野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

向井山朋子さんと再会

昨日の夜は、しばてつ氏の指示に従って、BIMHUISのセッションを覗きに行きました。セッションは、普通にジャズであんまり異ジャンルを受け容れそうな余裕もなさそうだったので、さっさと帰ってきちゃいました。

今朝は、随分、のんびり眠っちゃって、休養十分。ガウデアムスに譜面を色々見たりしようと思ってでかけたのですが、ライブラリーが閉まる直前に着いて、全然見る時間がありませんでした。たまたま手持ちの自作の譜面を、図書館に寄贈し、ふらふら歩いていたら、向井山朋子さんにバッタリ会いました。今晩、お宅を訪ねる約束をしていたのに、こんなところでばったり会うと、なんだか気恥ずかしい気分。向井山さんは一件打ち合わせがあるらしいので、そこで別れる。

そう言えば、98年にパリから電車でアムステルダムに来た時、当時はまだユーロはなく、フランスはフラン、オランダはギルダーで、駅に到着した時に換金していなかった上に、着いたのが深夜で両替所が閉まっていました。終バスまでの30分以内に、加奈ちゃんとぼくの二人分のバス代を路上演奏で稼ぐ決意をして、雪の11月に路上演奏でバス代を稼いだ思い出があります。(このエピソードについては、野村誠著「路上日記」(ペヨトル工房)参照)

ふとそのことを思い出し、30分でバス代が稼げるかをやってみたいと思いました。前回は2人で30分で2人分を稼いだ。今日はどうだろう?前回雪の中で演奏した場所付近で30分やってみたら、4.2ユーロになりました。バス代は1.6ユーロなので、2人分のバス代は稼げました。今日は、一人だけど。

向井山朋子さんのお宅にお邪魔。玄関のベルを押すと、扉の向こうにかわいい女の子が。
「キリコ?」
とぼくは尋ねました。そうです。1998年には3歳で、2000年に5歳だった向井山さんの娘のキリコです。12歳になったそうです。野村誠作曲の「Away From Home With Eggs(たまごをもって家出する)」というピアノ曲では、キリコの3歳の時の声、5歳の時の声が入っています。「ティンティンティン、かわいいうさぎがきたの、こんなにきれいな音だから」という唱え歌の歌詞もキリコから聞き出した言葉です。キリコに再会して、ぼくは戸惑ってしまいました。戸惑っているうちに、キリコはお出かけ。今日は友達の家に泊まりに行くのだそうです。

サックスの佐藤尚美さんとも再会。2003年にフローニンゲンでのフェスティバルで野村誠作品演奏会をやった時に、演奏していただいて以来です。

向井山さんは、ロジックで日本から送られてきた街の音を編集しているらしい。向井山さんは、ハウスミュージックも作ったりしているらしく、現代音楽のピアニストとして大成しているのに、そこに安住せずに、常に進んでいる姿勢に、こちらも元気をもらえます。街の音とシューベルト即興曲をリミックスする作品を作るらしいのですが、シューベルトがどこにも手を入れられないし手を入れたくない状態で、現在思案中のようでした。でも、大胆にシューベルトに手を入れられるときが来るのでしょう。コンサートは7月に日本の数ヶ所であるようです。佐藤さんは、作曲も学んでいたのですが、器楽よりは電子音の方にシフトしてきたみたいで、街の音をコラージュしたり変調したりした作品をやったり、いろいろな話が面白かったです。

それにしても向井山さんの話は面白かった。彼女には実現したいアイディアが山ほどあるそうで、そのうちのいくつかを聞かせてもらいましたが、まだ、ここでは内緒にしておきます。でも、いずれ発表され、実現されるでしょう。向井山さんは、コンサートピアニストとしても、ダンスや映像とのコラボレーションなどでも、第一線でいっぱい仕事をしてきたので(最近はダンスのイリ・キリアンと公演をしたらしい)、今、それを通り過ぎてその先のやりたいことが次々に見えてきている感じです。そして、それらをやり通すと、またさらにその次が見えてくるのだと思います。


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いとまきさんのアパートに戻ると、フラットメイトのスペイン人、ホセとリサと話が盛り上がり、二人の部屋でP−ブロッのCDを聴きながら話し込みました。ホセはドラマーであり、仕事としてはサウンドエンジニア(主にPA)をやっているそうで、かなり音に敏感な人でした。

ということで、約3週間のヨーロッパ滞在の最後の夜。明日は、飛行機で成田に飛びます。