコンサートにしたい。テレビでは体験できない、今日しか体験できない内容を、今日のお客さんたちのために発信できているのか、が大切です。

尾引さんのホーメイ倍音の世界も、テレビでは10秒くらいしか聴けないものを、ライブだったら、5〜10分(または、もっと長時間)ディープにホーメイの響きの海を浴びることができるはずです。そういうことが、今日は少なかった気がする。もっとスペシャルなライブにできたのでは。

こうしたことに、お客さんは正直です。ライブ終演後、「音・リズム・からだ」や「即興演奏ってどうやるの」などの本は売れたのに、P−ブロッのCDも倍音SのCDも1枚も売れなかったのです。こんなことは初めてです。コンサートの後、誰もCDを買いたいと思わなかった。ぼくらは、楽しいレクリエーションや、音遊びを進行できたけれど、音や音楽の魅力を感じる場を作れなかった、と読み取れます。

終演後、握手会の要望もあり、握手や写真に応じたのですが、握手で触れ合うのではなく、もっと本物の音で触れ合わないとなぁ。反省です。

観客が静かに聴いていなければいけないコンサートじゃないあり方を、あいのてさんコンサートでいろいろ模索していますが、まだまだ、試行錯誤の日々です。がんばります。

お客さんの皆さん、スタッフの皆さん、ありがとうございました。