野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本の21世紀の交響曲

サンパティオホールでの「しょうない音楽祭」で、「哲学カフェオーケストラ庄内」の6回のワークショップの成果として、15分の大作「日本センチュリー交響楽団のテーマ」と、小品「手拍子のロンド」を発表しました。また、地元の野田小学校のブラスバンド部とのミニワークショップで、即興「ドミノ」演奏もしてみました。

本番の演奏、日本センチュリー交響楽団の4名の方々も、さすがという演奏でしたが、ワークショップ参加者の皆さんも、本番で一番力を発揮しておられて、集中力、創造力、実行力、応用力、大したものです。聴いたこともない新作初演を、少ないワークショップだけで本番をやれるのは、実は簡単そうで大変なのです。ブラボー!

ぼく自身は、リハーサル中は、練習をどう進行するかで頭がいっぱいでしたが、本番の最中は、自分のパート(ピアノ)の楽譜を見て、色々、発見もあったり、本番の演奏を楽しむことができました。本番中は、オケのメンバーの演奏や音色を聴いて、聞き惚れながら演奏しておりましたし、ワークショップ参加者の方々が出す音色が、本当にポジティブなエネルギーを発していて、嬉しくなったり、耳をダンボのようにして、聴いておりました。いやぁ、これは、いいバンドです。素晴らしい楽団です。豊中市も、日本センチュリー交響楽団も、しょうないREKも、続けようと言ってくれていますし、継続して、庄内でこの混成合奏団を続けていきたいです。参加者の皆さんと、ようやく顔なじみになってきて(なかなかお名前を覚えられていないのですが)、しばらく会えなくなるのは、さびしいです。でも、また、やりましょう。

オーケストラと作曲家と市民が交流して、21世紀の日本の新しい音楽を創作する試みを行っている楽団は、日本中に数多くオーケストラがありますが、日本センチュリー交響楽団だけだと思います。19世紀のドイツの音楽を体感するワークショップ、18世紀のウィーンの音楽をユニークな発想で解釈するワークショップなど、西洋音楽を体感する教育ワークショップを行うオーケストラは出てきています。しかし、21世紀の日本と向き合って創作すること。今、ぼくたちが直面している現実と向き合って、今ここで生まれる音楽を創作すること。それに真正面から取り組むワークショップに着手しているところが、日本センチュリー交響楽団の意欲的なところです。名前の通り、日本の21世紀の交響曲を、交流を通して生み出していく。

この前代未聞のプロジェクトを始動するのは、大変な労力でした。が、動き始めて、使命感よりも楽しさの方が増大してきました。やらなければ、ではなく、やるべき、でもなく、楽しいからやろう、と言えるプロジェクトになってきました。楽しいから、またやりましょう。次年度も、いろいろ取り組む予定です。オーケストラは、就労支援にも取り組み、哲学カフェと出会い、ガムランや邦楽とも交わり、いずれ相撲や瓦とも出会うことでしょう。大阪で、ささやかに密かに、21世紀型オーケストラの新時代の幕があき、序曲を奏でています。

京都に戻って後、アトリエ劇研にて、モモンガ・コンプレックスのダンス公演「大失敗。」を鑑賞。大失敗を目指しても、なかなか大失敗できない。また、大失敗したとしても目指してする大失敗は大成功である、という逆説。白神ももこさんの丁寧で誠実な作品づくりに、大きな励みをいただき、明日から大失敗を目指して頑張ろう、と強く思ったのでした。